114)「楊家将」の里

 日本を発つとき、空港で『楊家将』(北方謙三、PHP文庫)を買ってきました。おもしろい! 中国では三国志、水滸伝につぐ人気のようですが、日本語ではみることがなかった。
 時は10世紀。中原を統一した宋と、北方の騎馬民族=契丹(きったん)の遼(りょう)が激しく戦っていました。奪われた燕雲16州の回復は宋の悲願であり、一方、遼はそこを足場に中原をうかがっています。燕州の都・燕京は現在の北京、雲州の都が大同です。
 歴史的にみて漢族は戦に強くないよう。異民族との戦いではたいてい負けます。しかし侵攻してきた民族を包み込み、いつのまにか吸収する。その強さがある。
 最前線の雁門関(がんもんかん)を守る楊業将軍とその一門は、宋軍にあって例外的に精強で楊無敵と称されます。地方軍の副司令官クラスでありながら、長く人びとに愛されるのはそのためでしょう。
 楊業の本拠・代州は現在の山西省代県、雁門関は長城の内城の重要な関所です。物語の舞台は私たちの活動地の周辺で、私は何度も訪れています。なのに知らなかった。文庫本のカバーをみせると、地元のメンバーは「もちろん知っています」といって、口々に語り始めます。テレビドラマや芝居で何度もみている。少し回り道ですがついでにいってみましょう。
 車で越えるのもたいへんな太行山の大山脈を、人の足と馬で走り回っていたのです。決戦といえば関が原の日本人には、想像の届かないスケールです。
 【写真】楊業とその息子たち、そして子孫をまつる楊家祠堂(山西省代県)
 (2006年9月5日号)
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