Men's wear      plat du jour

今日の気分と予定に、何を合わせますか。 時間があれば何か聴きましょう。

リネンとツイード

2022-04-18 | 生地
以前も取り上げましたが、1933年秋に雑誌"Esquire"が創刊された時、編集長は29歳のアーノルド・ギングリッチという人でした。

若いギングリッチがヘミングウェイに寄稿してもらえるよう交渉したり、それを足がかりに他の作家への働きかけがスムーズに運んだりする話は、編集者として有名なマックスウェル・パーキンズが映画化されたのに劣らないくらいの作品になってもおかしくないような気がします。

創刊50周年記念号に作家のゲイ・タリーズが書いた献辞には、

「人気がなくなったり、酒と絶望で筆力がひどく衰えた才能ある作家をかわることなく支持して、彼らの作品を掲載しつづけた。
原稿を掲載できない旨の断りの手紙を書くとき、その手紙には相手を思いやり、かつ激励する真情があふれていた」

とあります。

他にも人となりを伝える中に「ツイードと麻のスーツを好み」という話があって、そのせいでもないと思いますが、年々その方向に導かれているような気がしないでもありません。

職業的に私どもははっきり分けていますが、実際よくあるのはスーツもジャケットもみんなスーツと言っている場合があって、必ずしも上下揃いの生地のものを言ってない可能性があります。
一応ここは額面通り受け取って、そんな「麻のスーツを好み」という人が選びそうなスーツ、というイメージにインスピレーションを得たのが画像の一着。



様々な生地を見ても「もう少しこうなっていたらいいのに...」と思うことが少なくありませんが、このアイリッシュ・リネンは色柄といいトーンといいギングリッチのような趣味の人にも喜んでもらえるのでは、というスーツになりました。

ツイードの方は、そのタイプとしてはかなり高価なものですが、今年初めて取引したマーチャントにやはり素晴らしいスーツになるだろうと思うのが一つ見つかりました。

書き忘れるところでしたが、残されているギングリッチの画像を見ると、とてもフェロウズやサールバーグの生のイラストを見ていたとは思えない着こなしです。
イラストに憧れてもなかなか着こなしに反映できないのは一般的な読者と同じ目線、と言えないこともないのはご愛嬌でしょうか。

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海外通信

2022-04-13 |  その他
今回の上の画像はご存じのように「イースター・パレード」からで、踊り子だったジュディ・ガーランドをスカウトして初めてアステアがレッスンをつけるシーンです。

イースターには例年それくらいしか縁がありませんでしたが、今年はウィーンの仕立屋さんがメールをくれた最後を"Happy Easter"と結んでいたので、映画のオープニング曲を聴くときの感慨も違うものがありました。



サッカー日本代表チームがオーストラリアに勝利して帰国した時、3ピーススーツのヴェストの裾からベルトのバックルが思い切りのぞいているのが気になりましたが、洋服屋じゃないし、何と言っても7大会連続出場という偉業を成し遂げたのですからそれ以上何を望むんだという気分でした。

と思っていた矢先、ロンドンの仕立屋さんが憤ってました。
いわゆるセレブという人たちの画像を例に、やはり3ピーススーツのウエスト部分からベルトやバックルがのぞいていたり、ヴェストが身体からブカブカ浮いていたりするのを列挙して、「何で誰も言ってあげないんだ」とちょっと語気荒い感じで訴えてます。

憤ると言っても仕立屋さんのこと。
誇大妄想と被害妄想に取り憑かれた人間のような理不尽はありませんから、ごく真っ当なご意見です。

続けて、「ヴェスト付けた時のスーツにベルトという選択肢はないんですよ、股上をそれ用に案配して吊って履けば、きれいなラインがでることが昔から知られてるのに」

腰が引けて最近では言うのを躊躇うようなことも諦めずに筋を通すところは、さすがロンドンの仕立屋さん。

もちろん伝統に則して理に適った提案で、こんなウルサガタのオジ様にも叱られないよう気をつけてます。


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気分転換

2022-02-26 | 生地
1週間ほど店を空けることになり、何かあってご迷惑をかけるといけないので支払いなどすべて済ませスッキリ片付けて出かけました。

里心がついて結局5日で帰って来ましたが、場所を変えると多少考えることも変わるのか「春夏はどうしよう」なんて漠然と考えていた時、いつでも買えると思って3年くらい後回しにしていた生地が浮かんで来ました。

今やっていることは、「トレンドに目配りして..」なんて不必要な保険をかける必要がまったくないので、手に入るもので一番お薦めできるものをと考えています。
あれが今の気分だと、すっかり気持ちが固まりました。

帰って発注したところあっさり"Sold out"との返信で、これには落胆です。
そういうことってありますね。
以前はこういう場合、数日夢に見たりしました。

生地はかなり慎重に選んでいるので少ない候補からさらに欠けてしまうのは寂しいことですが、一般的なバンチにもよくよく探すとコーディネイトさえ間違えなければ服好きの方にも喜んでもらえそうな、良いワードローブの組めそうな候補がいくつかありますので、気持ちを切り替えるしかありません。



冬にお薦めする生地はことに長く着られるようなしっかりしたものが主ですが、上着だけなら作りでなく生地自体にもう少し柔らかさを求めるのもよいと思います。

20年くらい前に初めて着た生地で、糸の撚りと経糸緯糸の適度な隙間によってナチュラルストレッチとも言うべきニットのような伸縮性がうまれて快適な生地がありました。
ルーペで覗くと糸と糸の隙間は上下左右の毛羽立ちで埋まっているのが分かりますが、よく考えられていました。
ただその後も興味はしっかりしたものに行きがちだったので、忘れるともなく忘れてるうちに見なくなった素材です。

昨年秋10年以上前のその素材を二色見つけて、やはり上手く出来てるなと再確認しました。
これなら作りが多少劣っても手っ取り早く「軽く、柔らかく、動きやすい」服が作れそうと思うような生地ですが、やはり基本的なところをきちんと作っていないとせっかくの生地を十分に活かしてあげられなくて、もったいないことになったでしょう。
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コヤジ

2022-02-21 |  その他
立春を過ぎて陽射しに力強さが加わりつつありますが、風は冷たい日が続いて今年は寒いです。
冬季オリンピックも終わりましたが、フィギュアスケートでショートの演技を終えたワリエワ選手が顔を覆った時、30年以上前にきいた「胸が痛い」という歌を突然思い出しました。
その後のフリーも胸が痛いのを通り越して「角兵衛獅子」とかを連想してやりきれない思いです。


(駅のポスター、横目で見ながら寒いなーと思ってます)

「スキークロス」を見ていると、海外選手の多くはウエスト88~96cmくらいのちよっと太めのオヤジ...に見えて実際は30代半ばで、最近は死語かというコヤジ的な体型になごみました。
そのおじさんが結構なスピードで滑り抜け、ゴールでは写真判定に備えて片手を必死に伸ばして通過するのも微笑ましいです。

その晩は女子カーリングのスイス戦の快勝を観ながら、選手も大変だけど最後まで観るのもなかなか体力いるなと痛感しました。
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ヒント

2022-01-21 |  その他
イギリスのブレグジットやトランプ大統領の就任など大方の人がまさかと思っていたことが現実になったり、コロナのパンデミックなど、当たり前と思っていた日常が簡単に覆るのをここ数年目の当たりにしてきた、と始まるカズオ・イシグロさんのインタビューが少し前にありました。



この当たり前のようにマスクもなく晴れやかな笑顔で公演に旅立つデューク・エリントン楽団の画像を見ていたら、歴史の教科書で見てきたような感染症の流行や大震災が自分達の生きている時代に起こっている現実と、そのインタビューを思い出しました。

🎩          👞          👔          🧤

「その人がどんな服を持っていてどう着るのか、会った時のカッコを見るとどのくらい仲良くなれるか想像してしまう」
と言ったイタリア人がいました。
これなんかは、ヘンなもの買った時点で失敗が始まるのをヒシヒシと感じます。

また、
「一着の服や一つのアクセサリー、それ自体はエレガンスを物語りはしない。
 エレガンスはそのコンビネーションにあるのだから」

既出だと思いますが昔そう語った服飾評論家もいたそうです。
それより昔から、きっと何人もの人が同じようなことを語ってきたでしょう。

「コーディネイト」なんて当たり前で誰でも思いつきそうな着こなしのヒントを端的に言い表していて含蓄ある言葉ですが、その割にあまり顧みられていない気がします。
これもまた、当たり前が当たり前でなくなるという現象の一つ...と言われたらちょっと寂しいですね。
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年始め

2022-01-04 | 映画
新年おめでとうございます。
今年もよろしくお願い致します。

例によって三ヶ日は駅伝三昧。
好調が伝えられてた選手が力を発揮できなかったり一年生が大活躍したり、昨年ほど分かりやすくなくとも今年も筋書きのないドラマが展開されました。
それ以外の時間に近所にお詣りに行ったり少し電車乗ったりでゆっくりでもなかったですが、その間も駅伝の余韻を引きずってたので4日に駅伝がないのが寂しいくらいです。

例年思うことですが、精一杯走って襷を繋ぎまだ余裕のある選手も中にはいますが、悶絶というか昏倒というか精魂尽きる選手も少なからずいます。
その倒れこむところまでカメラがまわり込むのはどうかという気がします。
それまで精一杯走る姿を見せてくれたのだから、決してカッコいいとは言えないところまで映すのはもういいんじゃないかな。
武士の情けでござる...と思います。

昨年後半、片付けをしていたらもう観ないVHSが後から後から出てきました。
たいていのはDVD等に買い換えてきましたが、その後開封してなかった一部を観たら仕事始めとなりました。



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今年の感じ

2021-12-22 |  その他
このブログを始めた頃は昔仕事でご一緒した方々や知り合いなど同業の人がたくさんいましたから、飲んで喋っていたことの延長のような内容でしたが、いつ頃からかどんな方にご覧いただいてるかは分からないまま同じようなことを書いてます。

たまに同じような仕事の方からコンタクトを頂いてお話を伺うと、多少お役に立っているのかと思えるようなことが今年もありました。
それでどんな方がご覧になっているか初めて知るのですが、ちょっと新鮮な気持ちがします。

そんな中、振り返ってみると今年を集約してくれるのはやはりスポーツでしょう。
後半のオリンピックや好試合の連続だった日本シリーズもあって昔のことのように思えますが、松山選手のマスターズ制覇もありました。

しかし何と言っても、大谷選手の活躍ほどワクワクさせてくれたものはありません。
良いプレーはチームメイトや評論家からも印象的な言葉を引き出し、
「彼のプレーは、子供の頃打って投げて楽しかった野球を思い出させてくれた」、
「野球を見に行く楽しさを思い出させてくれた」と言うファンもいました。



翻って仕事関連ではどうだろうと思うと、海外との行き来が制限されているのもありますが、すでに何年も前から本物の匂いのするものを見つけるのが非常に難しくなってきました。
SNSなどでイメージがとても簡単に拡散され、海外の仕立屋さんでこの人はセンス良さそうかなと思っていた人が、10年保たなそうな少しはやりの型を作って着ているのを見てアラアラなんてこともあります。

今まで見てきたよりそれらしい匂いのするものや脳裡に焼きつけたものを自分なりに反映させようとしていますが、それを判断してくださるのは、やはり何かしらそういう匂いを求めていたり海外でたくさんそういう品を見た経験があったりして、作ったものを着てくださった方です。
よく使う三船敏郎さんの「うーん、寝てみたい!」と言うCMがありましたが、見果てぬイメージを求めて散財されてこられた方々から「うーん、匂わない」と言われないよう、放っておけばおそらく薄れるイメージを補いつつ何か加えて維持しなければなりません。

毎年発表される「今年の漢字」もオリンピックを反映して「金」でした。
正面から受け止めるとコロナ関連になってしまうところを回避していてホッとする選択です。


《オマケ:オリンピックでメダル獲得したカエル好きという選手がいました。
以前も使ったことがある旅先で見たカエル》




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simplicity & balance

2021-12-06 |  その他
ふとした瞬間鏡に映って、普段見ない角度から着ているものが見えることが稀にあります。
その日珍しくそんなことがあって、単に補正がうまくいった上にプラスαで微妙な形が出たかななんて思いましたが、ひいき目の思い込みかも知れませんし、他人に伝わりにくいこういう話は聴かされた方もリアクションに困りますから話題にならないですが...


その日の午後、久しぶりに白井さんとお話していたら、
「そこのところ綺麗だね、その服どこの?」
「自分のとこのですよ」
「いい色だね」

この齢になっても未だに褒めて頂けるとは、なんて嬉しいことでしょう。
おそらく今後も誰も気づかない部分をご覧になっていることに、あらためて「好き」に終わりはないなと思いました。
毎週のようにそんな話をしていた頃のことを思い出します。
また、そういう眼に耐えうるレベルを実現したくて始めたことを思い出しました。



たぶん白井さんの影響でしょう、小さな定例会などしていると褒め言葉がスムーズに出てくるような気がします。
若い頃服に多少興味があっても、年齢とともに右肩上がりで服の趣味や着こなしが洗練されてくることがないのは残念ながら現実で、放っておいてそうなったとすればかなりの激レアさんです。

そういう観点から、皆さん興味を維持され着こなしが理に適ってますからケチをつける隙などなくて自然に出てくるのですが、なぜかその時だけM気をおびたように何か他に言うことがあるだろうと詰め寄られ、もうSだかMだか。
たしかに正月の蒲鉾も三ヶ日くらいしか食べないので、褒め言葉が板につくにはまだ年季が必要かもしれません。
そうこうする内に、年末が近づいてました。
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再読

2021-11-27 |  その他
たまに読み返すと面白かったり、新しい発見がある場合があります。
書いてあることはそのままですから、その間に読む方が変わったということですね。

ちょっと用があって、久しぶりにアラン・フラッサーの"Making the man"(邦題:男の服装学)を開きました。
後半は1980年代前半にも存在していた店の紹介で、その一部は引用させていただいたこともあります。
何度か名前を挙げたパリの"A. Cristiani"という仕立屋についての内容を新鮮な気分で読みました。

「おそらくパリで一番気くばりの行き届いた仕立屋だろう。当然ながら値は張る。
1940年に創設、現在のオーナーは二代目である。A.クリスチャーニは値段にふさわしくエレガントな店である。
帝王の部屋といってもいいほど豪奢な造りの店内は、壁はマホガニーとゴールド、家具も敷物も骨董的価値のあるものを使っている。
有名人の贔屓客の写真がさりげなく壁にかけてある。
ジーン・ケリー、ゲーリー・クーパー、サヴォイのヴィットリオ・エマヌエーレ、モーリス・シュバリエ、ルイ・ジュールダン、メル・ファーラー、マルチェロ・マストロヤンニなどなど......。



この店もすでに閉店していますが、これを読むと中を見てみたかったですね。
昔パリの仕立屋学校で学んだ方が、修了にあたってそこの校長からこの仕立屋を紹介され行ったことがあると聞いたのは、後継者がいないとのことで閉店したあとです。
辻静雄さんのエッセイにSulkaでシャツを仕立てる話が出てくることから、ことによるとタキシード等こちらを利用した可能性もありますが想像の域を出ません。
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11月

2021-11-23 |  その他
今年も2ヶ月を切ったせいでしょうか、今月立て続けに5年ぶりとか7年ぶりの友達からメールをもらいました。
高校で同じ学年だったり学生の時アルバイト先の新入社員だったりしたので、皆んな十代からの知り合いですからかなり長いです。

おそらく子育ても一段落したくらいだと思いますが、人伝に聞いたので遊びに行くと言います。
思い返すと昔から筆まめだったりみんな律儀だったり几帳面なところがあって、聞いたからには片付けずにはおかないと思ってくれたのかもしれません。
いずれにしても嬉しい話です。



数年振りといえば、久しぶりに定期検診に行きました。
解除前は連日TVで医療体制の逼迫が報じられていたので、そんな中ノンキな顔して行くのもどうかなと、なかなか難しいタイミングでしたがスムーズでした。

当日よほどヒマだったのか、各コーナーのおばちゃんがけっこう構ってくれて話が面白いんですね。
これならたまに来てもいいかなと思うくらいというのはウソですが、次々巡るアトラクションのような錯覚を覚えます。

胸部X線はおばちゃんじゃなかったですが、「じゃ、上着とセーターとシャツまで脱いで、肌着だけになって下さい」と言い終えるとすぐ出て行ってしまったので、「肌着は着てません」というタイミングを逸しました。
結局、上半身裸のおじさんがスタンバイして出て来たので、「そこまで脱げって言ってないでしょ、ちゃんと人の話を聞けよ」と思われた可能性もあります。
「ドレスシャツの下には何も着ない」とそこで必要ない主張などしたら、警備員を呼ばれたかもしれません。

会計まですべてシステマチックでスムーズに運び外に出ると、よく晴れた空を見上げて、当たり前ですがなるべくこういう所のお世話にならないように日頃から気をつけたいと思いました。
でも私と同じような考えで遠慮して検診が遅れた為に、問題を見逃すケースが増えているそうですからくれぐれもご注意ください。





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