今日は薬の補充と検診のためにクリを連れて病院へ。後肢はナックリングも激しく、ふらついて歩けないので、買っておいた「抱っこハニカムマット」に包んで、抱いて車に乗せた。
「抱っこハニカムマット」は体圧分散マットに頑丈なシャルダーベルトが装着できるようになっていて、「一人で大型犬を寝たまましょえて担架にもなる」という優れ物。アイアンバロンの介護用品は、本当に痒い所に手が届くように細部にわたってよく考えられており、大型犬を介護する者には強い味方である。
マットのクリを寝かせたまま抱っこして通院。酒井先生も「いろいろと便利なものがあるのですねえ」と感心することしきりでした。
クリが何度も吐いたというのを聞いていた先生は、背中から注射することで水分を補給することも考えていたそうだが、そこまでの脱水状態にはなっていなかった。何度にも分けて経口補水液を与え続けたことが奏功したようでほっとした。
「よろよろでもいいので、もう一度歩けるようになってくれるといいのですが」と先生。クリがふらついてしまうのは、もちろん体力が落ちたせいもあるけれど、ヘルニアが悪化したからだろうとおっしゃる。ヘルニアは悪化したからといって必ずしも痛みを伴うわけではないという。今までは筋力でカバーでした歩行も、体力、筋力の低下によっておぼつかなくなったわけで、腫瘍の直接的な影響ではないようだ。
ということは、少しずつ体力をつけて、よろけても歩く練習をすれば、補助されながらでもまた歩けるようになるかもしれない。端から「もう歩けなくなってしまったんだ」と決めつけていた自分がいたのだけど、ほんの少し、ほんの少しだけど「希望」という言葉がこっちに近づいてきた気がした。
とにかく吐かせずに栄養を取らせることが第一。なんとか工夫しながら栄養補給、水分補給を続けていこう。
クリはハイカロリー栄養食「チューブ・ダイエット」を飲ませるようになってからも、たびたび吐く。せっかく栄養を補給してやれたと思ったのに吐かれるとがっかりするのだけど、苦しいのはクリなのだから、せっせと吐瀉物で汚れた敷物やタオルの洗濯をするしかない。
ブナのときは排泄物で汚れた物の洗濯に明け暮れたが、今度は吐瀉物で汚れた物の洗濯が待っていたのだった。
酒井先生が「チューブ・ダイエットで何度も吐くようなら、クリちゃんに合わないのかもしれないので、ほかの高栄養食も試してみてはどうでしょう」とおっしゃった。
チューブ・ダイエットを追加注文してしまったばかりだったのだけど、ネットでロイヤルカナンの回復期の高栄養食「退院サポート」を注文する一方で、すぐに入手したかったのでペットショップ「コジマ」に車を飛ばした。
「コジマ」は生体販売をしているだけあって、さすがの品揃えだった。ヒルズの「a/d(回復期の高栄養食)」を売っていたので、5缶ばかり買って帰る。
しかし……、「退院サポート」も「a/d」も安くない。クリがきちんと食べてくれるのであれば「a/d」は1日4缶与えるのがベストなのだけど、1日分で1,200円だ。薬代だけでも1週間に7,000円以上かかるので、福沢諭吉さんは私の財布になかなか居座ってくれない。
トホホだけど「a/d」だと栄養バランスも考慮されており、1缶で160Kcalは摂取できるから、低カロリーで栄養価の低いおやつだけしか食べないと悩む心細さはなくなる。
2~3時間置きに小分けにして給餌し、負担にならないように気を配っていたのに、今日は3度も吐いてしまった。急に高カロリーのものが胃に入って負担なのだろうか。ヨロヨロと起き出しては何度も水を飲みに行く。喉が渇くのかなあ。
水を大量に飲んでは吐いてしまう。嘔吐すれば水分も失われるので、時間を少し開けて経口補水液で水分を補ってやることになる。
今日は病院がお休みだったので相談できなかったけど、今度は「a/d」じゃなくて「退院サポート」を少し薄めてやってみようかなあ。おやつもあげれば少しだけど食べるし、注入器の給餌を嫌がるわけではないので、食べること自体拒否していないのだけど、思いのほか肝臓周辺の腫瘍が肥大して胃を圧迫しているか、別の見えない問題があるのか。いずれにしてもクリが辛くないのならいいのだけど……。
後ろ足が萎えてしまい、もうお散歩に出る体力もないので、一緒に桜も見ることができなかった。まあ、クリが花見をしたいと言っているわけではないので、これは単に飼い主のエゴだけど……。
クリの左後肢の膝の内側にやはり腫瘍ができている。その下の飛節辺りが腫れぼったくなっていたので、今日、通院時に酒井先生に聞いてみた。何か悪性のものというのではなく、膝関節内側の腫瘍のせいでむくんでいるだけのようだった。
いくら高栄養の流動食を与えても、それで体力がまかなえるわけではなく、量を増やせば下痢をすたり吐いたりするので、調整しながら与えている。
今のところ、クリのどこかがひどく痛んだり、苦しんだりしている様子は見受けられず、起きぬけには自力で立ち上がるのが難儀そうだけど、私が上着を羽織れば散歩に行けると思い、勢い立つ。ただ歩けるのはエントランスまで。
数日前からは先に車をエントランス前に回しておき、クリをエントランスまで歩かせて、スロープで立ち止まって歩かないようなら、抱きあげて車に乗せるようにしている。
公園や河川敷に行っても歩く距離はしれているけれど、それでも出たがるうちは抱いてでも外に出してやるつもりでいる。
年齢も年齢なので、癌の進行が遅くなることはあっても、自然寛解や完治は考えにくい。本当にあちこちにしこりができているのだもの。
少しでも楽になることを願ってステロイドや血栓予防薬を与え、少しでも食べてくれるなら食べられる物を与え、残りの日々を安らかに過ごさせてあげるしかない。先生が「今はもうホスピタルでの治療ではなく、ホスピスでの……」と言いかけたので、それを受けて私が「ターミナルケアの段階だと思っています」と言うと、静かに「そうですね」とおっしゃった。
少し前に先生がどのような状況になったら安楽死を勧めるかということを話してくれた。呼吸不全に陥り、その苦しみに手の打ちようがない場合と激しい痛みをどうにも回避させてあげられない場合。クリの場合、どちらも可能性があるといえばある。
かつて動物を安楽死をさせる場合、筋弛緩剤のような、意識はあるのに体は動かなくなると言う、とても「安楽」とは言えない薬を使っていたことを知っていたので、どんな薬を使うのか念の為、聞いてみた。現在ではさすがに筋弛緩薬や逝くまでに時間のかかる麻酔用注射液ではないと教えてくれた。
そんなことはあまり考えたくないけれど、クリのために最善を尽くしてあげるためには、冷静に「善き死」も考えておかなければならないだろうと思っている。死は決して敗北ではないのだから。
クリは食べることを拒否しているわけではないのだけど、口にするものはすべておやつの類ばかりで、栄養価も熱量も不足している。あんなに毎日のように食べていたローストビーフも、今では買っても私のおなかに納まることになってしまう。焼き魚類をあげても顔をそむけ、「欲しいものはこれじゃない」というように少し哀しい顔をする。
体力が落ち、距離を歩くことができなくなった。けれども、散歩には行きたいという素振りを見せる。抱いて行ったり、カートに乗せて行ったりすれば、途端に歩けなくなってしまうだろうから、悩ましいところだ。
とりあえず車をエントランス先に回してから、クリを部屋から出して乗せ、たとえ長く歩かなくても、公園に行って土や風の匂いを感じてもらい、ほかの犬と挨拶させたりしている。
栄養補給に関しては、酒井先生に相談のうえ、高栄養、易消化のバランスフードを必要とする犬猫用のハイカロリー消化態経腸栄養食「チューブダイエット【ライト】」を与えることにして、いつも特別療法食を買っているサイトに注文した。
20g入り20袋で4,800円くらい
高栄養療法食の缶詰でも食べてくれれば楽なのだけど、缶詰もイヤイヤするのだから仕方ない。
「チューブダイエット」は代謝エネルギーが510kcal/100gとハイカロリーのパウダーで、粗たん白質が43.0%以上と高たん白で、16%濃度に溶解した場合、体液とほぼ等張となり、下痢も起こしにくいらしい。ビタミン・ミネラル類のほか、タウリン、オメガ脂肪酸も配合されているバランスフードである。
動物病院でも使うという栄養補給食で、経口給与のほか、経管給与、つまり胃に直接チューブで入れるとか、鼻からチューブを入れて食道に流すといった与え方もするようだ。
昨日届いたので、早速クリにあげてみた。クリにはペースト状にして、注入器かシリンジで口に入れてやっている。今は口腔内に傷をつけないように、シリコンの乳首が付属した注入器が売っていて、安全性も高く、使い勝手もよくて驚いた。
1袋20gのパウダーに対して1~2の割合の微温湯で溶かして与えるのだけど、クリの体重からすると全量給与の場合、1日150gくらいはあげなくてはならない。日数をかけて少しずつ増やしていくつもりだが、腫瘍で胃が圧迫されているクリは一度にたくさん与えると吐いてしまうので、1日の給与も何度かに分けてやらなければならない。
乳飲み子がうちにいるという感じ。いっぱいミルクを飲んで、ぐんぐん成長していく乳飲み子なら希望が持てるが、うちの乳飲み子はいのちのともし火がはかなく揺れている弱々しい乳飲み子なので、なんとも切ない。
クリがいつ歩けなくなってしまうか分からないので、まだ散歩に行きたがっているうちに外で遊ばせてやりたいと思い立ち、妹ファミリーが自分たちで家(小屋?)を建てている房総に泊りで出かけることにした。
もともと神経過敏なクリは、移動中の車の中でゆっくり眠ることができず、疲れを溜めてしまうことは分かっているのだけど、同行する妹ファミリーのことはクリも大好きだし、クリと私だけにキッチンにしている小屋を使わせてくれるということなので、夜はクリもそこでぐっすり眠れるのではないかと思い、決行したのだった。
私とクリが泊った部屋
中はこんな感じ。Oクンと妹の手作り。内装は妹の力作
妹のパートナーのOクンはかつての仕事仲間で、それこそ幼犬のトチ連れで事務所に出勤していた頃には、仕事の合間に彼がトチを散歩に連れ出してくれたりしていた。Oクンが妹と一緒になったあとも、犬連れでキャンプにも行き、トチもブナもクリもOクンにはとても懐いている。犬たちの状態をよく分かってくれているので、彼らと出かけるのは気兼ねなく頼みごともできて、安心なのだ。
今回は特に、ヨタヨタになったクリ連れだったので、随分気を使ってもらったけれど、クリは疲れは見せたものの、野外での時間を満喫していたように思う。海辺に連れて行ってもらったクリが、水猟犬の血が騒いだのか、一直線に海に向かって行ったのには慌ててしまった。
海を眺めるクリ
「よかったなあ、クリ。気持ちいいか?」とOクン
「クリ、見てご覧、海だよ。気持ちいいねえ」と妹
本当なら七輪を囲んでゆっくり呑みたかったのだけど、いろいろなことがひと段落して疲れが出ていたことと花粉症にやられてボロボロになっていたために、早々とクリと小屋に入ってしまった。ちょっと残念。クリが心配で、姪っこともあまりたくさん遊んであげられなかった。
でも、晴天に恵まれて、クリを連れ出してあげられてよかった、飼い主の自己満足かもしれないけれど。妹たちに付き合ってもらえてよかった。私のとってクリの晩年の大切な思い出になった。
妹たちが寝泊まりする小屋のデッキでくつろぐクリ
泊った小屋で日向ぼっこ
クリの肝臓周辺にできた腫瘍はぱんぱんと硬く大きくなり、私が触れてもそれがよく分かるようになってしまった。時々呼吸が荒くなるので、肺に癌が転移している可能性も考えられるため、先日、レントゲンを撮った。昨年の11月に撮った映像と大きな変化は見られなかったものの、気になる影も見受けられ、どうにもやるせない。
先生は「痛みが激しければ、もっとぐったりしてしまうでしょうから、おそらく今、痛いわけではないと思うけれど、よくここまであっちこっちに腫瘍ができているのに、不機嫌そうな表情も見せずに持ちこたえていると思います」とおっしゃる。
そうなのです、散歩にも行きたがり、待ち切れなくて吠えて催促することもあるくらいなのだから、痛みで苦しんでいる様子はないのだけど、なにしろ食べないことが大問題なのだ。
冬木立ちの中をお散歩(和光樹林公園にて)
肝臓周辺の腫瘍のせいで胃が圧迫されており、以前のように一度にたくさん食べられないらしく、吐くこともしばしば。ロイヤルカナンの消化器サポートを買ってしばらくはそれを食べていたけれど、今はもう見向きもしない。いわゆる犬の「フード」は一切口にせず、食べるのは「おやつ」の類のみ。牛乳はまた飲むようになったけれど、再び不安定な食生活に戻ってしまったのでした。
腰骨もはっきり分かるほど痩せてしまったクリ
とにかく食べられるものを食べてもらっている。点滴等で栄養補給ができないか先生に相談したところ、点滴などで入れられる栄養価は知れていて、やはり口から摂取し胃腸で吸収することに勝ることはないとおっしゃる。
決して十分な栄養素とカロリーを摂取できているとは思えないのだけど、日に何回かに分けて、吐き気止めが効いている調子のいい時間に、何とか食べられるものを食べさせているという状態だ。
ブナは痴呆になる以前と同じエサの量でも次第に痩せていき、亡くなったときは、私が最適だと思っていた32キロから7キロも痩せ、25キロしかなくなっていた。しっかり食べていてもそうなのだから、食が細くなったクリはいかばかりか。ただでさえ私にとって「小さなラブ」だったのに、今では更に軽々と抱き上げられることが哀しい。
足が萎えたクリは踏ん張りがきかず、ときどきトイレシーツに足を引っ掛けて転んでしまうことがある。ペットシーツもくしゃくしゃにならないように、今ではセロテープで床にとめているので大分解消されたけれど、滑って転んで胴着がオシッコまみれ、ウンチまみれになってしまったことがある。
そのため「着たままねんねのハニカム胴着」をもう1着購入した。お値段もそれなりにして、1着15,750円するのだけど(自分の服でも、そんなに高いものは買いませんが)、本当によくできて重宝している。
もう1着は柄違い。肩ひもが若干長いので、縫いつけて少し丈を詰めてあげようと思っている。
腫瘍がある犬には、できるだけ炭水化物を控えるように言われていたけれど、口にする物が限定されてきたクリには、そんなことを言っている場合ではなく、酒井先生との間で「この際、食べられる物をあげましょう」という基本合意が成立。
(って、企業のM&A戦略の原稿を書いていたので、つられて固い変な文章になってしまった。)
以前していたような手作り食も試し、あれやこれや試行錯誤の日々だったけれど、下痢や嘔吐は時々あるものの、だんだん嗜好が固まってきて、安定してきた。
クリが好きなのは、ボーロ、ローストビース、ササミ、魚ならホッケの一夜干し……。ボーロはともかく、後は比較的値が張るものばかり。そのほか「ふわふわ砂肝」などのスライス系のおやつも、よく食べる。
半生タイプと缶詰は一切食べなくなってしまった。何度か吐いたので受け付けないくなったのである。酒井先生にそう告げると「それは、ある意味、正しい反応です」とおっしゃる。それを食べて吐いた場合、異物だとして受け付けなくなるのは、動物のリスク回避の本能だからだそうだ。納得!
だから、食べられる物でも与え過ぎで吐くということがないように、注意しながらあげている。
と、そんなある日(おとといのことだけど)、ボッチにあげているロイヤルカナンの「消化器サポート(可溶性繊維)」を袋から小分けするために瓶に移し替えているときのことだった。うっかりこぼしてしまったそれを、クリがポリポリ拾い食いをしているではありませんか!
ドライフードは飲み込みにくいために食べたくなくなったのかと思っていたのに、そうではなかったのか。
ロイヤルカナンのフードは匂い付けが巧みなのか、嗜好性が非常に高い。ボッチもこれだけは飽きずにちゃんと食べてくれるので、巨大結腸症によるひどい便秘を克服できたのである。
「もしやロイヤルカナンなら」と思い、すぐにロイヤルカナンの犬用特別療法食を調べて酒井先生に相談しにいくと、先生のところに試供品が届いており、クリに良さそうものを入手することができた。それが「消化器サポート(高繊維)」と「消化器サポート(低脂肪)」というもの。
早速食べさせてみると、なんとクリが食べるではありませんか! これで一気に気が楽になったことは言うまでもありません。
すぐにロイヤルカナンの「消化器サポート(高繊維)」を注文した。またいつそれを食べなくなるか分からないが、ほかの好きなものと混ぜながら、何とかクリの食を維持しようと思う。
フードが安定することで下痢が治まれば、薬が1種類減ることになるもの。どうかクリのおなかに合いますように。
今日はトチの子どもたちの誕生日。15年前の今頃は、ちょうど2頭、産み落とされていた頃だ。
ブナの姉妹犬で唯一存命しているほたる、昨年は2度も全身麻酔をかけなくてはならなかったけれど、元気に年を重ね、15歳を迎えた。おめでとう、ほたる! すごい、すごい。飼い主さんにも感謝、感謝。
今のままのほたるなら18歳まで頑張れそうだ。健やかな晩年を心から望んでいます。