昭和26年、私が小学校に入る前年の事だ。 その前の年には、国鉄己斐駅前(現在のJR西広島駅)の闇市場で、アメリカのNPと日本の警察の連合と、広島のヤクザ「岡組」との間で、激しい銃撃戦が有った。 闇物資の取り締まりだったが、「岡組」の勝ち。 皆が、警察側を妨害したからだ。 この「岡組」が後に二つに分かれ、かの有名な広島ヤクザの抗争事件(仁義なき戦い)になっていった。 それはさて置き、その己斐駅前で、毎週土曜日の午後、バナナの叩き売りが有った。 その口上が面白かったが、それよりビックリさせられたのが、語られたバナナの薬効であった。 その時私は、近所の子供たちと、太田川放水路にアサリ取りに出かけて、その帰り道だった。 当時、朝の御みそ汁のアサリは、子供が河で採って来るのが常識。 貧乏な我が家においても、例外ではなかった。 幾らでも取れた。 さてそのバナナの叩き売りのおじさんが、座り込んでみていた私を捕まえて、みんなの前に連れて行った。 そしてバナナの叩き売りの口上の中で、バナナの美味さや、栄養があること以外に、薬効が有ると言い始めた。 そして、一本のバナナを剥くと、その皮で私の汗疹だらけの背中をこすり始めた。 それから私に言うには、「今晩は風呂に入らない事」と言ったのだ。 明日の朝には、汗疹が治っているという。 そのバナナの中身は、私にくれた。 実際に、汗疹は翌日には治っていた。 その時の口上では、弱った畑の野菜の周りに、バナナの皮を刻んで埋めてやると、三日で元気になると言っていた。 これは今までに実験していないが、切り傷にもバナナの皮が聞く事は確かだ。 マリヤンカ様がご紹介された、「キンランソウ」に近い薬効が有る様だ。 後に知ったのだが、このバナナの叩き売りのおじさんと、私の父は知合いであった。 どんな関係課は知らないが、私の父親は不思議なオヤジで、市内の劇場で公演する「手品師」が友人だったりした。 どうも、満州の奉天時代からの知り合いらしかった。 そんなこんなで、昔話はお終い・・・・・・。
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