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東田直樹さんのエッセイ(毎週水曜更新)
「東田直樹の絆創膏日記」が掲載されました。
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2018年2月2日(金)
2月3日は節分である。僕も小さい頃は、幼稚園や家で豆まきをしていた。
「鬼は外、福は内」という掛け声と共に、豆を鬼役の人にぶつけるわけだが、僕は、豆が入ったますや袋を手に渡されたとたん、ひっくり返すので、周りの人たちに叱られていた。
鬼退治が目的だと知らず、みんなが豆を投げているのは、ますや袋の中身を空にするためだと思っていたのだ。
「この豆は、鬼に向かって投げるんだよ」と言われても、鬼が誰だかわからない。
すぐ側にいる人でなければ、僕の視界に入らないからだ。
わざわざ鬼役の人が横に来てくれても投げられない。
今度は鬼のお面に気を取られて、豆を持っていることなんて忘れてしまう。
見かねた人が、僕の手に豆を握らせてくれるが、豆を握ると、食べていいのだと思い口に入れる。
すると、また注意される。周りの友達を見ると、みんなキャーキャー興奮して大騒ぎである。
何だか楽しそうだ。僕も嬉しくなって跳びはねる。
結局、どうしてみんなが逃げ回っているかわからないまま、おかしな変装をしている人(鬼)が僕の目に止まり、その人に抱きついている間に終了。
豆まきは僕にとって、意味不明な行事だったことは違いない。
でも、楽しかった、いい思い出だったと懐かしく思い返すことが出来る。
何でも、うまく出来たから楽しいとは限らないし、うまく出来なくても楽しいと思えるものもある。
要するに本人次第なのである。
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この文章を読むと、自閉症児の気持ちがよく分かります。
そして、自閉症児に対して『言葉や行動が幼いから、何も理解していないのではないか?』
と思うのは、健常者の思い上がりだと云うことを反省させられます。
勿論、感性の鋭い東田さんだからこそ~と云う部分もあるとは思いますが、
私達が想像する以上に、自閉症の方々は様々なことを考え、自問自答を繰り返しているのだと思います。
私も、その事を忘れないようにしながら、レッスンをしなければ~と思ったのでした。