展示会名:トヨタコレクション企画展「100年前のオーディオ~蓄音機が変えた音楽の愉しみ~」
訪問日:2018年10月13日
場所:トヨタ産業技術記念館 特別展示室
期間:9月22日~12月4日
惹句:アナログサウンドの原点がここに
私の配偶者は、音の出るものにとても興味を持っている。表記の展示会があったので、両者で休暇を合わせ、訪問した。記念館は繊維関連と自動車関連の歴史的展示が充実しているが、他のモノづくりに関わる重要製品もコレクションしており、今回はそのうち蓄音機関連のものを、大阪芸術大学のコレクションと合わせて展示していた。
部屋は1室のみ、コンパクトな展示会である。入場は通常展示のチケットが必要。
展示されていたものは、エジソンの発明から最近までの音響機器に関するもの。電気的なアンプのないころの製品が多い。少しだけでなく最近のアンプ付きの蓄音機やテープレコーダが展示されている。またこの日はエジソンの蓄音機と、電気アンプ前の蓄音機の実演があった。
1.エジソンの蓄音機
エジソンは記録媒体として蝋の円筒を用いた。大きなロト状のものに向かって話すと、それが振動する。ロトの蝋円筒側に針がついており、その振動が蝋円筒を傷つける。蝋円筒は手回しで回して、傷がつく位置を変えていく。
その再生は、針とロト(ホーン)を丸ごと変えて再生専用のもので行う。その再生時に蝋円筒を回転させるのも手回しである。
エジソンはこれを現在のボイスメモのような用途向けとして考えた。実演では音はやや歪みボリュームはそれほど大きくない。蝋円筒は表面を削ることで、新しい内容を録音できる。
説明では、傷つけたところをなぞることで音が出るというのは、すでに知られていてエジソンの発明は音を大きく再生する機構だったそうだ。
2.発明直後の開発競争
電話機と同様、こちらでもエジソンとベル研究所が開発競争を繰り広げた。課題は下記。
(1)回転の安定化
(2)記憶媒体
(3)音量と音質
(1)回転の安定化
ゼンマイや錘をヒモにぶら下げて、それがゆっくりと落ちていく方式が適用された。ゼンマイがほぼ一般化したようである。
(2)記憶媒体
蝋円筒でなく銀箔なども考えられたが、ベル研究所で円筒ではなく平板のレコードが開発された。この記憶媒体の変化が起こったのは、それまでのボイスメモという用途ではなく、録音された音を、複写して多くの人に聞かせるという用途開発が発見されたためである。平板はプレスするのが容易だったので、その目的にかなっている。
これで暫く前の蓄音機、ビクターの商号「His master`s voice」の形状に近づいた。
(3)音量と音質
アンプのない時代、音量と音質を高めるために、さまざまな試みがなされた。ホーンのサイズ、材質、形状などが検討された。ホーンの材質が木の例、金属の例を下記に示す。
日本もこの頃になると蓄音機を作り出したが、なかなか頑張っている。
またホーンという概念ではなく、ダイアフラムを用いて音を増幅するタイプを下記に示す。
これらホーンやダイアフラムを用いた蓄音機は、美しい音を聞かせようとすると、その形が美しくなるのか、非常に意匠に優れている。
そうこうしている間に音楽、アメリカの場合ジャズを大衆が簡便に聴きたいという欲求に火が付いた。それでジャズのレコードが量産されるとともに、皆が大勢でダンスしながら聴きたいという希望から高性能のサウンドボックスが開発された。
このサウンドボックスで最も評判の良いビクター社のクレデンザの外観および内部構造を下記に示す。ボックスの内部に、音の道がとぐろを巻いている。ボックスの外観は重厚で品がある。
この装置で、SP版のジャズのレコードを聴いたが、広い部屋に十分な音量であり、音質が柔らかくとても素晴らしい。なにか音が身体の中で共振するように感じた。
現在の電気信号に一度変換されてそして電子機器で再生される音は、正確に再現されているかもしれないが、人が聴きたいという音ではないのではと思った。
3.その後 等
サウンドボックスと同時代品として、オルゴール的に音を再生する装置が展示されていた。
それから電気の時代に入り、テープレコーダ、アンプを使った蓄音機(いわゆる電蓄)が展示されていた。
しかし電気の時代の前のしゃれたデザインそれから優しい音を考えると、技術が生物への優しさを放り投げて進化しているように思った。
ある意味、クラシックカーから現代の車への進化とも似ているのだろう。
訪問日:2018年10月13日
場所:トヨタ産業技術記念館 特別展示室
期間:9月22日~12月4日
惹句:アナログサウンドの原点がここに
私の配偶者は、音の出るものにとても興味を持っている。表記の展示会があったので、両者で休暇を合わせ、訪問した。記念館は繊維関連と自動車関連の歴史的展示が充実しているが、他のモノづくりに関わる重要製品もコレクションしており、今回はそのうち蓄音機関連のものを、大阪芸術大学のコレクションと合わせて展示していた。
部屋は1室のみ、コンパクトな展示会である。入場は通常展示のチケットが必要。
展示されていたものは、エジソンの発明から最近までの音響機器に関するもの。電気的なアンプのないころの製品が多い。少しだけでなく最近のアンプ付きの蓄音機やテープレコーダが展示されている。またこの日はエジソンの蓄音機と、電気アンプ前の蓄音機の実演があった。
1.エジソンの蓄音機
エジソンは記録媒体として蝋の円筒を用いた。大きなロト状のものに向かって話すと、それが振動する。ロトの蝋円筒側に針がついており、その振動が蝋円筒を傷つける。蝋円筒は手回しで回して、傷がつく位置を変えていく。
その再生は、針とロト(ホーン)を丸ごと変えて再生専用のもので行う。その再生時に蝋円筒を回転させるのも手回しである。
エジソンはこれを現在のボイスメモのような用途向けとして考えた。実演では音はやや歪みボリュームはそれほど大きくない。蝋円筒は表面を削ることで、新しい内容を録音できる。
説明では、傷つけたところをなぞることで音が出るというのは、すでに知られていてエジソンの発明は音を大きく再生する機構だったそうだ。
2.発明直後の開発競争
電話機と同様、こちらでもエジソンとベル研究所が開発競争を繰り広げた。課題は下記。
(1)回転の安定化
(2)記憶媒体
(3)音量と音質
(1)回転の安定化
ゼンマイや錘をヒモにぶら下げて、それがゆっくりと落ちていく方式が適用された。ゼンマイがほぼ一般化したようである。
(2)記憶媒体
蝋円筒でなく銀箔なども考えられたが、ベル研究所で円筒ではなく平板のレコードが開発された。この記憶媒体の変化が起こったのは、それまでのボイスメモという用途ではなく、録音された音を、複写して多くの人に聞かせるという用途開発が発見されたためである。平板はプレスするのが容易だったので、その目的にかなっている。
これで暫く前の蓄音機、ビクターの商号「His master`s voice」の形状に近づいた。
(3)音量と音質
アンプのない時代、音量と音質を高めるために、さまざまな試みがなされた。ホーンのサイズ、材質、形状などが検討された。ホーンの材質が木の例、金属の例を下記に示す。
日本もこの頃になると蓄音機を作り出したが、なかなか頑張っている。
またホーンという概念ではなく、ダイアフラムを用いて音を増幅するタイプを下記に示す。
これらホーンやダイアフラムを用いた蓄音機は、美しい音を聞かせようとすると、その形が美しくなるのか、非常に意匠に優れている。
そうこうしている間に音楽、アメリカの場合ジャズを大衆が簡便に聴きたいという欲求に火が付いた。それでジャズのレコードが量産されるとともに、皆が大勢でダンスしながら聴きたいという希望から高性能のサウンドボックスが開発された。
このサウンドボックスで最も評判の良いビクター社のクレデンザの外観および内部構造を下記に示す。ボックスの内部に、音の道がとぐろを巻いている。ボックスの外観は重厚で品がある。
この装置で、SP版のジャズのレコードを聴いたが、広い部屋に十分な音量であり、音質が柔らかくとても素晴らしい。なにか音が身体の中で共振するように感じた。
現在の電気信号に一度変換されてそして電子機器で再生される音は、正確に再現されているかもしれないが、人が聴きたいという音ではないのではと思った。
3.その後 等
サウンドボックスと同時代品として、オルゴール的に音を再生する装置が展示されていた。
それから電気の時代に入り、テープレコーダ、アンプを使った蓄音機(いわゆる電蓄)が展示されていた。
しかし電気の時代の前のしゃれたデザインそれから優しい音を考えると、技術が生物への優しさを放り投げて進化しているように思った。
ある意味、クラシックカーから現代の車への進化とも似ているのだろう。