「ゴッホ展ー空白のパリ時代を追う」を見てきた。一昨年の「フェルメール展」の時は迷わずに行ったのだけれど、今回は行くかどうか、迷った。ゴッホは見飽きたので、あまり気乗りがしなかった。オランダの風景画とかバルビゾン派の風景画の展覧会ならぜひ行きたいのだが。写実を基本とした風景画の素晴らしさを理解するようになって以来、私の絵画趣味はその分野に長くとどまった。
ゴッホも弟テオへの手紙の中で「オランダの昔の画家たちの素晴らしさ」について語っている。それなのに、彼は写実の伝統から少し離れ、彼独自の「個性的」な絵を描くようになった。そしてその「個性」こそが彼の絵を際立たせた。少し変わったその絵の中で、「並々ならぬ何か」が語られていることに、多くの人が気づいた。彼の死後、彼の絵は世界中の人に愛されるようになった。私にとっても、ゴッホは、最初に好きになった画家の一人である。
しかし、現在の私は、彼の絵の中でも、あまり個性的でなく、表現が控えめで、伝統的・写実的な作品を理想としている。たとえば、「跳ね橋」である。
今回の「ゴッホ展」に、私の分類によれば「跳ね橋」系の作品が、五-六枚ほど展示されていた。私は、その数枚の絵を見て非常に感動した。
ゴッホは「後期」印象派的な作品を多く描いたが、印象派以前のバルビゾン派的な絵も描いていた。それも、そうした系統の作品として最高のものを。