展覧会名:令和2年新春展 「新春の茶道具」
期間:2020年1月11日~2月16日
場所:昭和美術館(名古屋 杁中(いりなか)南山大学近く )
訪問日:2020年2月12日
私は、茶道具は興味がない。でもその日は天気が良く、ブランドエリアといわれる南山大学の杁中側を散歩してみたいと思った。その目標として昭和美術館を選んだ。歩いてみると確かにセンスの良い大きな家が多かった。
そして、昭和美術館。驚いたことに入口にたくさんの実をつけた柿がある。その日の陽気でつややかに輝いていた。鳥につつかれた後もほとんどなく、ある意味作り物みたいで不気味。
<渋柿の悲しみ>
赤々と
色づいたのに
無念なり?
啄まれてこそ
命広がる
赤々と
色づいたのに
無念なり?
啄まれてこそ
命広がる
美術館のHPでは、赤いけどまだ渋いようです。
この美術館は、戦前の中京財界の大立者が立派な庭を作りと茶室のある建物(尾張藩家老建造)を移築し、茶道具を収集したことに由来する。ちょっとした展示館があり、庭と旧来の建物が保存されて現在茶室として利用可能となっている。
展示されていたものは、40点足らず。それが学校の教室2つをつないだ広さの展示室の壁、および中央に並べられている。それらは、書画の掛け軸、種々の陶磁器、釜、茶入れ、茶杓等。
私は基本的に掛け軸や茶碗、花器くらいまでは見慣れているが、書やその他のものはどう見るか自信がない。
すると雰囲気のある高齢の女性が2人入ってきたので、その人達がじっと止まった時に感想がひそかに聞こえる距離(壁両面なので、背中合わせに近い)に近づいた。ともかく誉め言葉がうまい。
展示品で、ネット内に写真が存在して私が気に入ったものを3点示す。
1.掛け軸:狩野芳崖作「梅くぐり寿老人」 明治
雪舟の描いた古い絵をもとに、きらびやかなものに復元したもの。ぐにゃぐにゃの梅の枝の下から、老人が腰を曲げてのっそりと出てくる姿が面白い。
2.萬暦赤絵盛盞瓶 明代後期
女性の一人が、佇まいが美しい、白の地が艶やかとか褒めていたが、朱、緑、青の3色が見事に配置されている。絵もかわいい。
3.交趾黄鹿香合 明代後期―清代初期
掌より一回り小さなサイズで、上のほうは写真より艶のある黄色。もう一人の女性が、上から見た時に寝ころんだ小鹿の浮き上がる様子が可愛いと褒めていたが、確かにそう思う。
その他に精緻な摘みのある鉄窯や、黒の楽焼が私の好みだった。女性たちは書の掛け軸を気に入って、一生懸命読んでいたが、これは私にはわからない。
<茶道の嗜み>
誉め言葉
次から次へと
流れ出る
道具照れずに
輝きを増す
誉め言葉
次から次へと
流れ出る
道具照れずに
輝きを増す
女性たちの誉め言葉には感心しました。 茶道って褒めることが大事と聞いたことがありますが、なるほどと思いました。
4.庭および建物
建物が修理中、そして木々が落葉中ということで、状況的にはあまり良くなかった。でも建物は、確かに凝った造りだった。新緑または紅葉の時はどんな感じかな。
この日は春が来た感じで、庭の中のお茶席への待合にポケッと座っていると、なんか幸せな感じがした。頭の上では常緑樹が落葉樹に話しかけている。そして目の前の池では、つがいの鴨がゆったりと泳いでいるんだから。
<落葉樹さん 天井作ろう>
いい日和
そろそろ起きよ
若葉して
緑の天井
作らなければ
いい日和
そろそろ起きよ
若葉して
緑の天井
作らなければ
空の半分を落葉樹がうめれば完成。
<隠された小池>
小池あり
時も場所も
溶かしこみ
つがいの鴨が
幻へ誘う
小池あり
時も場所も
溶かしこみ
つがいの鴨が
幻へ誘う