ブナは痴呆が進んで徘徊も増し、なぜか狭い所に入り込んだり、顔を突っ込むようになっていた。狭い場所に入り込んだり、顔を突っ込んだりしてブナが困らないように、室内のあちこちに柵をしたり、板で塞いだりしていた。
室内には滑らないように、転んでも痛くないように、ヨガマットを敷きつめ、排泄物で汚れれば、そのつど洗って盛大に干していた。
トイレパレットは使えなくなっていたので、床にペットシーツを敷き、水飲み用の食器スタンドは足を引っ掛けて危ないし、ひっくり返して水浸しにするので、バケツに重石を入れて倒れないようにして、直径がぴったりのボウルを探してきてそのうえに設置して、水飲み場を確保してやったりもした。
視力が落ちてしまっても徘徊するので、あちこちにぶつかる。いくら少しボケていたって、鼻先やおでこが痛かったろうと思う。鼻の中が出血した跡を見つけたので鼻先を保護してやろうと口輪を買ってあげたのに、注文した日にブナが亡くなってしまい、口輪はブナのお弔いの日の朝に届いたのだった。
ブナ、この口輪はね、酒井先生に使ってもらおうと思って差し上げたよ。「ブナの置き土産です」って言ったら、先生、哀しそうに困ったような顔をしていたよ。
でも、お母さん、先生に誉めてもらいました。「いつもそのつど冷静に対処して、きちんといのちを全うさせてあげられたと思う」って。私の果たすべき責任はそれだけと思ってやってきたから、少し嬉しかった。ブナもそう思ってくれているかな。
鼻先や顔をぶつけるのを防ぎ切ってあげられなくて、ごめんね、ブナ。
こんな雪の日に、ブナは白い煙になっちゃった。
「もう食べたくない」って歯を食いしばったのは、逝く数時間前だもんね。おなか、すかせていなかったよね。最後にごく普通に「ワン、ワン」って何度も吠えて、みんなにお別れを言ってたね。
寝た切りにもならず、最後まで自分で歩いていたけれど、もう鼻先をぶつけなくてもいいから、お母さんも安心です。
ノエホタ母からもピッコイ&アユンギ母からも、酒井先生からも、そうそう、グラッシーの父さん、母さんからもお花が届きました。ブナ、皆さんに「ありがとう」の愛を送ってね。
ブナはうちで生れたから丸々14年10カ月と8日、一緒に過ごしたことになる。ありがとう、私の可愛い、可愛いブナ。