マンション・メンテblog

集合住宅管理新聞「アメニティ」のブログです。工事業者募集やセミナーの案内などを随時掲載していきます。

マンション建物Q&A「第2回目以降の大規模修繕の修繕項目について」

2021-02-18 14:50:36 | マンションQ&A

第2回目の大規模修繕工事の実施にあたり、修繕項目を検討しています。汚れが目立つ外壁や錆が出ている鉄部の塗装の他に屋根防水・バルコニーや共用廊下の床防水・シーリングの取り替え等は思いつきますが、その他どのような修繕を行うべきでしょうか?玄関扉やアルミサッシの取替はいつ頃行う必要があるのでしょうか?


建物(給排水・電気設備を除く)の大規模修繕工事では外壁などに発生するひび割れなどコンクリート劣化の補修をメインとし、外壁やバルコニー天井等コンクリート面の塗装や鉄製品の塗装の塗り替え、タイル仕上げがある場合はタイルの浮きや割れの補修、各所の床防水改修やシーリングの取り替えなどが10~15年おきの大規模修繕毎に繰り返し実施される「基本修繕工事」です。
 第1回目の大規模修繕ではこの基本修繕工事だけで済む場合がありますが、2回目、3回目と経年数が増えると共に、修繕項目も増えてきます。
 経年数が20年を過ぎると、色々な金物類(雨樋、金属手摺、換気口、物干金物、郵便受、室名札等)の劣化が進み、部分或いは全数の取り替えが必要になってきます。又、屋根防水の改修が必要になってきます(屋根防水は適切に施工がされていれば工法により20年~30年の耐用が期待でき、大規模修繕毎に全面改修を実施する必要はありません)。又、アルミサッシや玄関扉のパーツが劣化し、開閉不良やすき間風が入ってきたりし、パーツの取替が必要な時期でもあります。これらが第2回目の大規模修繕工事の際、前記「基本修繕工事」に加えて検討しなければならない修繕項目です。これらの劣化状況を事前の調査で確認し、必要に応じ大規模修繕工事に盛り込むことが必要です。特に足場を要する修繕は漏れの無いようにします。
 玄関扉やアルミサッシの取替については、性能が低下する築30年~40年位(第3回目大規模修繕頃)に実施されるケースが多いようです。尚、対震性(大きな地震でドア枠が変形してもドアが開けられる機構)のない玄関ドアは、耐用年数に満たなくても、早めに対震ドアに取り替える事も必要です。又、築40年以降(第3回目あるいは第4回目の大規模修繕)にはバルコニー等の手摺の取り替えなども修繕項目になってきます。サッシの取替や手摺の取り替えは高額な費用がかかることから、長期修繕計画で費用を見込んで修繕積立金額を設定しておく必要があります。回答者:NPO日住協協力技術者 一級建築士 
山田 俊二
(集合住宅管理新聞「アメニティ」2021年2月号掲載)

集合住宅管理新聞「アメニティ」は、1982年創刊、39年間の歴史を持つマンション管理とメンテナンスの専門情報紙です。1都3県などの分譲マンションを中心に10万部発行。見本紙ご希望の方は、ホームページからお申し込み出来ます。
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Q&A・認知症の組合員に組合費滞納の裁判できるのか?

2021-01-21 13:37:08 | マンションQ&A
 

 組合員のAさんが管理費等を滞納していますが、専有部分には銀行の抵当権が設定されており、通常の競売では無剰余で取り消される可能性があるので、区分所有法59条の競売請求の裁判を起こすことを、総会で決議しようと考えています。Aさんは高齢で認知症を発症して、現在は介護施設に入所しています。このままAさんを相手に裁判をすることに問題ないでしょうか?


 本件と類似の事案が裁判で争われたことがあります(札幌地裁平成31年1月22日判決)。この裁判では管理組合が長期間に渡り管理費等を滞納している組合員(90歳で特別養護老人ホームに入居しており、会話もできない状態)に対して、弁明の機会を付与する通知書を送付して、その後集会の特別決議で59条の競売請求を提起しました。訴訟の中で特別代理人の選任を求めて、特別代理人が選任されたことから、特別代理人に対して弁明の機会を与えて、訴訟を継続するか否かを決議する総会迄に弁明書を提出するように求めました。特別代理人は意思能力のない組合員に対する弁明の機会の付与は無効であることと特別代理人に対する弁明の機会の付与も無効であると主張しました。これに対して裁判所は「弁明の機会は、単に形式的に当該区分所有者の住所地に弁明の機会を付与する旨の通知が届けられただけでは足りず、当該区分所有者において、その内容を了解することができる能力を有していることが必要と解される」として、「上記のように会話もできない状況からは通知の内容を理解するだけの能力があったとは認められず、本件訴えの提起は弁明の機会を付与しないままされた瑕疵ある決議に基づくものと言わざる得ない」と判示しています。もっとも、訴え提起後に特別代理人が選任されて、特別代理人に対して、弁明の機会を付与されたことから、前述した瑕疵は治癒されたと判断して、管理組合の請求を認めています。
 意思能力の無い者に対する訴訟行為は無効とされています。認知症も軽度であれば意思能力が認められる場合もありますが、会話による意思疎通が困難な程度に認知症が進んでいれば意思能力は無いと考えられます。
 認知症が進行している場合は成年後見人が選任されることが通常です。もっとも、成年後見人の選任を申し立てることができるのは、配偶者や親族、市町村長などに限られ、管理組合には申立ての権限がありません。
 以上を前提に本問での対応を考えると、Aさんが意思能力が無いような状態である場合は、配偶者やお子さんらに成年後見人の選任を申し立てをお願いします。これに応じてもらえない場合は市町村に相談して市町村長に申し立ててもらうことをお願いします(成年後見人が選任されれば、その者に対して、弁明の機会の付与することになります)。
 成年後見人が選任されない場合は上記で紹介した札幌地裁の裁判例のように弁明の通知を本人宛に送った上で総会決議を行い、訴訟を提起した上で、特別代理人を選任してもらい、特別代理人に対して、再度弁明の機会を付与することになると思います。

回答者:NPO日住協法律相談会 専門相談員
弁護士・石川 貴康
(集合住宅管理新聞「アメニティ」2020年12月号掲載)

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Q&A マンション管理組合理事の善管注意義務

2020-11-13 15:48:52 | マンションQ&A
 
 マンションの管理組合の理事は、管理組合に対して善管注意義務を負っていると聞きました。その内容を教えてください。


 おっしゃるとおり、理事は管理組合に対して善管注意義務を負っています。これは、理事と管理組合との法律関係が委任契約と解されているためです。その委任契約に基づく義務として(民法644条)、理事は、組合員のために、誠実に理事の仕事をしなければなりません。理事が、善管注意義務に違反して管理組合に損害を与えた場合は、その損害をしなければなりません。
 誠実に仕事をするとは、まず、サボらずに仕事をするということが当然あります。しかし、どの程度サボったら善管注意義務違反となり、管理組合に生じた損害を賠償しなければならないかは、ケースバイケースで、その管理組合の実情等にもよります。ですので、例えば滞納管理費の督促を放置していて、消滅時効期間(5年)が経過してしまった場合でも、必ずしも善管注意義務違反として賠償責任が発生するとは限りません。もっとも、善管注意義務違反の賠償責任を問われる可能性もありますので、長期間の滞納放置は禁物です。
 次に、理事は、理事の仕事をするにあたって、私的な利益を求めてはいけません。これに違反して管理組合に損害を与えた場合は、その損害をしなければなりません。この点は、善管注意義務の内容として、昨今特に注目されている点です。標準管理規約においても、平成28年の改正で、理事が得する反面管理組合が損をするおそれのある取引(利益相反取引)について、理事会での重要事実の開示と承認を必要とする規定が新設されるなどしています(標準管理規約〝単棟型〟37条の2など)。
 理事が、管理組合の犠牲の下に、自らの私的な利益を追求してはいけないという点については、東京高等裁判所令和元年11月20日判決(金融・商事判例1589号24頁)が参考となります。この判例の事案は、理事長が、自らの住戸の転売価格維持のために、小規模な雨漏り修繕工事の必要性しかないのに、マンション全体の大規模修繕工事の必要性があるとの説明して、総会決議を経て管理組合に工事代金を支出させた、という事案です。この判決は、大規模修繕工事を行う必要性や、理事長の私的な利益を図る目的などを検討し、理事長の善管注意義務違反に基づく賠償責任を認めました。総会決議を経た上での工事代金支出した点についても判決は、「当該職務の遂行が総会又は理事会の決議に基づくものであったことは、賠償責任を免れる理由にはならない。私的利益を目的とすることを隠し、総組合員の利益を目的とすることを装って総会又は理事会の決議を得たからといって、善管注意義務の違反があることに変わりはないからである。賠償責任を免れるためには、委任者(管理組合)から責任を免除する旨の意思表示を受けることが必要である。」と、明確に判示しています。
 以上、善管注意義務の内容は、大きく分けて①サボらない(職務怠慢をしない)、②私的な利益を求めない、の2つに大別できると思います。なお、理事が善管注意義務に反せずに仕事をした結果、残念ながら管理組合に損害が生じたとしても、理事が賠償責任を負うことはありません。

回答者:NPO日住協法律相談会 専門相談員
弁護士・内藤 太郎
(集合住宅管理新聞「アメニティ」2020年11月号掲載)

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建物Q&A 特定建築物の定期調査報告のタイル全面打診の周期

2020-10-09 16:59:05 | マンションQ&A
 
 平成20年の建築基準法改正で特定建築物定期調査が厳格化されました。10年を超えている場合3年以内に外壁改修や全面打診調査を行っていないのであれば、外壁改修工事を行うか、指定部位全面打診調査が必要になりました。すなわち13年以内に大規模修繕工事が必要ということでしょうか?


 建築基準法12条による「特定建築物の定期調査報告」の調査項目・方法は特定行政庁(建築主事を置く地方公共団体)に定めがある場合はその定めによる(国土交通省告示282号)とされ、地方公共団体により基準が異なります。
 神奈川県ではマンション(共同住宅)は定期調査報告対象外とされていますが、東京都は調査対象建物となっています。  その東京都の基準では5階建以上且つ共同住宅の用途に供する床面積の合計が1000㎡を超えるものが対象で、3年毎の報告を義務付けています。  3年毎も、定期調査報告の報告年度が指定され、共同住宅は2021(令和3)年から3年毎(2024年、2027年、2030年、2033年…)が報告年度です。
定期調査報告の際、「竣工」「外壁改修」「全面打診」等の完了日が属する年度の翌年度から起算して10年目の年度を超える定期調査時に、外壁タイルの全面打診が必要としています。ただし10年目の年度から3年以内に外壁改修等の実施予定がある場合はそれまで先送り可能としています。  すなわち、例えば2008年に大規模修繕を行いタイルの打診及び補修を行ったマンションは、完了日の翌年(2009年)から10年目(=2019年)を超える年の報告年度(=2021年)までに全面打診が必要となり、その3年以内(10年目から3年=2022年)に次の大規模修繕等を予定している場合はその際に全面打検し報告すればよいとされています。このケースですと10年目が2019年ですが2022年まで先延ばしできることになり、最長13年目毎に大規模修繕工事等タイル打診・補修を行わなければならない事になります。

回答者:NPO日住協協力技術者 一級建築士 
山田 俊二
(集合住宅管理新聞「アメニティ」2020年4月号掲載)

集合住宅管理新聞「アメニティ」は、1982年創刊、39年間の歴史を持つマンション管理とメンテナンスの専門情報紙です。1都3県などの分譲マンションを中心に10万部発行。見本紙ご希望の方は、ホームページからお申し込み出来ます。
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機械式駐車場を撤去し、防災倉庫にするには…

2020-09-25 16:55:50 | マンションQ&A
機械式駐車場を撤去し、防災倉庫にしたい。また備蓄品は各自で用意すべきとの声も。どのように進めたら良いか?



 私たちの団地では高齢化が進み、駐車場を利用する人が激減しています。平面駐車場は残して、メンテナンス費用のかかる機械式駐車場を撤去し、倉庫を建てる。そして、倉庫には災害時のための備蓄品(非常食、飲料水、簡易トイレ等)を購入して保管するという案が理事会で出ています。どのような手続で進めれば良いでしょうか。

 また、一部の理事からはそのような備蓄品は居住者が各自で用意すべきもので管理費を使うことは問題はないか、組合員ではなく管理費の支払い義務を負わない賃借人に管理費で購入した備蓄品をただで提供することに問題はないのかという意見も出ていますが、どのように考えたら良いでしょうか?



 機械式駐車場の撤去が、共用部分の「変更」なのか「処分」なのかかが問題となります。処分行為となれば区分所有者全員の同意が必要となりますが、機械式駐車場を撤去して、倉庫とすることは共用部分変更に該当すると考えられます。但し、軽微な変更ではないので、区分所有者及び議決権の4分の3以上の賛成が必要な特別決議が必要となります。

 区分所有法17条2項は共用部分の変更が専有部分の使用に特別の影響を及ぼすときはその専有部分の所有者の承諾が必要と規定しています。この特別の影響とは当該変更行為の必要性、有用性と当該区分所有者の受ける不利益とを比較考量して、受忍すべき範囲を超える程度の不利益を受ける場合とされています。過去の裁判例でも「増築工事により専有部分の日照・採光・眺望に影響があるとしても、その影響が若干であり、居住環境を著しく悪化されるとは認められない場合には特別の影響を及ぼすものではない」と判断されています(大阪高裁平成4年1月28日判決)。

 機械式駐車場を撤去して、倉庫を建てることが専有部分の居住環境を著しく悪化させることは通常は考えられないし、機械式駐車場が使えなくても平面駐車場は使えることからの特別の影響には該当しないと考えられます。したがって、本件では総会の特別決議が得られれば機械式駐車場を撤去して、倉庫を建てることはできます。

 それでは、災害時の備蓄品を管理費で購入して、管理組合が保管することはできるのでしょうか。管理組合の主たる業務が共用部分の維持管理にあることは当然です。しかし、管理組合の業務はそれだけにとどまりません。避難訓練を行うことや消火器を購入することが管理組合の業務に含めれることには異論がないと思います。
 
 防災に強いマンションを作ることは広い意味で共用部分の維持管理に資することなので、災害時の備蓄品を管理組合で購入して、保管することは許されます。手続としては備蓄品の購入代金を予算案の中に入れて、予算案を総会の決議(普通決議)で承認してもらうことになるでしょう。

 専有部分を賃貸することが許される以上は賃借人の存在は当然の前提であり、賃借人は管理費の支払い義務を負う者ではありませんが、規約や細則を遵守する義務を負っており、共用部分を維持管理する担い手であることは組合員となんら変わりません。居住している人を災害から救うことは広い意味での共用部分の維持管理に資するので、備蓄品の提供を賃借人に行うことは問題ありません。

回答者:NPO日住協法律相談会 専門相談員
弁護士・石川 貴康
(集合住宅管理新聞「アメニティ」掲載)

 集合住宅管理新聞「アメニティ」は、1982年創刊、39年間の歴史を持つマンション管理とメンテナンスの専門情報紙です。1都3県などの分譲マンションを中心に10万部発行。見本紙ご希望の方は、ホームページからお申し込み出来ます。
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