179話)大同のヒツジ

 大同でみるヒツジは、いつも下を向いてウロウロしています。頭をもたげているところをみたことがない。そういう骨格なんだろうと思っていました。ところが数年まえの春、農家の庭先に生まれたばかりの子ヒツジがいました。ちゃんと頭をあげているんですね。そりゃ、そうでしょう。頭が下がっていたら、乳を飲むことだってできません。
 とにかくエサが不足します。とくに春先は。長時間、同じところにとどまっていると、再生不能になるまで草を食べつくしますから、ヒツジ追いの人たちは、かなりのスピードでヒツジを歩かせます。
 ですから、ヒツジもいっしょうけんめいなんですね。とにかく草をさがす。それが長くつづくあいだに、あんなふうに頭をさげて、下ばかりみていることになってしまったんでしょうね。
 2003年の春だったでしょうか、内蒙古の草原まで足を伸ばしたことがあります。大同から同行したスタッフが驚きの声をあげました。「ここのヒツジはなんと大きいんだ。子ウシほどもある」といって。私が驚いたのは、それらのヒツジが昂然と頭をあげて、こちらをみていたことです。
 大同のヒツジがあのような姿になったのは、エサ不足のためでしょう。人にほめられるような人生ではありませんから、私も来世はヒツジに生まれ変わらないともかぎりません。そのばあいでも、せめて、大同は避けさせてもらいたいものです。うふふふ。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
« 178話)黄花菜 番外)タイリ... »
 
コメント
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。