病院というのは
不思議で。
入院している家族や友人の
お見舞いで来た時と
その人がその後、たまたまその病院に入院することになったとして
患者の一人として
その病院内を見るときと
景色が
全く違って見えてしまう。
もちろん
外見は
待合室も病室もトイレも売店も
看護師さんの顔ぶれも
見舞いに訪れた時と変わらないのに
患者になって
寝間着姿になるや
なんだか
全てのひとつひとつの風景が
岡本太郎の『座ることを拒否するイス』のように
こちらに
プレッシャーをかけてくるような嫌なものに見えてくる。
夜中。
静まりかえっている。
空気が冷たい。
トイレに行くと
個室から
プォ~ン!
という屁の音が響き渡る。
「ああなぜ、俺はここにいるんだろう。なぜ夜中に
他人の屁の音を聞かなきゃならないんだろう」
空しい気持ちになる。
同年代の人々は
合コンだの飲み会だのコンパだのと
楽しくやってるだろうに。
中古のビーカーを股間に当て
おしっこをする。
情けない。
採取した尿は
トイレの中にある分析装置みたいな器械に
ジョボジョボと流しいれる。
トイレのスリッパのペタペタ響く音も
哀感を演出する。
「早く退院したい」
それ以外のことは考えられなくなる。
時代からも取り残されているような気さえしてくる。