私が所属する一般社団法人JISRAM(日本生殖鍼灸標準化機関)の中村一徳会長が、「産科と婦人科11月号」の特集で執筆され、それについて会長がフェイスブックに投稿された記事です。
不妊子宝鍼灸治療を受けられている方に是非読んでいただきたく思い、転載させていただきました。
一般社団法人JISRAM(日本生殖鍼灸標準化機関)の副会長である東京の徐大兼先生から、「『産科と婦人科』に『鍼による着床改善』のテーマで執筆依頼が来てるけど受けないか」と言われたのは昨年末。これは本当に迷いました。日本中の産婦人科医が読むこの本に執筆するのは、今までとは要求されるレベルが違いすぎます。私たちを相撲取りとするなら、プロレスのリングでそのルールに従うわけです。「育卵鍼灸」として体外受精時の成績の向上については、基礎研究の資料、プロトコル、理論根拠、データをすべて揃えました。が、鍼灸が着床にどのように寄与するのかを説明するには、何もかもが不十分でした。鍼灸が子宮の環境を整える、なんて軽々しく言う鍼灸師が多いですが、誰も理論を説明できていないし、検証もできていないと思います。私は、その検証にもっとも適した条件は、着床前診断(PGS:preimplantation genetic screening、PGT-A:preimplantation genetic testing for aneuploidy)を経た胚盤胞の、鍼灸(レーザー併用)施術下での妊娠率を調べるのが、もっとも正確であると考えていましたが、その時はまだ、医学的に意味ある母数にまったく届かず(43例しかなかった)、理論もまだ考えていませんでした。着床前診断が登場するまで、300以上のデータを蓄積しましたが、胚質がわからない状態では、1000例蓄積しても意味がないように思えてきました。しかしこの検査をクリアした胚の移植例も、平成27年10月の最初の移植例から5年経過して、現時点でもまだ45例にしか達しません。いろんな理由で、最近は該当例が減っています。いくらもっともらしい事を言っても、データがでなければ、価値はありません。「あれがいい」「これがいい」。しかし理論も証明もろくでもない「あるある」が蔓延しています。この本にそんなことを書くわけにはいきません。その時点で43例蓄積される経過の中で妊娠率は約80%で推移していたので、今後大きく外れることはないだろうと考え、意を決して執筆を引き受けました。依頼から返答まで、五日間でした。
続きは、鍼灸柔整新聞12月号にて。