今月は、3回目の大規模修繕工事を実施したNICハイム西国立の元理事長にお話をうかがいます。
NICハイム西国立はJR南武線西国立駅より徒歩10分にある築後29年の典型的な郊外型マンションである。建物はRC造5階建1棟、総戸数51戸。周辺には保育園・授産所・職業訓練校・病院・教育センター等の公共施設がある、比較的静かな環境に位置している。外壁塗装を中心とした大規模修繕工事は既に2回行っており、今回は徹底した躯体改修・外壁塗装工事を行うとともに、安全面を重視した環境改善工事も実施した。
前回の工事(1991年)は長期修繕計画書によるものではなく、工事費も約4分の3を管理会社のリフォーム・ローンに頼る等多くの問題を残した。
そこで、しっかりした長期修繕計画を持たなければならないとの反省から、屋上防水工事の際にお世話になった(株)スペース・ユニオンに長期修繕計画書の策定を依頼し、1997年5月にそれが完成した。計画書中の資金計画に沿い管理費・特別修繕費を改定した。
また、管理会社との管理委託契約を改め、修繕積立金を管理組合の管理に移し、預金の分散を図り、仮に将来工事資金不足に陥っても、低金利の融資が受けられる住宅金融公庫マンション修繕債券を購入することにした。
組織面でも長期修繕計画を効率的に実行するための専門委員会として、「管理計画委員会」を管理規約の中に設けた。管理員室兼集会室に改修し建物の内部で随時、集会ができるようにした。
また、各階に2箇所掲示板を設置し頻繁に広報活動を行い大規模修繕工事に備えた。
2001年10月今回の工事を実施する方針を固め、管理計画委員会による建物目視調査・写真撮影を始めた。(株)スペース・ユニオンに今回の工事のための予備調査をお願いした。
その報告書に基づき設計・監理方式で今回の工事を行うことに決め、設計・監理を・ススペース・ユニオンに発注することを2002年5月の定期総会に計った。更に、各戸には、建物の不具合についてのアンケート調査の実施と大規模修繕工事計画書の配布をした。
8月、「アメニティ」等の紙面をお借りして見積参加業者の募集を行ったところ、22社の参加希望があった。内14社を書類選考し、見積依頼した。最終的にはその中の5社に絞り11月16日にヒアリングを行い、提出された第二次見積り・アフターサービス等を総合的に判断して、施工業者を建装工業(株)に内定した。
各戸には大規模修繕工事の概要を送付し、12月15日の臨時総会で「NICハイム西国立大規模修繕工事施工業者と見積金額及び工事内容と仕様書」が承認された。その後、居住者説明会を経て2003年2月より工事が開始された。
築後30年を迎えるマンションは、建物の老朽化と共に、そこに住む組合員の老齢化も同時に進行する。資金面から見ても多額な一時金の徴収は難しく、勢い適切な大規模修繕工事も避ける方向に向かいがちだ。私たちは、一時金の徴収をせず、しっかりした工事を行うというスタンスを今後も貫きたい。
そのためにも、次の工事に備えて長期修繕計画の見直しを計るつもりだ。
(元理事長・海老田 進)
設計・監理者コメント
今回の工事では、入居30年代に向けて積極的な環境改善工事を実施している。特にエントランス廻りでは、オートドアとメールコーナーの新設、天井・床の全面改装、さらにオートドアのロックに連動した各戸へのインターホン設備の導入など、意匠的な配慮だけではなく、防犯機能の向上を図った。また、外壁の塗替えでは、前回の工事が不十分であったために付着強度が弱い仕上塗材を、高圧温水洗浄で全面的に除去した。なお、高圧温水洗浄の仕様決定にあたっては、事前に試験施工をおこない、必要以上にコンクリート躯体を傷めないよう配慮した。
((株)スペース・ユニオン 奥沢健一)
<アメニティ新聞249号 2003年6月掲載>