リクエストのあった二○式の設定を掲載します。
二○式は私の受け持ったAWGSのなかで最後に描かれました。
他の設定の影響で製作時間が圧迫され、細かい詰めが甘くなり、
完成度の低下をきたしてしまいました。
● 二○式
画像は後で描かれたポーズラフを先ほど塗ったものです。
日本的な兵器の特徴を要求され、現用自衛隊兵器を研究したものの
それは明確な定義のむずかしいものでした。強いて形で言えば四角い
と言う事が言えます。最近の日本の陸上兵器は寸法と重量の制約から
寸詰りでこじんまりとしており、容積を多く取るためか四角いのです。
時間もないのに煮詰まってしまい、過去のガングリフォンからデザインを
参考にしようとも考えましたが、それは有効な考えではありませんでした。
12式は全く日本的ではなく自由にデザインされた事は明らかです。
● 二○式 コンセプト
二○式のデザインは、このようなコンセプトから始まりました。
胴体の中心に円筒形のコクピットモジュールがあり、これが脱出装置
を兼ねています。上半身は戦車の砲塔のように旋回ができ、ここに
砲や弾薬がセットされます。
主翼は使わないときは折りたたまれ、邪魔にならないように配慮します。
その他、推進器の推力軸が重心を押し上げるように配置し、動力のリンク
や砲弾の通路、装甲スペースなど、バランスを取るように考えました。
● 二○式 三面図
こうして時間の切迫する中描かれた三面図ですが、モデリングチームは
この図面を無視して独自のバランスで3Dモデルを作ってしまい、時間がなかった
為かリテークもなされなかったのです。
これらを行ったモデリング班はその後すぐやめたと聞かされました。
向うでは、製作スタッフが簡単に退職するのは珍しくないそうです。
コンセプトを詰め込んだために、立体的に複雑になって二次元の絵では
非常に描きにくい物になってしまいました。
コクピットへのアクセスや推進装置の位置、兵装・翼の配置などは正しい
物ですが、いかんせん時間がなく細部のディテールがついて行きません。
● 二○式 細部補稿
腕はスライドして伸びるようになっており、横転した時のジャッキとして
使えるよう配慮されています。この部分にミサイル等をつけることも考え
ましたが、造形が複雑になるので断念しました。
● 二○式 改稿
この機体もユーザー視点が単純な点が指摘され、頭部の後ろに電子戦
装備が、砲弾用弾装にバスケットが付け足されました。
また、担当氏が脚部のディテールや構造に不満を表明したので、下のように
設定画が描き足されました。
さらに、初代ガングリフォンのように股間の幅を広く取るべきと主張したので、
私が折れる形で改案が描かれています。しかし、これが生かされたかどうかは
確認していません。
● 脚部 補稿
結局、二○式は私にとって位置付けのはっきりしないメカになってしまいました。
もし、他のガングリフォン2機分の時間を使ったなら、確実に良いものなったはずで、
返す返すも残念に思います。
12式とはいろんな意味でデザインラインが違うんですけど、かかとのダンパーや脹脛の処理に部分的な共通点があるなーと思ったり。
正直、ゲーム画面で見かけた20式のあまりのひどさにめまいを感じましたが、この原画とコンテを見る限りとても安心できるデザインなんだと胸をなでおろしました。これなら、ガングリフォンですwwwww
20式をラフイラストとして色々と書き散らかしているのですが、もっと素敵に書きたいですw
二つ程お聞きしたいのですが、
パイロットの昇降はどこから行うのでしょうか?
12式では首の部分が跳ね上がって上から乗り込むシステムになってますが、20式も同じなのでしょうか。あるいはガサラキのように後ろから乗り込むのでしょうか?
あと、パワーユニットの幅が太いように見えるのですが、もしかして20式は12式改と同じターボファンジェットだったりします?^^;
長々と失礼しました^^;
それでは。
この位置なら昇降のための設備も最小限で済みそうです。
昇降口については解決されたようなのでエンジンについてお答えします。
エンジンは推力を発生すると同時に軸で動力を出力します。その出力で前のファンを駆動して飛行します。
ただ、駆動軸を前まで伸ばすのにはスペースが足りないようですので、一端電力に変換して前ファンの
モーターを回す方法が考えられます。そうなると軸による出力は必要ないことになります。
二○式の主砲はETC砲(電熱化学砲)という機構になっていますが、これは大電力を消費します。
また走行装置や各部の駆動にも電力を使うので動力系統は統一しておいた方が良いと思われます。
十二式のエンジンと比較すると外見は非常に大型に見えますが二○式は十二式よりかなり小型なので
(というか世界観自体が異なるので)エンジン自体の大きさはそれほど変わらないと思います。
排気の冷却のために大きなダクトと偏向パネルがあり、このあたりも十二式と異なる点です。
言われてみれば設定図の人型モデルの身長3つ分の全高。180センチなら6m弱の勘定なので、12式よりも2m以上小さいことに。
スモールパッケージ&ハイクオリティを目指した結果なのでしょうか。たしかにAWGSは立っている分被発見率も被弾率も大きいし、背が低いということは大きな利点になるでしょうね。
エンジンの構造、理解しました。
コールドセクションのファンを電動駆動させるシステムは思いつきませんでした^^;たしかにこれなら出力の大半を推力に回せて純粋にパワーアップできますね。
排気ガスの冷却ということはAH-64のブラックホール・オカリナ的なモノが装備されているということでしょうか?対KEMのみならず熱源に慎重にならなければならない場面で威力を発揮しそうです。
改めて見返してみると、やはり20式はいろんな意味で12式から進歩・進化した機体なんだと思います。
不完全燃焼ということですが、もしこれが万全の形で世に出ていたなら、どれほどすごい機体になっていたでしょう。
アライドストライクの顛末といい、個人的にも非常に残念です。
20式LOVEを改めて宣言させていただき、今回はこれにてw
ではではw
これは担当氏の意見で決まったことで、このブログでも触れられていますが
戦車に対して十二式は大きすぎるので
一端世界観をリセットしてAWGSの大きさを縮小しようという方針に沿ったものです。
ですからアライドストライクに出てくる十二式は他のガングリフォンタイトルの十二式よりも小さいはずです。
>排気ガスの冷却ということはAH-64のブラックホール・オカリナ的なモノが装備されているということでしょうか?
そうですね。ぼくがデザインした他の機体でも一応考慮してあります。
.
アライドストライクは一部の慎重な批評とは裏腹に愉快犯のような批評家がついてしまって悪評が定着した
のは実に残念なことです。デバックにも参加した関連で私も製作中に疑問を感じたことは多かったのですが
それらを改正する力量が自分になかったことも悔やまれるところです
コメントありがとうございました。今後もご支援ご鞭撻賜りたいと思います。
山本さんにお聞きしたいことがあります。
知人でゲームクリエイトに関わっている人物がいます。曰く偽名で活動する場合が多く、自分の事はスタッフロールを見ても確認できない、との事です。
山本さんもやはりスタッフロールに名前を載せず、偽名でクレジットされたんでしょうか?
可能でしたらお答えいただければ幸いです。
アライドストライクの事はお好きでしょうか?大変失礼な質問とは考えながらもお聞きしたいのです。
不躾な質問を重ね重ねお詫び申し上げます。
お返事送れて申し訳ありませんでした
> 山本さんもやはりスタッフロールに名前を載せず、偽名でクレジットされたんでしょうか?
本名で名前が書かれているはずですが、確認したわけではありません。
ただ、メインのデザイナーの名前がないということは有り得ないので、抜けていたとすれば何らかの意図は感じます。
>アライドストライクの事はお好きでしょうか?
1年近くに渡って心血を注ぎ込んだ仕事なので愛着はあります。
好きか嫌いかという言い方はちょっとできません。なぜならゲームというのは多くの人が関わってできているものなので
自分がメインのデザイナーだからといって好きとは言えませんし、失敗作の烙印を押されたからといって嫌いとは言えません。
仕事である以上、好き嫌いを超えたところで関わっていると言えましょう。
コメントありがとうございました。
画質の問題で文字が潰れているのでそのせいかもしれませんが、少なくともTECMOとGAMEARTSとKAMAのスタッフ以外はおざなりにされている感じがあります。
プレイ動画で見る限り、明らかにアライドストライクはブレイズまで続いていたガングリフォンの流れをぶった切った作品であることは明白です。
作品の改革や新段階へのチャレンジはどのカテゴリでもあることですが、アライドストライクの場合はほぼすべての新要素が悪い方向へ向けて進んでしまった感じが否めません。
かくいう私もアライドストライクを遠ざけていた一人でした。
しかし、今はアライドストライクなりのいいところを見つけられるところまでは好きになっています。
そのきっかけを作ってくれたのが、山本氏がデザインした20式をはじめとする新機体のラフの存在です。
かけはしとなったその存在に、心からの敬意を。そして、より一層の活躍をお祈りいたします。
あ、最後に一つだけ。
8mスケールというAWGSの大きさ(つまり初代基準)は山本氏にとってもやはり大きいほうでしょうか?
アライドストライク担当の方(テクモの人かな?)が8mというサイズに不満があるというのが、個人的にはどうしても理解できないのです^^;
アライドストライクの製作は他社との提携が前提で、それぞれの仕事場に行き来があるわけではなく
課の代表が話し合いの場を持ったのみです。
旧来のスタッフとは数時間の会談をしただけであとはすべて我々に任されました。
その上、我々の他のスタッフは軍事技術に関しては素人に近く、あれでも努力の成果が見られた方と言えます。
軍事に最も詳しいと思われる私の方から提言をしてもそれがそのまま通る訳ではなくテクモ側の反応は
担当のD氏を通じてのみ語られました。
製作現場の一体感が削がれていた感は否めず、また企画段階で私が意見を言う機会はほとんどなかった為
私のソフト的な発言に製作現場の一つのパーツを超える権限はなかったと言えます。
それ故リテークに関する事で意見が通らず、目に見えて完成度の低下をきたしたのは残念な点です。
>8mスケールというAWGSの大きさ(つまり初代基準)は山本氏にとってもやはり大きいほうでしょうか?
本文にも書きましたが、戦車と比較してどうなのかといった判断で、戦車を踏み潰すような巨大さは
ガングリフォンには似合わない(リアルではない)と思われたからからです。
実際の兵器でも大きくなればなるほど技術的に難しくなる傾向があり、適当な線で歯止めをかける必要がありました。
航空機の機動力と、ある程度の装甲・武装を両立させるにはエンジンパワーよりも小型化が有効であることは
昨今の戦車などにも言える特徴で、そうした観点からも正しかったと考えています。
と言うか、本音を言えば僕と担当のD氏のロボット観が、ガンダムよりボトムズという事なのかもしれませんが(笑い)