仕事の話です。
鉄骨造3階建て住宅の階段材の注文が入った。
鉄骨で造ってある階段の上に集成材を被せるのです。
現場の大工さんからも「メーカーの人間を呼んだ方が良くねぇか?」ということで
一週間後に担当者と現場で打ち合わせをした。
廻り階段部分の採寸が難しくて大工さんに型板を要求するも
「そんな事してる余裕がないからよ」と却下されてしまい
彼なりに細かく採寸して、工場で加工に入ると仕事は進んだ。
打ち合わせから会社に戻ってすぐに叔父さんが亡くなったと連絡を受ける。
翌朝一番にこの採寸をした担当者から電話があり
「やっぱり、型板が無いと作れません」と泣きが入ってしまいました。
職人って基本、意地悪な物言いをするところがあるから怖気づいてしまったのでしょうね(-_-;)
私も加工材を引き取って配達したり、一人での仕事は体が忙しいのです。
ましてや叔父さんの葬儀に関する連絡やらで携帯が鳴りやまずの一日です。
カッターで切れるプラべニアなら私でも型板を作れるだろうから引き受けたものの
この日は作業時間が作れなかった。
翌朝、また担当者から問い合わせの電話が来たので
私が作業するから一緒に立ち合いを求めてみたが忙しいを理由に断ってくる始末。
「採寸の為に現場へ来てもらったのに、出来ませんでは仕事が取れないと思うけどなぁ~」
嫌味の一つを言って私が作りましたよ。
2段廻りと3段廻りの2カ所分です。
私にとっても初めての作業です。
担当者にも見せたかった作業です。
簡単そうに見えて2時間近く要しました。
誰も教えてくれないから自分で考えながらの作業です。
ホワイトカラーの担当者もあまりきつく言うと会社を辞めてしまう可能性があるので手加減したが
職人の世界は与えられた仕事、終わらせるまでは次に進めないし賃金ももらえない。
私も元設計事務所の所員なので絵は描けるけど作れない人間だった。
でもそれでは現場で説得力に欠けてしまう。
実際に作れないものを図面に書いてしまう建築士の多くはそのパターンです。
完成した型板を持って現場を去ろうとしたときに大工さんから
「儲からない材木屋なんて辞めて職人になった方が良いんじゃないか?」
「えへへ」って笑ってごまかしたけど職人は動いた分以上は稼げないからなぁ~
それが本音だったりします。
追記:出来上がった型板を取りに来た担当者、現場に居るってことなので
私も型板を持って現場に急行した。
彼ももう一カ所の階段の踊り場をプラべニアで型板作ってすでに打ち合わせを始めてた。
その行動で現場の職人さんからの印象も好意的に変わりました。
これによって次の現場でも打ち合わせがスムーズに運びます。
私が作った型板も使い、細かな寸法を書き込みました。
完成度がものすごく高くなりますからね。
やっぱり、現場って人を育ててくれる場所のようですね。