港湾での荷役作業
1992年国際条約バーゼル条約により、各国間の越境移動が禁止されましたので、それまでの間、輸入石綿原料の荷役作業による曝露が中心です。ただし日本は、2005年まで、この条約を批准せず、カナダから石綿を輸入し続けました。又、北海道富良野から、主に船で日本各地の石綿を必要とした、加工企業例えば、自動車のクラッチ板製造工場や、ガラス製造工場、ブレーキ部品製造企業、耐熱煉瓦工場、各種建材工場に運ばれました。こうしたコンテナや、鉱石を荷下ろしした港湾労働者が、当然に曝露してきました。日本も1968年に、大気汚染法で、規制しましたが、安全作業に必要な法整備はされず、曝露者の拡大を招きました。したがって、前記の職業従事者も、当然に石綿曝露者なのです。経済産業省は、石綿に関する職業従事者の、実数を把握していません。建設関係者が、2012年現在で、670万人ですが、建設最盛期には、1000万人を大きく超え、港湾、自動車、建材製造、・・・累計で2000万人(最大時)が石綿関連事業に従事していましたから、今後、何人の石綿による被害者が発生するのか予測できないのが実情です。政府(厚生労働省)は、40万人と、石綿被害の発病を予測していますが、その様な数字で済まされる状況ではありません。すでに胃がんを抜いて、肺癌が発生件数で上回り、今後この傾向は加速的に右肩上がりと成ると予想されています。
近年、胃癌、大腸癌、心膜癌、あらゆる癌から石綿が発見されつつあります。どの様なシステムで発癌してゆくのかさえ、解明されていません。従来、石綿による癌は、転移しないとされましたが、転移の症例も報告されています。
何より石綿被害者の不安は、専門医師が存在しない事です。また、中皮腫の前段階である、胸膜肥厚でさえ、治療方法が確立されていません。いや、その研究さえされていないのです。国は国際条約を無視し、石綿の輸入を止めず、又国内産の石綿の移動も禁止しませんでした。
なぜか?。ここに「原発」が大きく係わってきたのです。2012年現在でも、「原発」に限り石綿の使用を認めているのです。つまり、国民の健康より、電力会社の利益優先の政策を歴代政府が取ってきたのです。いずれこの代償は、核廃棄物問題と共に、国民の肩に大きく圧し掛かって来ることは間違いありません。
福島原発事故こそ、政策を大きく転換する切っ掛けとしなくてはならないのです。原発核廃棄物、商業活動核廃棄物の劣化ウラン、1200万トンといわれる石綿廃棄物。政府は今こそ未来を見据えた政策を国民に示すときなのです。年金も大きな問題ですが、健康あっての年金である事を忘れていませんか。
国の熟慮を望みます。