とやざき農園日誌

浅間山麓(長野県小諸市)で自然農法による農業を行っています
肥料や農薬を施さず自然の養分循環の中で野菜を育てています

タマネギ後作のキャベツ

2018年11月26日 | 日記
今年は、よく太ったタマネギの後作で、久々にキャベツ(固定種:サクセッション)を作ってみました。

農業を始めて8年になりますが、初年度はいわゆるビギナーズラック(耕作放棄地で始めた場合、雑草によって蓄えられた有機物のおかげで野菜が大きく育つ)で、よく巻いた大玉のキャベツが幾つもできたのですが、2年目は7割がろくに巻かずに終わってしまいました。以来、今の技量でキャベツは難しいと諦め、代用にケールを栽培してきましたが、今年のタマネギの仕上がりを見て、これはひょっとして?と、期待半分にキャベツ栽培を復活させてみました。

とは言え、最短65日で収穫に至る白菜に対し、キャベツ栽培は110日程度の長丁場となります。当地で秋採り(夏野菜が終わる10月中旬以降に収穫)するためには、梅雨の終わり頃に苗を作り始めなければなりません。キャベツはアブラナ科の冬植物なので耐暑性が弱く、暑く乾燥する時期のスタートでは、苗が伸び悩む上に、夏場の虫(主にモンシロチョウの幼虫)の猛威を耐え抜く必要もあります。相当に地力のある場所でなければ、大きくなれないまま日数だけ経過した老化苗になってしまい、苗床から移植した後も満足に育ちません。
(※当農園では、ポットやセルトレイによる育苗はせず、露地の畝を苗床にしています。)

これまで栽培を見送ってきたのはそんな事情ゆえですが、タマネギ栽培後の土がしっとりねっとりしていて如何にも良さそうな雰囲気だったので、意を決して挑戦してみました。結果、8割近くがしっかり巻いてくれました。外葉に夏場の苦難が現れていますが、虫が静まってから出た内葉は綺麗です。


残念ながら今年のキャベツ栽培は、「畝間のねっとり粘土を畝に混ぜ込む」取り組みを始める前のスタートでした。畝間の粘土を十全に活かせていれば、更に良い結果が得られたのではないかと思います。今秋植えたタマネギが順当に育ったら、また来年もキャベツを作ってみたいと思います。
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黒ボク土の改良

2018年11月24日 | 日記
タマネギ作付地横の未開拓の黒ボク土エリアに畝が立ち並びました。
夏場、大型の野草が林立していたため、黒ボク土に水が貯め込まれて、周辺一帯がかなり湿気っぽくなっていました。ここの南側(地下水の流れから見て下流側)で栽培した大豆が樹ボケに陥ったのも、このエリアからしみ出した水が影響したと考えられます。現在、西側でタマネギが育っていますが、タマネギには過湿が大敵なので(冬期凍み上がりやすい)、大豆の二の舞にならぬよう、このエリアの畝立てを最優先に行いました。


一帯がよく乾いたおかげで、先日のマイナス5℃の大霜を無難に乗り越え、霜焼けで葉が黄色くなることもなく、順調な生育ぶりです。


さて、黒ボク土の改良は、過剰な土壌水分を排出するために、畝を立てて干すことから始まりますが、単に干しただけでは野菜が育ちません。というのも、黒ボク土は保水力の乏しいアロフェン型粘土から成るため、畝を立てるとパサパサに乾いて、野菜が水分を確保できないからです。

そこで、次の段階として、畝の土壌を構成する粘土をアロフェン型からスメクタイト型に転換する取り組みを行います。
アロフェン型は、黒ボク土に含まれる粘土の型で、粘土の主成分であるケイ酸とアルミニウムの比率がおよそ0.5対1となっています。それに対し、スメクタイト型は、世界の穀倉地帯に見られるチェルノーゼム(黒土)に含まれる粘土の型で、ケイ酸とアルミニウムの比率が2対1です。粘土の保水力は、ケイ酸が持つ親水性によって生み出されるため、ケイ酸比率が高い型ほど、保水力が高い粘土になります。

粘土型の転換を考えるに当たり、自然界のケイ酸の動きをイメージしてみます。
(※ケイ酸は、冷水にはわずかに溶けるだけですが、熱水またはアルカリ性の水によく溶ける性質を持ちます。)

山岳に降った雨水は、岩石層に浸み込んで地下水となります。地下水は、伏流水として山腹を流れ下りながら、先ず、岩石中のアルカリ成分(たとえばカリウム)を溶かしてアルカリ性になり、続いて、ケイ酸を溶かし出します(ケイ酸カリウム水溶液)。伏流水は、傾斜の緩やかな山麓で地表に湧出しますが、地表は植物根や根圏微生物の活動によって酸性化しているため、地表に近づくにつれて中和され、ケイ酸を溶かす力を失います。これにより、植物根圏の直下にケイ酸が集積し、弱アルカリ性~中性の粘土硬盤層(スメクタイト型)が形成されます。植物根圏内では、植物がアルカリ成分とともにケイ酸を吸収するため、酸性かつ、ケイ酸比率の低いアロフェン型粘土が形成されます。ブタクサなどの大型野草が繁茂する場所に、厚い黒ボク土層が存在するのは、大型野草が地中深く根を伸ばしてケイ酸を大量に吸い上げるためです。

このようなケイ酸の動きを踏まえると、畝の粘土を保水力の高いスメクタイト型に転換するためには、そこに育った大型野草の枯れた茎葉を分解し、放出されたケイ酸を粘土に吸収させればよいことになります。
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黒ボク土において大豆の樹ボケが起きる理由

2018年11月22日 | 日記
大豆の脱穀がほぼ終わりました。栽培したのは、今年も、黄(こうじいらず)、青(青バタ)、黒(玉大黒)の3種です。とりあえず、米袋に莢クズごと放り込んで貯めてあるので、あとは唐箕で風選別し、豆だけ取り出します。


大豆栽培は、一昨年から高めの畝に仕立てることで、安定した収穫が見込めるようになってきました。よく乾き、土に粘りが出てきた(スメクタイト型粘土が多いと考えられる)畝では、やや小ぶりな樹に、しっかり太った実が鈴なりに付きます。根を掘り上げてみると、根粒がびっしり付いており、微生物との共生が順調であったことが窺われます。


逆に、湿り気味で、土に粘り気がない(アロフェン型粘土が多いと考えられる)畝では、樹は大きくなるのに莢の数が少なく、しかも実の太りが悪いという、いわゆる「樹ボケ」状態の株が多々見られました。このような株を掘り上げてみると、根粒がほとんど見当たりません。


樹ボケが多発する畝を観察してみると、ハコベやヒメオドリコソウなどの中性に近いphを好む野草は少なく、酸性を好むスイバ(またはギシギシ)が沢山生えています。スイバは地下水位が高い場所に生える野草で、昔は井戸掘りの手がかりにしたそうです。この場所には、昨春畝を立てましたが、まだまだ黒ボク土から脱し切れていないようです。


地下水位が高い場所(この辺りでは浅間山麓湧水帯に当たる)に形成される黒ボク土において、大豆の樹ボケが発生する理由を考えてみます。

(1)樹が大きくなる理由:窒素過剰
地下水の供給が多い土壌では、ブタクサなどの大型の野草が育ち、多量の有機物が生み出される。しかし、水が空気を遮って好気性微生物の活動を抑制するため、未分解有機物が土中に大量に蓄積される。そのような土壌に畝を立てると、通気性の向上に合わせて好気性微生物が活性化。一転して有機物分解が進み、窒素が過剰に供給される。
(2)実付きが悪い理由:リン酸不足
大型の野草は、水を吸い上げるついでに、土から多量のケイ酸を抜き取っていると考えられる(植物ケイ酸の形成)。その結果、アルミニウム比率の高いアロフェン型粘土が発生し、むき出しになったアルミニウムがリン酸を強く固定して、大豆のリン酸吸収を阻害する。

以上から、大豆栽培に適しているのは、有機物が少なくスメクタイト型粘土を多く含む土壌であり、不足する窒素を根粒菌との共生によって確保すればよい、ということになるのではないかと思われます。
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練馬大根収穫

2018年11月21日 | 日記
11月上旬、暖かな日が続いたので、今年は暖冬になりそうだと油断していたところ、週末から強い寒波が来るとの予報が出ました。手始めに沢庵用の練馬大根を抜こうと昨夜算段していましたが、明けて本日早朝。マイナス5℃。一発目の大霜が当たってしまいました。大根の育ちが悪い場所は、やはり土壌水分が多過ぎたようで、肩が凍みてしまったものが幾つかありました。

掘り上げてみると思いのほか地下部分が長く、三浦大根に似て、首が細く尻が太い形状でした。練馬も高台に位置するので、地下水を求めて深くもぐる性質の品種なのでしょう。湧き水が多い当地には、どうやら不向きなようです。来年の沢庵用は、白首長太宮重に戻そうかと思案中です。

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リン酸の循環を考える

2018年11月20日 | 日記
最高気温が10℃に満たない日が出始め、防寒していても外作業がきつい時期に差し掛かってきました。土が凍る前にできるだけ立てようと、暖かい陽射しがあるタイミングを活かして新規畝の整備を進めています。

今日は久方ぶりに顔馴染みが畑に現れました。
<セキレイ>


セキレイは肉食性らしく、ちょくちょく畑に来ては虫を捕まえて食べます。地際に生息する柔らかい幼虫の類がお好みで、畝を耕していると近くによって来て、土から掘り出されたばかりのイモムシをつついています。スズメ同様に人里を住処にする野鳥で、大きな物音を立てたりしない限りは、人間を全く恐れません。群れを作らず単独行動をしており、大した度胸だなと、いつも感心します。

セキレイの姿を眺めながら、野生環境におけるリン酸の循環について考えてみました。

リン酸塩含有岩石→粘土(風化と再結晶)→植物(吸収、有機物合成)→虫(食害)→鳥(捕食)→菌(枯草・糞・死骸の分解:発酵)→細菌(更なる分解:腐植化)→粘土(無機化と再結晶)

リン酸は、生命活動の基幹を成し、遺伝子の材料となる核酸、エネルギー代謝の担い手ATP、細胞膜のリン脂質など、生物細胞の主要な構成物質となっています。窒素、カリウムと並び、3大栄養素として重視されるゆえんです。

一般農法では、リン酸供給源として家畜糞を発酵させたものがよく使われますが、野生環境においても、枯草や動物の糞・死骸の発酵物、腐植物などが、同等の効果を発揮していると考えられます。植物は、粘土中の無機態リン酸を独力で吸収するだけでなく、菌や細菌との共生によって発酵物や腐植物から有機態リン酸を吸収できることが、近年の研究で明らかになってきています。

さて、ここで考えなければならないのは、人為が加わった場合にリン酸循環がどう変化するかです。野生環境では、動物による持ち出しがわずかにある程度で、ほとんどがその場の循環として完結していると考えられますが、農地においては、収穫による作物(リン酸集積体)の持ち出しが無視できない影響力を持ちます。例えば、一般農地のリン酸循環を次のようにイメージしてみます。

山岳→リン鉱石(採掘)→リン酸肥料(精製と化学合成)→畑土壌(施肥)→作物(吸収、有機物合成)→人間(収穫、摂取)→下水処理場(し尿処理)→埋立地(汚泥処分)→河川(処理場からの排水、埋立地からの漏水)→海底(養分堆積)→岩石(造岩作用)→山岳(噴火や隆起)

人間活動の拡大によって、地球環境問題としてリン酸循環を考えねばならない時代になったと思います。
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