昨日読了した本『平気でうそをつく人たち』、選挙前だからといって、何も政治家の人々を書いた本ではありません。まあ、彼らの中にも平気でうそをついている人はたくさんいるけどね。
副題は「虚偽と邪悪の心理学」。著者は精神科医であり心理療法家のM・スコット・ペック博士。
ペック博士は自らの診療経験から、世の中には「邪魔な人間」がいると考えるに至ったわけです。本書では、ペック博士が診療室で出会った邪悪な人たち、つまり患者として心理療法を受けに来た人たちなんですが、その人たちとの会話を丹念に再現し、彼らの実に巧妙な責任転嫁の仕方や隠微なうそをリアルに書き綴っています。
ペック博士はそうして、彼らの核にあるのが「過度のナルシシズム」であることを解明していくのです。
思わず引き込まれてしまいました。犯罪を犯す者は必ずしも邪悪な人間ではないんですね。博士がいう「邪悪な人間」とは、
・どんな町にも住んでいる、ごく普通の人、であり、
・自分には欠点がないと思い込んでいる人。そして、
・異常に意志が強く、
・罪悪感や自責の念に堪えることを絶対的に拒否する人。また、
・他者をスケープゴートにして、責任を転嫁し、
・体面や世間体のためには人並み以上に努力する。そして、
・他人に善人だと思われることを強く望む。
そんな人間なのだそうだ。
ううむ、自分はどうであるか。
まず、欠点だらけだと素直に認めているし、意志薄弱である。世間体?「なんじゃ、それ」って感じであるからして、邪悪度は少しは低い?
300ページを超える分厚い本ですが、いや~、怖くて面白い本でした。
親と子どもの関係においては、親が「子どもへの愛情」という言葉にすり替えて、自分の世間体などを盾に、子どもに理不尽な要求や抑圧的な態度を取っていることに気づかない例も多く、考えさせられることが多かった。
「個人から集団まで、人間の悪を初めて科学的に究明した画期的な書」なのだそうですよ。草思社刊、2200円+税です。