マンション・メンテblog

集合住宅管理新聞「アメニティ」のブログです。工事業者募集やセミナーの案内などを随時掲載していきます。

大規模修繕工事、建物の数量に違いが発生するのはなぜか?

2017-04-13 16:25:49 | マンションQ&A

 大規模修繕工事や長期修繕計画の工事費算出に、分譲当初より管理会社から提出された新築時の数量表と言われる数量を採用してきました。今回、3回目の大規模修繕工事の設計監理を設計事務所に依頼するにあたり、数量は既存の数量表があるので数量算出は不要として設計料の見積依頼し、その設計事務所に業務を依頼しました。ところが設計事務所よりその数量表をチェックしたが全体的に数量が多いと言われたため、数量算出も追加で依頼したところ、今まで使用していた数量表の外壁や足場の数量が3割近く多めになっている事が判りました。
 過去の修繕工事はこの実際より多い数量で発注してきた事になります。この様に建物の数量がどうして違いが発生するのでしょうか?


 大規模修繕工事等で施工会社に数量算出を含めて見積を依頼すると、施工会社毎に数量が異なっています。これは数量算出の精度の問題です。外壁の数量を算出する際、①窓やドアなどの開口部を控除せず算出したり、②物差しで図面の寸法を測り算出したり(新築設計時に変更があり寸法のみ修正し図はそのままにしていると、図と記入寸法とが異なる場合がある)、③記入寸法で算出したり(記入寸法は外壁中心寸法ですので壁の厚みを加算しなければ実際の外壁寸法になりません)すると、①の算出方法では数量が多くなる②は寸法のみを大きく変更してあると数量が少なくなり、小さく変更してあると数量が多くなる③では数量が少なくなることになります。又、これらが複合して数量に違いが発生します。
 前回の大規模修繕時の見積書の数量を流用したりすると、この様な間違った数量で、工事を発注する危険性があります。設計事務所に設計を依頼する際は数量調書作成も合わせて依頼する事が望まれます。
  数量調書とは各部位の面積や長さ・個数などの数量を、算出根拠の計算式を書いた計算書の付いた数量表です。計算書が付いているとその数量の根拠が明確になり、将来にも安心して流用できます。又、同じ部位で一部分だけ仕様を変更する場合でも変更部分の数量を算出しやすくなります。数量調書の無い数量は鵜呑みしない事が大切です。

回答者:NPO日住協協力技術者 
一級建築士 山田 俊二
(集合住宅管理新聞「アメニティ」2017年4月号掲載)

※集合住宅管理新聞「アメニティ」は、1982年創刊以来、首都圏の分譲マンションに約10万部配布しています。約35年間にわたり分譲マンションの維持管理や居住者の暮らしの情報などをお届けしています

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FAX03-3667-1808

大規模修繕工事施工会社選定ヒアリングのポイントは?

2017-03-17 16:04:53 | マンションQ&A
Q 
 大規模修繕工事で複数社から工事見積書を提出してもらい、その中から3社ほど選定し、委員会及び担当理事でヒアリングをすることになりました。
 見積金額のみで施工会社を決めては組合員への選定理由の説明にならないので、ヒアリング内容も加味したいと考えています。ヒアリングでの選定ポイントはどのようなところにあるのでしょうか?


 施工会社選定のためのヒアリングには、以下の準備が必要です。
(1)管理組合側の出席者を決める(理事長・大規模修繕担当理事・修繕委員・設計コンサルタント)
(2)施工会社からはヒアリングに見積担当者・現場代理人予定者・営業担当者・最終金額決定権者の出席を依頼する。
(3)ヒアリング時に「改修工事の実績・仮設・品質・安全・防犯・アフターサービス計画」を盛り込んだプレゼン資料を用意してもらいプレゼンしてもらう。
(4)1社60~75分位のヒアリング時間を見込み、出席者紹介・会社のPR・プレゼンテーション・プレゼンへの質疑回答・現場代理人予定者への質疑回答・最終金額の交渉までの時間割を決める。また、前後の施工会社の入替に15~20分の入替・小休憩時間を確保する。
 プレゼン内容は各社似かよった内容だが、「設計仕様書の記載内容が反映されているか」「監督員の仮設・品質・安全・防犯管理の役割分担や管理方法が明確か」「品質検査は現場監督員以外に会社の品質管理課の担当者がどの程度行うか」「居住者の生活を配慮した仮設計画か」などの確認が必要です。
 プレゼン内容は机上で知恵を出し合い作成するのでそつが無く差異は少ないのですが、最も重要なのは現場代理人予定者の資質です。
 現場代理人の工事実績(分譲マンションの元請工事での現場代理人の経験数・年数)、コミュニケーション力(居住者と一番接触が多く工事推進役ですので、居住者とのコミュニケーションはもとより職人への指示が明確に出来る事が必要)、建築及び修繕の知識(修繕の技術は新築では馴染みの少ない技術が多く新築現場しか経験が無いと職人へお任せになってしまう)、人柄(饒舌でてきぱきしていても、居住者のための対応や良い工事をしようする姿勢を決定づけるのは人柄です)を確認する事が大切です。
 これらを確認するには設計コンサルタントの助力は欠かせませんが、建築や修繕に門外漢の理事・委員でも多くの人生経験から人を見る目は育っていますので、それを生かすことも重要です。

回答者:NPO日住協協力技術者 
一級建築士 山田 俊二
(集合住宅管理新聞「アメニティ」2016年12月号掲載)

※集合住宅管理新聞「アメニティ」は、1982年創刊以来、首都圏の分譲マンションに約10万部配布しています。約35年間にわたり分譲マンションの維持管理や居住者の暮らしの情報などをお届けしています

集合住宅管理新聞「アメニティ」
http://www.mansion.co.jp/
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TEL03-3666-1973
FAX03-3667-1808


マンションエントランスの自販機はAさんが勝手に置いたものだった

2017-03-15 12:08:25 | マンションQ&A

 私達のマンションのエントランスに自動販売機が置かれています。ところが、最近この自動販売機は組合員のAさんが勝手に自販機の会社と契約して置いたものだと判明しました。それを知った組合員のBさんが個人でAさんを訴えると言っています。自動販売機が置かれていたのは共用部分ですから、管理組合が対応すべきであると思いますが、どうしたら良いでしょうか?


 自販機が置かれているエントランスは共用部分です。共用部分は区分所有者全員の共有に属するものですから、Aさんが無断でこれを使うことはできません。Aさんが自販機の会社から受け取っていたお金(賃料)は民法上の不当利得に該当します。例えば、本件マンションが30戸であり、共用部分の持分割合が平等だとすればBさんは30分の1の持分があるので、自分が持っている持分割合に応じて、不当利得返還請求権を行使できるのが原則です。
 しかし、各区分所有者が持分割合に応じて個別に行使することになるとその処理が煩雑になります。そこで、管理組合が主体となって不当利得返還請求権を行使することが妥当であると考えます。
 まず、規約に不当利得返還請求について管理組合が請求を行うことが定められている場合は、不当利息返還請求権の行使は管理組合という団体のみが行使して、個々の組合員は行使できないことになります。
 そのような規約が無い場合でも、集会(総会)でAさんに対する不当利得返還請求権は管理組合として行使することを決議することが考えられます。
 もっとも、単に管理組合としてAさんに対して不当利得返還請求ができる旨を決議するだけではBさんを含めた他の区分所有者が管理組合とは別に返還請求をすることができることになりかねません。
 そこで、かかる決議を行う場合は、不当利得返還請求権は管理組合のみが行う旨の決議をしておくべきです。
 そのような決議を行えば、Bさんが管理組合とは別に不当利得返還請求をすることはできなくなります。
 なお、本件と同様の点が問題(区分所有者の1人が携帯電話会社との間で共用部分である塔屋や外壁等を賃貸して賃料を受領していた)となった事案に関する最高裁判所の判決(平成27年9月18日・判例タイムズ1418号・92頁)がありますが、そこでは「区分所有者の団体は、区分所有者の団体のみが不当利得返還請求権を行使することができる旨を集会で決議し、又は規約で定めることができるものと解される。そして、上記の集会の決議又は規約の定めがある場合には、各区分所有者は、上記請求権(不当利得返還請求権)を行使することができない」と判断しています。

回答者:法律相談会専門相談員 
弁護士・石川 貴康

(集合住宅管理新聞「アメニティ」2017年1月号掲載)


不公正・不誠実な設計コンサルタント

2014-12-09 11:33:39 | マンションQ&A
マンションの建物Q&A

Q
 当方マンションの1回目の大規模修繕工事にあたり、設計コンサルタントに依頼し施工業者選定までに至りました。
 この間、見積参加業者を公募し見積依頼業者を選定まで、コンサルタント主導でバタバタと決まっていきました。修繕委員会も初めての経験でもあり、一応募集条件内である事から同意していましたが、その後各社に見積を依頼し見積が出て来た際、見積書は修繕委員全員立ち会いの元で開封する事としていたのですが、提出された見積書を管理会社がコンサルタントに渡し、コンサルタントが勝手に開封し見積一覧表を作成し提出してきて、一番安いのはA社ですのでA社にしましょうと言ってきました。
 この時点でコンサルタントへの不信感を抱き、このまま進めたくありません。今後どのような対応をしていけば良いでしょうか?


 不審の元は、提出された見積書が修繕委員の確認前にコンサルタントに開封されたことにあるのだと思います。コンサルタントが事前に開封し、仲間内の施工会社の見積が高い場合、見積額を下げた見積書をこっそりあたかも最初の見積の様に再提出させ有利に運ぼうとしたのではないかという疑いがあるからだと思います。
 コンサルタントが管理組合と見積結果を検討するために、見積結果一覧表を作成しますが、その際は管理組合担当者立ち会いの元で見積書を開封し各社の見積額の控えを管理組合に残した後持ち帰り一覧表を作成するか、見積業者に同じ見積書を2部作成して見もらい、管理組合とコンサルタントに同時に提出してもらい(郵便や宅配便など同日発送である事が分かる事が好ましい)、コンサルタントが作成した一覧表と管理組合に届いた見積書とに違いが無いかを確認するのが通常です。
 設計コンサルタントは、多くは建築士事務所が行っています。建築士事務所は一般的には、建築士が経営者(開設者)で(※注ー非建築士でも建築士を雇い開設者になれる)発注者のため建築設計技術を発揮し、発注者の希望や諸条件を取り纏め、より良い工事をより適切な価格で実施される事を主眼として、公正かつ誠実(建築士法に定められた建築士の職責です)に業務が行われます。 しかし建築士事務所の中には、単なる商売と考え、多くの仕事を受注し売上を上げる事に主眼を置くところが一部に見られます。建築士の職責を忘れたか職責すら知らない経営者が経営している設計事務所です。設計料を安くして受注し、受注後に仲間内の施工会社に工事が発注される様に導き、その施工会社からリベートをとり、コンサルティング料金の帳尻を合わすやり方をしています。この様なやり方で発注された工事に良質な工事は期待できません。
  ご相談の件も、この様な職責を無視した不法コンサルタントの様相が見られます。まずは、修繕委員会立ち会いの元で開封されなかった見積書に信憑性がない事から、この見積依頼は不調とし、別な見積業者を加え再見積依頼しては如何でしょうか。出来れば、現在のコンサルタントとは不公正・不誠実を理由に業務契約を解約し、新たなコンサルタントを選定する事をおすすめします。
回答者
NPO日住協協力技術者
一級建築士
山田 俊二

インターネット使用料と管理費

2014-12-06 09:00:00 | マンションQ&A

当マンションは、インターネット専用回線やネットワークなどのインターネット設備を備え、各戸は個別の契約なしにインターネットを利用できます。そこで、規約により、インターネット利用費に相当する額として、1戸あたり一律約3000円を管理費等に含め、区分所有者の負担としています。ところが、区分所有者のAさんは、自分はインターネットを利用していないから、インターネット利用費に相当する額については支払を拒否すると主張しています。管理組合はAさんに請求できないのでしょうか。


建物の管理に関する区分所有者相互間の事項は、規約で定めることができますから(区分所有法30条1項)、管理業務によって発生する管理費等の負担は、規約によって定められます。そして、その規約は、区分所有者間の利害の衡平が図られるように定めなければなりません(区分所有法30条3項)。
 参考となる判例として、広島地裁平成24年11月14日判決(判例時報2178号46頁)があります。
 判例は、インターネット設備そのものにかかる費用とインターネット接続回線契約等に基づき発生する費用とを分けて検討しています。まず前者については、「インターネットサービスに係る物理的なLAN配線機器等のインターネット設備そのものは、本件マンションの区分所有者の共用部分であるということができるから、その保守、管理に要する費用は、本件マンションの資産価値の維持ないし保全に資するものであるということができ、したがって、その費用は各区分所有者が一律に負担すべきものである。」と判断しました。
 次に後者、すなわちインターネット接続回線契約等に基づき発生する費用については、インターネットを実際に利用していない者にとっては特に不満が大きいところと思われます。この点について判例は、「(インターネット)サービスが本件マンションの全戸に一律に提供されているということは、本件マンションの資産価値を増す方向で反映されるから、これらに要する費用についても、本件マンションの資産価値の維持ないし増大に資するものといえ、その観点からは、各区分所有者が、本件インターネットサービスの利用の有無にかかわらず、その費用支出による利益を受けているといえる」とした上で、インターネットサービスの利用の有無を考慮して個別に利用料金を定める場合に発生するコストの問題を回避できることや、一律徴収される額にはインターネット設備の保守、管理に要する費用も含まれる以上、不相当に高額とはいえない、などの理由から、「インターネットサービスの利用の有無を考慮することなく一律にインターネット利用料金の支払を負担すべき旨規定している本件管理規約・・・は、(区分所有法30条3項)の趣旨に照らしてみても、区分所有者間の利害の衡平が図られていない故に無効であるとまではいえない」と判断しました。
 したがって、インターネットを利用していないAさんに対してもインターネット利用費を請求することは可能ですが、その一律徴収額は、不相当に高額にならないよう注意が必要です。
回答者=NPO日住協法律相談会専門相談委員
弁護士
内藤 太郎