駐車場に長期不法駐車をするAさん
使用細則に違約金の規定を定めたいが…
Q
私達の団地内にある来客用の駐車場に組合員のAさん名義の車が長期間にわたり不法に駐車されています。管理組合が撤去するためには費用がかかるので駐車場使用細則を改訂して、使用細則に違反する駐車に対しては1日あたり5000円の違約金を支払う規定を定めようと考えています。何か問題がありますか。
A
リゾートマンションの事案ですが、本件と同様の紛争が争われた裁判例(東京地方裁判所平成30年3月13日判決)があります。この裁判で被告は①管理規約に違反する行為に対して違約金を課すことは管理規約に規定がない限りできない(使用細則ではできない)②区分所有法や本件管理規約には「規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その者の承諾を得なければならない」と規定しているところ、本件使用細則の改訂は被告の車両のみを対象としており、被告に不利益を課すものであり、被告の承諾が必要であるが、被告は承諾していない③1日5000円という違約金は著しく高額であり、公序良俗に反して無効であると反論しました。
まず、①について、裁判所は「建物又はその敷地若しくは附属施設の管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項のうちには、区分所有法が直接に定め規約の設定を許さないもの及び規約によってのみ定めることができるものがあるが(区分所有法30条1項参照)、本件条項が規定する本件駐車場内の車検切れの放置自動車に対する違約金の設定は、このどちらにも該当しないというべきであり、本件駐車場内の車検切れの放置自動車に対する違約金の設定は、規約の委任を受けた細則又は規約の委任のない細則において、行うことができる」と判断しました。
次に、②については「特別の影響とは、規約の設定、変更、廃止の必要性及び合理性と、これによって受ける一部の区分所有者の不利益を比較して、一部の区分所有者が受忍すべき程度を超える不利益を受けると認められる場合であると解され、この点は、使用細則の設定、変更、廃止においても同じである」「本件使用細則の改訂の必要性は高く、その内容の合理性についても金額については検討の余地があるが、一応の合理性は認められる」としつつ、後述するように違約金は1日2500円が相当であるとして、その金額の範囲内であれば、「本件改訂の必要性及び合理性と、これによって受ける被告の不利益を比較して、被告が受忍すべき程度を超える不利益を受けるとまでは認められない。
したがって、本件改訂は一部の区分所有者に特別の影響を及ぼすものとは認められず、本件改訂について被告の承諾は要しない。」と判断しました。
さらに、③については「本件駐車場を不法に占有することにより生じる損害額に比べて相当高額な違約金額の設定も許容されると解される。一方、本件自動車が本件駐車場に放置されたことにより重大な具体的損害が生じたことを認めるに足りる証拠はなく、また、証拠によれば、本件マンションの屋内駐車場の最も高額な使用料が月額7500円であることが認められ、これらの各事情を斟酌すると、区分所有者による自治の尊重という観点を踏まえても、日額5000円(月額約15万円)という違約金額は高額に過ぎ、相当性を欠くといわざるを得ず、本件条項の違約金額のうち日額2500円を超える部分は民法90条に反して無効である」と判断しました。
以上から、使用細則で違約金を定めることはできますが、違約金の金額については高額すぎる場合は無効と判断される余地がありますので、注意が必要です。
回答者:NPO日住協法律相談会 専門相談員
弁護士・石川 貴康
(集合住宅管理新聞「アメニティ」2021年5月号掲載)
集合住宅管理新聞「アメニティ」は、1982年創刊、39年間の歴史を持つマンション管理とメンテナンスの専門情報紙です。1都3県などの分譲マンションを中心に10万部発行。見本紙ご希望の方は、ホームページからお申し込み出来ます。
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使用細則に違約金の規定を定めたいが…
Q
私達の団地内にある来客用の駐車場に組合員のAさん名義の車が長期間にわたり不法に駐車されています。管理組合が撤去するためには費用がかかるので駐車場使用細則を改訂して、使用細則に違反する駐車に対しては1日あたり5000円の違約金を支払う規定を定めようと考えています。何か問題がありますか。
A
リゾートマンションの事案ですが、本件と同様の紛争が争われた裁判例(東京地方裁判所平成30年3月13日判決)があります。この裁判で被告は①管理規約に違反する行為に対して違約金を課すことは管理規約に規定がない限りできない(使用細則ではできない)②区分所有法や本件管理規約には「規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その者の承諾を得なければならない」と規定しているところ、本件使用細則の改訂は被告の車両のみを対象としており、被告に不利益を課すものであり、被告の承諾が必要であるが、被告は承諾していない③1日5000円という違約金は著しく高額であり、公序良俗に反して無効であると反論しました。
まず、①について、裁判所は「建物又はその敷地若しくは附属施設の管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項のうちには、区分所有法が直接に定め規約の設定を許さないもの及び規約によってのみ定めることができるものがあるが(区分所有法30条1項参照)、本件条項が規定する本件駐車場内の車検切れの放置自動車に対する違約金の設定は、このどちらにも該当しないというべきであり、本件駐車場内の車検切れの放置自動車に対する違約金の設定は、規約の委任を受けた細則又は規約の委任のない細則において、行うことができる」と判断しました。
次に、②については「特別の影響とは、規約の設定、変更、廃止の必要性及び合理性と、これによって受ける一部の区分所有者の不利益を比較して、一部の区分所有者が受忍すべき程度を超える不利益を受けると認められる場合であると解され、この点は、使用細則の設定、変更、廃止においても同じである」「本件使用細則の改訂の必要性は高く、その内容の合理性についても金額については検討の余地があるが、一応の合理性は認められる」としつつ、後述するように違約金は1日2500円が相当であるとして、その金額の範囲内であれば、「本件改訂の必要性及び合理性と、これによって受ける被告の不利益を比較して、被告が受忍すべき程度を超える不利益を受けるとまでは認められない。
したがって、本件改訂は一部の区分所有者に特別の影響を及ぼすものとは認められず、本件改訂について被告の承諾は要しない。」と判断しました。
さらに、③については「本件駐車場を不法に占有することにより生じる損害額に比べて相当高額な違約金額の設定も許容されると解される。一方、本件自動車が本件駐車場に放置されたことにより重大な具体的損害が生じたことを認めるに足りる証拠はなく、また、証拠によれば、本件マンションの屋内駐車場の最も高額な使用料が月額7500円であることが認められ、これらの各事情を斟酌すると、区分所有者による自治の尊重という観点を踏まえても、日額5000円(月額約15万円)という違約金額は高額に過ぎ、相当性を欠くといわざるを得ず、本件条項の違約金額のうち日額2500円を超える部分は民法90条に反して無効である」と判断しました。
以上から、使用細則で違約金を定めることはできますが、違約金の金額については高額すぎる場合は無効と判断される余地がありますので、注意が必要です。
回答者:NPO日住協法律相談会 専門相談員
弁護士・石川 貴康
(集合住宅管理新聞「アメニティ」2021年5月号掲載)
集合住宅管理新聞「アメニティ」は、1982年創刊、39年間の歴史を持つマンション管理とメンテナンスの専門情報紙です。1都3県などの分譲マンションを中心に10万部発行。見本紙ご希望の方は、ホームページからお申し込み出来ます。
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