Men's wear      plat du jour

今日の気分と予定に、何を合わせますか。 時間があれば何か聴きましょう。

藤井君とキャパブランカ

2017-09-09 |  その他
子供の頃、同級生の家でテレビを見ていたらドラマに初日の出の場面があって、思わず「撮影の人も元日からたいへんだ」というようなことを言うと、そこのお姉さんに笑われました。
「こういうのはいつ撮っても同じでしょ、面白いこと言うわね」
なるほど、目から鱗とはこういうことかと思ったものです。

今年はキャラの濃い人が次から次へと現れるので一時の騒ぎが嘘のようですが、その渦中にいた29連勝藤井四段のような柔軟な頭脳の人は、きっと私みたいなことは言わないでしょう。

同じ頃、加藤九段が引退会見で「100年、200年後にも残る名局の数々を指せた事が誇り」と語っていたのもあって、レイモンド・チャンドラー「高い窓」で、静かな夜にキャパブランカの棋譜をなぞるフィリップ・マーロウを思い出しました。


(小野小町の恋文なんかを売っていた古物屋にあった、マーロウの使っていたというハンカチーフ)

また、藤井四段は苦手とする序盤の展開に磨きをかける為AIを取り入れているらしい、という話を聞いたら長年の疑問も思い出しました。
CADによっては縦6~7cmの格子柄でも柄合わせによって上手く収まり切らず、しばしば用尺不足になることです。
そのうちベテラン職人の頭脳にある情報を取り込んだCADが出て、立ちどころに用尺に収めてくれるなんて日も近いか、それとも既にあるのでしょうか。

キャパブランカの「美しく、冷酷で、無情」な棋譜に息詰まったのか、頭を冷やそうと洗面台に立ったマーロウは、鏡に向かって「お前とキャパブランカ」と呟くのでした。


Koetsu-Ji Takagamine Kyoto
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