直近(2020年)の国勢調査によれば、アメリカの各民族の人口構成は、白人57.1%、ヒスパニック18.7%、黒人12.1%、アジア6%、その他6.1%とのこと。10年前と比べると、ヒスパニック系民族の増加率は23%で、全米の人口増加率7%の3倍強、ダントツにヒスパニックが他を著しく引き離している。
白人の割合が6割を切り、ヒスパニックが急増した結果と、第47代トランプ大統領の選出には、この民族の構成比という、多民族・移民社会に固有の事情が深く関わっていると分析されている。
既に米国社会に適応し足場を築き市民権を獲得したヒスパニック系の旧来移民たちの心理の深層には、陸続と続く同族の新移民に対して厳しい姿勢のトランプ氏に、共感するところが大きかったのだろう。不法適法を問わず、新来の同族は既に米国社会に拠り所を確保した自分たちの幸福実現への障害と映るに違いない。
自分たちヒスパニック系米国人の生存権を守る意識で、ヒスパニック系移民排除を政策に掲げるトランプ氏に、自分たちの将来を託したということか?トランプと共和党の支持層の核に、保守化したヒスパニック系の存在があったのだった。
旧来のLiberalと Conservativeが拮抗する政治とは、欧州を共通の原郷とする強固な白人社会があったのものだった。
米国が欧州系白人のユートピアであった時代は、第二次世界大戦後の20年で終わっていたたと見てよいだろう。
その全盛期の米国を見ていた私たち昭和世代は、新しい現在の米国像を、正しく認識しなければならないと思う。
昭和生まれが知る米国は、ほとんど消えようとしている。黒人や中国人を使役していた米国は、過去のものになった。今や中国は、アメリカの最大の仮想敵国である。これは政治の力で止めることは出来ない。歴史の必然と理解するしかない。
明年からの10年は、①中国の過去の乱獲を含む過剰生産能力の調整②ロシア対ウクライナの戦争終結とその戦後処理③地球温暖化対策・海洋汚濁対策④アフリカの貧困や中東の紛争による難民増加への取組等々、難問への対処に追われる世界になるだろう。
私たち日本人は日頃何気なく「欧米」の用語を遣って来たが、欧と米との異質性は大きく、乖離の幅は開くばかりである。欧も米も、私たち日本人が明治以来捉えて来た過去の白人社会のイメージから急速に変容していることだけは確かなようだ。
国家にはその指導的階層が時代を累ねて形成した精神構造というものがある。その精神構造は、様々な人種や民族が流入することで変容する。その点では、わが国の精神構造は、敗戦後変わらない。
わが国が移民により最も変動を受けたのは弥生時代で、それ以降、精神構造に影響を受けるほどの大量の移民を経験していない。先進国の中では稀有な存在と言って良いだろう。
敗戦とその後の被占領による精神構造への影響の方が顕著だった。
アメリカという国家は、WASPと称された最も早い時期に移民して来たヨーロッパの英国(イングランド・スコットランド・アイルランド)からの移民が主流で、それにドイツ・イタリア・オランダ・ポーランドなど欧州各国からの移民が加わった白人国家としてスタートした。
老生世代の中学校の英語教科書の登場人物JackとBettyは、紛れもなく英国人の名前、登場人物にはネイティブは勿論、黒人系、ヒスパニック系はいなかった。中学の英語教科書は、当時の日本人の米国観でつくられたものだろう。教育というものは洵に怖ろしい。
一旦刷り込まれると、バージョンアップが無い。
人種・民族を意識させない英語教科書は、今日の日本人の人種・民族の問題や世界観の基調を定め、今日まで尾を引いているように思う。
意識して実情の吸収に努めないと、世界の認識との溝は広がるばかりだろう。
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