マサ君は、タンタンが好きです。
マサ君は、リズム打ちのことを『タンタン』と言うのです。
マサ君はいつも、ピアノに座るなり、「タンタンしよう!」と言います。
私は、「ピアノを弾いてからね。」と答えます。
私は、しばらくピアノのレッスンをして、マサ君が飽きた頃を見計らってから
「マサ君、タンタンしよう!」と声をかけます。
するとマサ君は、本当に嬉しそうな顔をして、「うん!」と言います。
リズム打ちを始めた頃、マサ君は、
1~2小節のリズムを覚えるのも、難しいようでした。
何度お手本を示しても、どうしても覚えられないのです。
「マサ君、難しいですか?」
「はい、難しいです。」
マサ君は、何時も言葉使いが丁寧なのです。
そんなレッスンを続けて、3ヶ月くらい経った頃だと思います。
マサ君が、2小節の簡単なリズムを、やっと取れるようになりました。
私はマサ君のことを、うんと褒めました。
すると、マサ君は
「先生、もっと難しいのにしてください。」と言いました。
私は「オッケー!」と言って、試しに4小節のリズムを打ちました。
すると、マサ君は、何の躊躇も無く、完璧にリズムを打ったのです!
4小節ですから、かなり長い暗記になるのですが、
マサ君は、得意そうな顔で、スラスラと私のお手本を再現します。
2小節のリズム打ちは、あんなに難航したのに
その倍もある4小節は、た易く出来るようになるとは!
私は、狐につままれたような気持ちになりました。
「マサ君すごいね!簡単に出来たね!やっぱり天才だね!」
「はい、僕は天才です。」
それ以降、マサ君は、4小節のリズム打ちが得意になり、
今ではかなり難しいリズムでも、再現できるようになりました。
マサ君の、この出来事は、今でも本当に不思議です。