祇園祭に没頭し、投稿が遅れました。
今回の日曜美術館は、「私の目は、ものの輪郭よりも先に色を感じとり、色の印象がより長く心のなかにとどまる」。と言った、20世紀のフランスを代表する ラウル・デュフィ( 1877-1953 )です。
色の魔術師とも呼ばれています。
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「ニースの窓辺」1928
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50歳の時、南仏ニースの光景を描いた作品です。
左右の窓から光をあびたニースの海が見え、中央には室内をうつす大きな鏡があります。
色鮮やかな調度品が部屋を飾っています。
この絵画全体に彩られたのは青色、床や机までも青で描かれています。
水彩画のようにも見えますが、油彩です。
「シーツの上の裸婦」1930
シーツもうっすら青、背景全体が青です。
20世紀の画家のなかで、 デュフィほど青色を使った画家はいないと言われています。
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「モーツァルトに捧ぐ」1951
デュフィが最も好きだった作曲家を青色で表現しています。
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デュフィはフランスのル・アーブルで生まれます。
貧しい家庭に育ちますが、16歳から絵を学び、22歳の時、奨学金でパリにでます。
その頃の作品です。
後の画風と大きく違います。
「夕暮れのル・アーブルの港」1900
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その後、 デュフィは新しい絵画に出会い、大きく影響を受けます。
その画家は、アンリ・マテイスです。
マテイスの作品
「豪奢・静寂・逸楽」1904
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デュフィは一目見て圧倒されて影響を受けます。
それが、 デュフィの絵にも反映されます。
「海辺のテラス」1907
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その後、キュビズムが台頭すると、今度はそれに影響されます。
「レスタックのアーケード」1908
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「レスタックの木々」1908
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画商たちは、 デュフィの絵は真似事にしか見えず、絵もまったく売れません。
そして、ついに、青色の素晴らしさに気づきます。
それが、冒頭の「ニースの窓辺」です。
「突堤ーニースの散歩道」1926頃
デュフィはフランス各地をめぐり、海辺の景色を描きます。
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その後、デュフィは赤色に出会います。
「バイオリンのある静物;バッハへのオマージュ」1952
一面赤色です、しかし、優しい赤です。
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「30年、薔薇色 の人生」1931
デュフィの代表作品です。
ローズピンクの部屋に飾られた薔薇の花束、実に印象的です。
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「ドービルの競馬場」1931
競馬場に集まる人々、輪郭線から色がはみ出しています。
華やかな色は、競馬場の賑わいを感じさせます。
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その頃、やっと名声を得るようになった デュフィです。
「コンサート」1948
会場を包み込むような赤です。
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パリ市立近代美術館に ラウル・デュフィの集大成ともいうべき作品があります。
「電気の精」1937
縦10m、横60mの巨大な壁画です。
デュフィ60歳のときの作品です。
人間と科学の叙事詩を描いた大作です。
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古代ギリシャの数学者アルキメデス
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発明王、エジソン
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さらに、ワット、ニュートンなど110人もの科学者が登場しています。
彼らによって成し遂げられた科学技術の発展が鮮やかな色彩で描かれています。
人類の叡知を讃えるオーケストラの演奏のひびき、その音にのせて電気の精が舞うという壁画です。
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この壁画は、1937年のパリ万博の電気館のために作成されました。
そして、同じ万博のスペイン館では、ピカソの有名な「ゲルニカ」が展示出されました。
世界は戦争の足跡が聞こえていました。
ピカソは、ナチスの進攻を大きな怒りをもって、告発したのです。
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パリ万博で作成された、デュフィとピカソの2大作品ですが、観客の評価は大きく分かれました。
ピカソの絵画は、観客の人びとに背を向けさせました。
一方、 デュフィの大壁画は、おおぜいの観客であふれました。
世界が戦争にすすむなか、戦争の警鐘を鳴らしたピカソですが、観客の多くは、 人びとの心を明るくさせるデュフィの作品に共感を寄せたのです。
「エプソム、ダービーの行進」1930
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「パリ」1937
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「馬に乗ったケスラー一家」1932
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「アネモネとチューリップ」1942
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これらは、油絵ですが、まるで淡彩画のようです。
晩年デュフィ60歳頃、進行性多発関節炎で激しい痛みに苦しみます。
描くことすら困難な時期の作品です。
「黒い貨物船と虹」1949頃
港停泊する貨物船は、黒の色調でおおわれています。
黒い貨物船と虹がとても印象的です。
肉体の苦痛は、黒の色を選択したのでしょうか。
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