青森県六戸町で150種類以上のハーブを栽培している大西正雄さんから、思いがけない贈り物が届いた。取れたてのフレッシュハーブ。
大西さんは以前、取材で伺ったことがある大西ハーブ農園の主で、日本各地の有名な料理人だけでなく、海外から訪れたフレンチ、イタリアンのシェフたちが、大西さんがつくっているハーブの種類の豊富さと味の濃さを絶賛していると聞いた。「ミシュラン東京」に掲載されている3つ星レストランをはじめ、全国100軒近くのレストランにフレッシュハーブを出荷している。
ハーブといえば地中海の温暖な気候をイメージする。イヤというほど聞かれてきただろうけど、私も「なぜ、青森でハーブ栽培?」という質問を投げかけた。
すると大西さんは「青森は本州では確かに北の果てだけど、地球規模で見たら北でも南でもないでしょ」とスケールのデッカイことを言う。
続けて、
「地中海沿岸地方は北緯40度に位置しているのだけど、ここもほぼ同じ北緯40度。青森というと『津軽海峡冬景色』のイメージが強いから、どこもかしこも豪雪で厳寒の地だと思っているでしょ? でも太平洋側のこの地域は雪も少ないし、冬も晴れる日が多く、日照時間が長いわけ。ハーブにとって、この光が大事なのですよ」
と言うのだった。
大西さんは旅行が趣味で、高校時代から日本各地を回り、大学に入ってからは海外へも足を伸ばした。そんな旅行先でハーブに一目惚れしたのだそうだ。当時、実家は葉タバコ農家で、葉タバコの栽培には大量の農薬が必要だった。農産物を量産するために、農薬を大量に使っていいのか。大西さんにはそれが引っかかっていたそうだ。
海外で初めてハーブが、人々の健康を維持するために身近にあるものとして定着していることを知り、魅せられた大西さんは六戸町でハーブ栽培を始めたのだ。
「次男だからできたんだよね。長男は米や野菜を作る農家を継いでますよ。私がここでハーブを作ると言ったとき、親からも親戚からも頭がおかしくなったのではないかと言われましたよ」
サラリーマンをしながら、ハーブの栽培を始めたのが26年前。初めから完全無農薬・無化施肥栽培。苗床は、ブナの森が育てた黒い腐植土、八甲田山が噴火したときの地球のミネラルが豊富な火山灰土、それに川砂の3種類の土をブレンドして作っている。
木枠の花壇を積み重ねていく独特の栽培法はとても合理的。
「自分のオリジナルだと思っていたのだけど、この方法はすでに江戸時代に行われていたの。文献にそれを見つけてがっかりしたよ」と笑いながら話してくれた。
肥料は馬糞を使った自家堆肥。軍馬や競走馬の産地として発展してきた上北地方では今でも乗馬ビジネスが盛んで、馬糞の処理が問題となる。「馬は牛や鶏と違い、自然素材の飼料しか口にしない」と大西さん。「その馬の糞を使えば化学物質が含まれていない堆肥が作れるでしょ」
大西さんは「私が作ったハーブが美味しいかどうかということより、人の体にいいかどうかが重要なんです。食べたら体が喜ぶというハーブを作っていきたいんですよ」ときっぱり言っていた。ハーブがもつ本来の力とは、そういうものだから、ハーブの薬効を知って、もっと生活に取り入れて欲しいそうだ。
フレッシュハーブを送ってもらったお礼の電話をすると、今ハーブ収穫の最盛期で、毎日てんてこまいだそうだ。150種類以上あって、しかもハーブの葉は1枚1枚、丁寧に手摘みしているから、パートさんもフル稼働だろう。
送ってもらったセットはサラダ用のハーブの下に、きちんとビニールにハーブティー用、料理用が分けられて入っていた。取り寄せると確か4,800円だったと思う。おもてなしのお料理用にいいのではないかしら。さて、これからフレッシュハーブティーをいただいてみようかな。
新しくホームページを開設したらしく、送られて来たパンフにアドレスが乗っていたのだけど、つながらない。どうしてかしら。
一応、書くと、http://www.onishi-herb.jp/
連絡先は、TEL:0176-55-3459 FAX:0176-55-3059