ー 「陶芸」 が教えてくれる 15 のしあわせ ー
第一章 「ものを作るのは楽しい」 ということを知る
<初めて陶芸をする>
私が陶芸を始めたのは、何気ない切っ掛けだった。
週末には富士五湖の山中湖へよく遊びに行っていた。その内に家内が
「陶芸をやってみたい」 と言うようになった。3、4年ほど繰り返して言うので、
そろそろご機嫌をとっておいた方が後々の為にもよいかなと思うようになった。
湖畔を車で走っていると 「陽だまり工房」 という立て看板が目に入った。
よし、ここで陶芸体験をさせよう。
陽だまり工房は、山中湖の平野のテニスコート村を過ぎて三国峠の見晴台に
向かう道の手前を左に入った所にあった。凸凹した細い道を100mほど入ると目の前に
木造の3階建ての大きな趣のある古びたログハウスが現れた。いいな~と思った。
陶芸の工房は、このログハウスの左側にある平屋の建屋だった。
室内には横長の作業台が三つほどあり、向かい側に電動ろくろ台が三つあった
右手前の棚板には成形したものが置かれていた。右隅には小さな薪ストーブもあった。
工房のような雰囲気がした。
突き当たりに見えた大きなログハウスは、
この陶芸家が手造りで創ったものだと聞かされた。驚いた!
ログハウスの中も見せてもらった。中に入ると山小屋の雰囲気が漂っていた。
天井には、球形の黄ばんだ和紙の笠で覆われた灯りが吊り下がっていた。
正面の廊下の左に階段と化粧台があった。右側にはボットン便所があった。土間には
スノコに細長な木製のテーブルと椅子が置かれていた。古い丸太の匂いがした。
「ファッションモデルも来て写真を撮ってるよ」 と話してくれた。
ファッション写真が似合いそうな雰囲気である。
陶芸の工房は、小柄な人のよさそうな夫婦がやっていた。
「山中湖は賑わってるが、うちは暇だよ」 とか、
「うちには何もないから泥棒がものを置いてってくれるんだ」 などと
ほがらかに軽妙な口調で面白くおかしく話をする愉快な先生だった。
「家内が陶芸をやってみたいと言ってるんですが・・・」
と話して体験をさせてもらうことにした。私が工房の中を眺めていると先生が
「ご主人はやる気がなさそうだから、その辺に座ってて下さい」
と言ってくれた。陶芸に関心もなかったので入口近くの作業台のそばに腰掛けた。
当時はテニスやゴルフに夢中になってたころである。
手持ち無沙汰にしてたら、手ろくろと粘土を目の前に置いてくれた。
家内が教えてもらっている様子を少し離れた所から見ながら、
同じように湯呑みをつくり始めた。知らず知らずにに引き込まれて行った。
両手で粘土をいじっていた。形をつくるのが面白かった。終わったら爽快な気分になった。
日頃のストレスもいつの間に消え去っている。集中できる。無心になれる。
これはいいなと思った。ものをつくるのは楽しい。
2回目に訪ねた時に、削りをやらせてもらった。この削りがまた面白かった。
彫刻家にでもなったような気分を味わった。楽しかった。すると先生が笑いながら
「仕事を間違えましたね」 と言った。
おだててるのだが気持ちが良かった。素直に受け入れられた。気持ちが高ぶってきた。
ものをつくる愉しさに気付いた。
東京に戻ると直ぐに陶芸教室を探した。
残業が多かったので夜の7時か8時頃にやらせてもらえる教室を探した。
原宿で古いビルの地下でやっている教室を見つけた。
倉庫みたいな感じだったがそこに陶芸家が寝泊りしていた。
「晩くてもいいよ」 とのことだったので即入会した。
美大を出た男の先生だった。
もともとは油絵が専門のようだったが、陶芸家としてやっていた。
ゆがんだ器を作っていた。私もゆがんだものが好きだったので合ってるような気がした。
そして、一週間に一回、平日の夜7時から8時頃に教室に通った。
先生は特別に何も教えてくれなかった。好きなようにやっていた。2,3回目くらいに
「デザイン関係の仕事をしてるんですか」 と聞かれた。
ますます舞い上がってしまった。おだてには乗りやすいタイプだ。
ますます気持ちが高ぶってきた。陶芸にハマっていったのです。
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