ヤギ・ヒツジ・ウシの家畜化
ヤギとヒツジの家畜化は、約8000年前から開始されたと考えられている。
野生のヤギとヒツジはおとなしい性格であったため、家畜化にはそれほど大きな苦労はなかったであろう。家畜化によって、ヤギとヒツジの体格は小さくなった。
ヤギの家畜化は西アジアのいくつかの地域で独立して進んだ。一方、ヒツジの家畜化は、肥沃な三日月地帯内の山脈のすそ野で進行したと考えられている。
家畜化されたヤギは、最初は肉を得るために飼われていた。ところが、しばらくして人類が乳の有用性に気がついた。つまり、ヤギを生かし続ければ、乳を継続して収穫できるのだ。こうしてヤギは搾乳が行われた最初の家畜になり、よりたくさんの乳を出す品種が選択されて行ったのだろう。チーズやバターなどもヤギの乳から発明された。
一方、ヒツジも当初は肉を得るために飼われていたが、やがて毛の利用が広がった。その後も長い年月をかけて、より良い羊毛を得るための改良が進み、ウールと呼ばれる短く柔らかい毛を多く持つ品種が開発された。
ウシの家畜化は、ヤギやヒツジに比べて1000年以上遅れたと考えられている。ウシの先祖はオーロックスと言う動物で、約1万5000年前のフランスのラスコー洞窟の壁画にも描かれている(図表7)。オーロックスはウシよりも体が大きく、長い角を持っていた。また、どう猛な性格であった。このため、家畜化が遅れたのだろう。
オーロックスはアジア、ヨーロッパ、北アフリカなどの広い範囲に分布していたが、家畜化は西アジアとインドで独立して行われたと考えられている。
ウシも初めは肉や皮を取るために飼育されたが、得られる乳の量がヤギやヒツジよりずっと多いため、牛乳の利用が進んだ。また、後には、農作業や運搬に使用されるようになり、ウシの大きな力が人々の生活に無くてはならないものになって行く。
家畜化された当初のヤギ・ヒツジ・ウシは現代種よりもかなり小型だった。その後、より多くの肉や乳などを得るために品種改良が進められた結果、体が次第に大型化したと考えられる。