特例法等の成立
2007年(平成19年)6月30日、年金時効特例法が議員立法で成立。従来の法(国民年金法第102条、厚生年金保険法第92条)では、年金給付を受ける権利は、5年を経過したとき時効によって消滅するとされていた。複数の加入記録がありながら、それを請求していなかった場合は、請求時から5年分しかさかのぼって給付を受けることができなかったが、この法律により、受給できるようになった。
2007年(平成19年)12月、厚生年金特例法が成立。事業主が従業員から保険料を給与天引きしていたにもかかわらず、その事業主が手続きに必要な書類などの届出を行っておらず納付をしていなかった場合に、給与天引きがあったことが第三者委員会で認定されれば、厚生年金の額に反映されることとなった。今までの厚生年金保険法では、保険料の徴収権が時効消滅となる2年を経過している場合は、年金給付に反映されることができなかった。
2009年(平成21年)5月、年金遅延加算金法成立、2010年(平成22年)4月30日施行。社会保険庁の記録漏れで年金が未払いになっていた場合に、物価上昇分を上乗せして支給する。加算金は過去5年を超す未払い期間が対象で、5年以内の人には支払われない。
2009年(平成21年)5月、年金延滞金軽減法が成立し、2010年(平成22年)1月から施行された。企業が厚生年金などの社会保険料を延滞した際の利息を引き下げる。
年金記録問題の発生と責任
2007年(平成19年)6月14日、総務省は行政評価・監視機能の一環として、年金記録問題発生の経緯、原因や責任の所在等について調査・検証を行う年金記録問題検証委員会: (松尾邦弘座長)を発足させ、年金制度や情報システム等に詳しい外部有識者が、年金記録の管理・事務処理に関して、今回問題化した諸事項について、その経緯、原因、責任等の調査や検証を行った。 2007年(平成19年)10月31日、同委員会は検証結果の報告書を公表し、年金記録問題の原因と責任の所在について以下のとおり報告した
報告書では、年金記録問題発生の根本は、厚生労働省及び社会保険庁の年金記録管理に関する基本的姿勢にあると結論づけ、その原因として次の要因を挙げている。
- 厚生労働省及び社会保険庁の年金管理に関する基本的姿勢
- 国民の大切な年金に関する記録を正確に作成し、保管・管理するという組織全体としての使命感、国民の信任を受けて業務を行うという責任感が、厚生労働省及び社会保険庁に決定的に欠如していた。
- 年金記録の正確性確保に対する認識の問題
- 社会保険庁は、年金制度改正・記録管理方式の変更等の際に、年金記録の正確性を確保することの認識が不十分であり、関係する記録・資料を適切に管理していくという組織としての責任を果たしてこなかった。
裁定時主義の問題社会保険庁は、年金の納付記録は本人がよく知っているはずだから、本人が問い合わせてきた場合のみ、記録を調べて間違いが有れば修正すれば良いという安易な方針(裁定時主義)で業務を行っており、厳密な姿勢を欠いたまま業務を継続した。
直接的要因
報告書では、約5,000万件の未統合記録が存在することの原因として、次の要因を挙げている。
- オンライン化する前の記録ミスがそのままコンピュータに残ったこと。
- 氏名、生年月日、性別、住所を軽視していたこと。
- 漢字カナ自動変換システムによる記録の誤りがあったこと。
- 過去の記録の誤りを減らす取り組みをしなかったこと。
- システムの開発・運用を長期間に渡り特定の業者に依存していたこと。
- 不正行為防止のための内部事務管理態勢が不十分であったこと。
これに加え、年金記録を電子化するさい、紙記録を廃棄させる命令が出されたこともあげられる
間接的要因
報告書では、上記の年金記録問題発生の直接的な要因を助長する背景となった要因に、社会保険庁の組織上の問題点があると指摘している。
- 職員団体の問題
- 社会保険庁職員の多数派労働組合である自治労国費評議会(現・全国社会保険職員労働組合)が、昭和50年代(1975-1984年)前半のオンライン化計画などについて、人員削減につながるものであり、労務強化および中央集権化に反対との理由から強く抵抗をし、自分たちの労働環境維持のために偏りすぎた当局と職員団体の間で多数の覚書、確認事項等を結び、平成17年(2005年)の廃止まで存在していた。また本庁から地方へ通達をする際に、そのような労働組合と事前協議をしなければならない慣習が存在した。こうした職員団体が業務運営に大きな影響を与え、ひいては、年金記録の適切な管理を阻害した一因があると指摘。
- 三層構造に伴う問題
- 厚生労働本省採用のI種職員、本庁採用のII種・III種職員及び地方採用のII種・III種職員という三層構造が、企業統治(コーポレート・ガバナンス)の低下を招いた。
- 地方事務官制度の問題
- 昭和22年の 地方事務官制度により、社会保険庁の地方に対する指導、監督および管理が行き届いていなかった。
問題発生の責任の所在
報告書では、責任の所在を次のように結論づけている。
- 総括責任を有する歴代の社会保険庁長官を始めとする、幹部職員の責任は最も重い。
- 事務次官を筆頭とする厚生労働省本省の関係部署の幹部職員にも、重大な責任がある。
- 厚生労働大臣も、組織上の統括者としての責任は免れない。
- 年金記録問題発生の直接的な要因に直接または間接的に関わった職員は、その「関わり」に応じた責任がある。
- 職員団体には、職員の意識や業務運営に大きな影響を与え、ひいては、年金記録の適切な管理を阻害した責任がある。
報告書の最後では今回の調査・検証を踏まえた上で、今後の主な教訓を次のように述べている。
社会保険庁のガバナンスの確立意識改革などによって事務処理の誤りを是正する仕組み、被保険者の協力を確保する仕組みの構築などの改革を推進する。システムの刷新委員会の検証結果を踏まえ、第三者機関による点検・評価を受けつつ、システムの刷新を推進する。横領等から得られた教訓防止策の検討・改善など、内部事務管理態勢の構築に努める。国民の監視と協力国民も自身の年金記録に関心を持ち、疑問が生じた場合は社会保険事務所にて国が保有する記録を確認するなど国民の側の監視と協力も重要である。
wikipediaより抜粋
soop「2007年当時は大問題になったが徐々に収束していった」