マンション・メンテblog

集合住宅管理新聞「アメニティ」のブログです。工事業者募集やセミナーの案内などを随時掲載していきます。

全住戸専有配管取替の際、解体復旧する仕上材等が住戸により異なるのをどうするか?

2018-03-08 13:39:24 | マンションQ&A

築40年になる団地です。現在共用部の給排水管の取替と共に専有部の給排水・給湯管も規約を改正し修繕積立金から支出し取替える計画をしています。専有部の給排水管を取替えるには内装を解体したり水場の機器類を移動しなければなりません。
内装や水場の機器は住戸によりリフォームし、様々なものを使っていると思います。この様な場合専有部の工事費はどのように見積もってもらうのでしょうか?


住戸内の給排水管類の取替は、給水管だけなら露出配管での取替方法もありますが、排水管は内装材の解体復旧が必須です。多くは1回の内装材の解体復旧で済むように給排水管・ガス管・給湯管とも同時に取替えを行っています。
この配管取替時に内装解体復旧とともに設備機器の脱着・仮移動が必要になりますが、お問い合わせの通り、各住戸毎に内装材や設備機器は築40年経つとリフォームを行い新築入居時の仕様と多くは様々に変更されていると思います。
この場合には、事前に配管取替範囲の室内内装状況や設備機器の器種に関する全居住者(組合員)にアンケートを行い、内装材料や機器の種類別数量を整理する必要があります。この様にしてもアンケートが全員回答がもらえなかったり回答内容が不明瞭だたりし全体を正確に把握することは出来ません。よって、アンケートの回答での概要比率で仕上や機器を想定し見積を依頼し、実際の工事の際に実態の応じ精算するという方法をとります。よって精算による増額の可能性があるので予備費を予算立てておく必要があります。
また、仕上材にはグレードや色柄に種類が有り、全て対応することは困難ですので、標準グレードを設定し、事前に居住者説明会で説明することも必要です。
脱着設備機器で難関なのはユニットバスです。在来工法による浴室(アスファルト防水の上にタイル張り仕上をした浴室)をユニットバスにリフォームしている住戸も相当数想定されます。ユニットバスは一度解体すると復旧困難なものが多くユニットバスの取替になってしまいます。高額なユニットバス取替を修繕積立金で賄うのは難しく、ユニットバスとしていない居住者からの不満も出て来ます。この場合はユニットバスを解体しないで取替えられる範囲までの配管取替を行い(ユニットバスまわり配管はユニットバスへリフォームした際に取替えている場合が多いので)、その住戸で将来ユニットバスを取り替える際に残った配管の取替を修繕積立金を出資して行ってもらう様にする場合もあります。
この問題は高経年マンションの多くで抱えている問題です。水場をリフォームする際、その部位の給排水管の取替仕様・取替範囲を管理組合で指針を出し、上記の様な問題を軽減したいものです。

回答者
NPO日住協協力技術者 
一級建築士 山田 俊二
(集合住宅管理新聞「アメニティ」2017年12月号掲載)

「建物相談Q&A」3回目の大規模修繕工事では外壁塗装の剥離が必要か?

2017-11-14 14:52:51 | マンションQ&A
ga
 3回目の大規模修繕工事を計画しています。近隣の同経年のマンションで先行して大規模修繕を行った管理組合の方から、3回目の大規模修繕は外壁の塗装を全部剥がさなければならないので工事費がかかると伺いました。
 3回目の大規模修繕工事では外壁塗装を全部剥がさなければならないのでしょうか?又その場合工事費はどの位高くなるのでしょうか?


 外壁の塗装の塗替は、大半は既存の塗装の上に重ね塗りしています。そのため第3回目の大規模修繕時には新築時の塗装の上に2回の大規模修繕時の塗装が塗重ねられ歴代3代の塗装が重ねられています。
 大規模修繕毎に塗重ねられた塗装は、一番下層の新築時の塗装の下地コンクリートへの付着力に頼っています。塗装は塗って固まる間に凝集力が働き既存の塗膜を引っ張る力がかかります。よって、新築時の塗装の付着力が低下すると新築時の塗装ごと根こそぎ塗膜がはがれてしまいます。新築時の塗装ばかりではなく過去の塗替え塗装の付着力の低下も剥がれの要因となります。このため、既存塗膜の付着力が低下している場合は、既存塗膜を剥がさなければなりません。
 3回目の大規模修繕時に既存塗膜を必ず剥がさなければならないのではなく、既存塗膜の付着力が低下している場合に剥がさなければならないのです。その確認方法は建研式接着力試験器で既存塗膜の付着力の確認を行います。一般的な基準値は外壁塗装など厚塗り塗装では0.7N/平方ミリ以上で、上裏など薄塗り塗装は0.5N/平方ミリ以上あるかを確認します。試験は4センチ×4センチの塗装面を試験器で引張り破断時の強度を確認します。4センチ×4センチの塗装面は外壁の面積に比べるとピンポイントに過ぎませんので、試験箇所は1棟当り塗装の部位別・劣化別・方位別にそれぞれ数箇所以上調査する事が必要です。
 付着力が基準値を満たしていても、塗装のふくれや剥がれの状況等も加味し総合的な判断が必要ですので、専門家に劣化調査を行ってもらう事が必要です。
塗膜剥離には工法により差はありますが、2000~2500円/㎡位かかります。又、塗膜を全部剥がすと塗膜に隠れていた下地のコンクリートのひび割れ等が顕著に表れてきますので、下地補修費も嵩んできます。
回答者
NPO日住協協力技術者 
一級建築士 山田 俊二
(集合住宅管理新聞「アメニティ」2017年10月号掲載)

マンション建物Q&A 住戸内リフォームの注意事項

2017-10-17 14:11:00 | マンションQ&A

 子供が独立し老夫婦のみの居住となり、マンションの住戸内を間仕切や設備等をまとめてスケルトンリフォームしようと考えています。マンションの住戸内のリフォームについて、管理規約には建物の構造躯体に穿孔・切欠き禁止・出窓の設置禁止・バルコニーの現状変更の禁止程度しか明記されておりません。どのような事を注意しなければならないのでしょうか?


 マンションの住戸内リフォーム規約については、詳細なリフォーム基準を設けている管理組合や分譲時の原始規約のままの管理組合、又その中間的な管理組合がありマンションにより様々です。お問い合わせのお住まいは原始規約のままに当たるようです。
管理規約に明記されていなくとも、共同生活するにあたり配慮しなければならないことや建物保護や関係法令にも注意が必要です。
主な注意事項としては、

<建築上の注意事項>
・コンクリート躯体(床・壁・天井・柱・梁)に傷を付けない。ビスなどを躯体に付ける際は管理組合の合意を得る。
・内装材を撤去した際、コンクリートに大きなひび割れ等があった場合は管理組合に相談する。
・床の遮音性能を⊿LL45以上にする。
・水場を下階の寝室の上に設けない。
・バルコニーの床に人工芝などを接着張りしない。
・住戸内設置の防火戸(住戸面積100㎡以上の場合に設置されている場合がある)は撤去しない。地方自治体や消防署と協議が必要。
・換気口や点検口は塞がない。
・内装仕上材の不燃基準を守る。基準が不明の場合は準不燃材以上を使用する。

<設備上の注意事項>
・電気(契約アンペア)・ガス(給湯器の号数等)の許容容量を守る。
・エアコン室外機の設置位置は隣戸避難板に重なる位置を避ける。
・ベランダ手摺にBS・CSアンテナの設置の可否について管理組合に確認する。
・給湯器は分譲時からベランダに設置されている場合以外は、ベランダには設けない。
・ベランダ設置型給湯器をエコジョーズにする場合ドレイン排水をベランダに流せるか自治体に確認する。
・共用排水管へ混用した排水接続はしない(台所系・トイレ系・浴室洗面系はそれぞれ元の共用排水管に接続する)。
・排水管の排水勾配を十分確保する。(1/50~1/100勾配)
・大便器は超節水型を使わない(戸建て住宅と違いマンションは横引き共用排水管が長く洗浄水量が少ないと汚物が搬送できない場合がある)。4.8リッター以上が望ましい。
・給水管を全部取り替える場合は量水器への接続部まで取替える。
等があげられます。
管理組合は、専門家と相談し前記内容を含めそのマンションに応じたリフォームガイドラインを整備することが重要です。

回答者:NPO日住協協力技術者 一級建築士 山田 俊二
(集合住宅管理新聞「アメニティ」2017年6月号掲載)


(集合住宅管理新聞「アメニティ」)
集合住宅管理新聞「アメニティ」は年間@3700円(毎月1回5日発行、発行部数10万部)。毎月郵送でお届けします。ご購読希望の方は「東京プラニング・アメニティ編集室」までお気軽にお問い合わせください。また、見本紙をご希望の方は、「氏名・住所・電話番号・見本紙希望」とご記入の上、下記e-mailまでご送信ください。

株式会社東京プラニング・アメニティ編集室
〒103-0025 
東京都中央区日本橋茅場町2-4-10大成ビル5F
TEL:03(3666)1973 / FAX:03(3667)1808
e-mail
info@mansion.co.jp



「マンション法律Q&A」トラブルを起こすBさんを監視したいが、防犯カメラを導入する注意点は?

2017-10-11 11:25:59 | マンションQ&A
 
 私達の団地では集合ポストや駐車している車に対するいたずらが発生しています。被害にあっているのは特定の棟の住民の方です。
 その棟の方から棟の中でBさんが多くの人とトラブルを起こしており、犯人はBさんに違いないから、Bさんの行動を監視するために、防犯カメラを設置して欲しいと言われています。偶々管理組合としても防犯カメラの導入については検討していたところですが、設置に際して注意すべき点はありますか。

 
 プライバシー権や肖像権については最高裁判所は「人は、みだりに自己の容ぼう等を撮影されないということについて法律上保護されるべき人格的な利益を有する」としつつ「ある者の容ぼう等をその承諾なく撮影することが不法行為法上違法となるかどうかは、撮影の場所、撮影の範囲、撮影の態様、撮影の目的、撮影の必要性、撮影の画像の管理方法等諸般の事情を総合考慮して、被撮影者の上記人格的利益の侵害が社会生活上受忍の限度を超えるものといえるかどうかを判断して決する」としています。
 共用部分に設置する防犯カメラであっても、プライバシー侵害として許されない場合があります。
 ところで、区分所有建物の共用部分に設置された防犯カメラがプライバシーを侵害するとしてカメラの撤去と損害賠償請求がなされた事件があります(東京地方裁判所平成27年11月5日判決)。
 この事件の特徴的な点は設置された4台の防犯カメラの内1台についてプライバシーの侵害の程度が社会生活上受忍すべき限度を超えているとして、カメラの撤去と慰謝料10万円の支払いを認めつつ、3台についてはプライバシーの侵害の程度は社会生活上受忍すべき限度を超えていないとして、撤去請求と慰謝料を認めなかった点にあります。
 撤去が認められた防犯カメラは、撮影の場所や範囲が特定の居住者の「外出や帰宅等という日常生活が常に把握されるような場所」であることを理由にプライバシーの侵害は社会生活上受忍すべき限度を超えていると判断しています。
 かかる観点から、例えば、防犯カメラの撮影範囲がBさんの玄関や居室のみを撮影対象とするようなものであればプライバシー侵害となる可能性は高いと思われます。
 また、防犯カメラは、そもそも「防犯目的」で設置されるものです。特定の組合員や居住者を監視する目的で設置することは許されません。
 撮影対象としてBさんの玄関とか居室が写っていなくとも、設置場所や撮影範囲からBさんの行動を監視することが目的であると認定されることになればプライバシーの侵害となり得ますから、設置場所や撮影対象については慎重に検討する必要があります。
 なお、先に紹介した東京地裁の事件では監視カメラの設置について共用部分の変更として特別決議が必要なのか、共用部分の管理行為として普通決議で足りるのかについても争われていますが、管理行為に該当して普通決議で足りるとされています。
回答者
NPO日住協法律相談会 
専門相談員 弁護士・石川 貴康
(集合住宅管理新聞「アメニティ」2017年9月掲載)


マンション建物Q&A 住戸内のコンクリートのひび割れ補修は居住者負担?

2017-10-10 11:46:16 | マンションQ&A

 入居後間もなく、住戸内の天井にひび割れが入り、売り主の3年目アフターサービスで天井のビニルクロスを張り替えてもらいました。その後3.11の地震などで再びひび割れが発生し、以前より長く広くなった感じがします。現在、第1回目の大規模修繕工事が始まり、外壁などのひび割れの補修をしていますので、管理組合に室内のひび割れも直して欲しいと要望を出しましたが、専有部分なので対象外である。補修を希望するのであれば、個人負担で大規模修繕をしている施工会社に申し出てくださいと回答がありました。ひび割れているのは天井のコンクリートです。専有部分ではなく共用部分ではないでしょうか?よって、管理組合負担の工事ではないでしょうか?


 マンションの鉄筋コンクリートの壁や床・柱・梁は共用部分です。その共用部分が専有部側にも面し、天井などコンクリートに直にビニルクロス仕上げをしていると、コンクリートのひび割れに伴いビニルクロスにも亀裂が生じます。尚、亀裂が発生した天井や壁をこぶしで叩いてコンコンと響きのある音がする場合はコンクリートのひび割れではなく下地ボード(専有部)の継ぎ目に隙間やズレが生じたものです。
共用部のひび割れやそれが原因で入った専有部のビニルクロスの亀裂の修繕は、管理組合(修繕積立金)が負担する修繕ではあります。しかし、コンクリートは乾燥収縮・熱膨張などでひび割れはつきものです。ひび割れが発生するたびに管理組合で対応するのは煩雑で大きな負担になります。
私共がいつも提言しているアドバイスは、構造上・耐久上問題のあるコンクリートのひび割れは管理組合負担で行い、そうで無いものは専有者が壁紙張り替えの際自己負担で内装業者にパテ処理で対応してもらうようにしてもらっています。
構造上・耐久上問題のあるコンクリートのひび割れとは、「日本建築学会・著 鉄筋コンクリート造建築物の収縮ひび割れ制御設計・施工指針(案)・同解説」による”一般環境下において劣化抵抗性を確保するための許容ひび割れ幅は屋内では0.5mmとする。”を基準としています。よって0.5㎜を超えるコンクリートのひび割れは管理組合の負担で補修し、またその際のビニルクロスの補修は亀裂の入った面のみを管理組合が負担としています。尚、このひび割れの補修方法はエポキシ樹脂(接着材)をひび割れに注入して補修します。
回答者:NPO日住協協力技術者 一級建築士 山田 俊二
集合住宅管理新聞「アメニティ」2017年8月号より