1089話)『人民日報』の記事・和訳(下)

 高見にはもう一つ「高局長」という呼び名がある。高見のグループは緑の地球ネットワークといい、彼はそこの事務局長を自分からかってでた。この組織には約500人の会員がおり、長い年月のあいだに、5000万元を超す資金を投入してきた。しかし「高局長」は傲慢ではなく、ほかの人が話すときはいつも謙虚に耳を傾け、偉そうな態度が少しもない。「高局長」はすごいのだ。延べ3670人ものボランティアを中国につれてきて、200以上のプロジェクトを建設し、6000haもの荒れ山を緑化してきた。

時が長くなれば情もさらに深くなり
艶やかな緑に溶け込んでいく

 専門家でもよい、局長でもよい、高見との交流で人の心を打つのは初心である。酒に酔っても高見の話は理屈が通り、堂々としている。「私はなぜここに残っているのか。それは私がバカだから」。

 バカだから何度挫折しても彼はやり抜いてきた。20余りの国際民間組織が中国で緑化を始めたが、多くはその後、沙汰止みになってしまった。「バカ」だから彼は中日関係の最も緊張した時期でも、ボランティアをつれて中国にきて、この地の人びとの熱烈な歓迎を受けている。

 高見のこの地での貢献は、ずっと以前から両国の政府と民間に認められている。それは200余りのプロジェクト地を緑いっぱいにしたことでも説明できる。しかし村の中を歩いているとき、高見はふと彼の悩みをもらした。

 高見が大同で植林する資金は日本国内からのもので、会員からの寄付と日本政府や民間財団の助成金だった。しかし近年、日本政府の助成金は減ってきている。「中国から帰ったら私はまるで乞食のようです。あちこちから経費を工面する。これが:最も頭の痛い問題です」と高見は苦笑いする。

 あと2年すると高見は満70歳になる。「中国の古稀です。思うように動けなくなることを私も自覚しています。日本の若いボランティアはいても、長く続けるのは難しい。今後、誰がこの仕事を引き継いでくれるか、ちょっと心配しています」とも話す。

 「大同市でいちばん好きな場所がある」と高見は語る。「大同市霊丘県の南天門。あそこは私が最も誇りに思う場所です。私たちが植えた木の成長がとてもよく、木の種類も多い。あなたも見に行ったら、きっと感動して身震いしますよ」と。しかし話題を変えて高見は悲しそうにうなだれて次のように言った。「ある場所は、まるで鉄鉱石を掘ったような状態です。地面がひどく傷ついただけでなく、そこを流れる河の水も黄濁しています」。たしかに、これらの樹木は老いていく彼の体の一部のようなものなのだろう。

 「中国語や日本語の中に『長い間に情が生まれる』という言葉があります。植林は子どもを育てるのと同じで、私たちと地元の人たちがいっしょに植林し、水をやって育てたもので、樹々の中に私たちの汗水と情が含まれている。この基礎の上に私たちの友情を築くことによって永遠に守られていくのです」と彼は言った。

 高見は体の向きを変え林の中を歩いていった。緑色の背中の影が、つやつやとした緑の中に溶け込んでいく。彼が心血注いで育てた友情の樹々は、きっと長くこの雁北の地で育っていくことであろう。
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