833話)雨期整地

 カササギの森のなかにもたくさん浸食谷があります。写真で地元の人たちがやっているのは整地作業。この作業は植栽の前年の7~9月、雨の多い時期にやるので「雨期整地」ともいいます。黄土は乾くとスコップの刃もたたないほど固くなりますが、水がはいるととたんに柔らかくなるので、作業的にもこの時期が最適。

 典型的には地平線に沿って、幅60cm×深さ30cmほどの溝を掘り、さらにその下もスコップで和らげておきます。そして出た土を溝の下手に積んで、土手をつくります。雨がふると、溝の部分に集まり、土中に浸透します。9月にはいると気温が下がって蒸発が抑えられ、10月になると凍結して、翌春までそのまま保存されます。

 マツの苗を植えるのは翌年の3月下旬から4月にかけて。そのころ凍結が融けて、苗に水を供給するのです。「春の雨は油より貴重」といわれるほど、この時期、雨が少ないのですが、不足する雨を前年の雨期の雨で補うのですね。

 小さな苗を植えるのに、こんな大がかりな土木作業は必要ないじゃないかと考えて、ほかのやり方をいろいろ試してみましたが、まったくかないませんでした。現地の気象条件などを利用しつくした優れた草の根の技術だと思います。
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