「ひび割れ粘土質土壌」を生み出す「膨潤性粘土鉱物」は、粘土鉱物学によれば、2:1型粘土鉱物のスメクタイトに分類されています。チェルノーゼム(黒土)やレグール(黒色綿花土)に含まれることで知られるモンモリロナイトはスメクタイトの一種です。
粘土鉱物は層構造の有無から二つに大別され、更に、層構造を持つものは2:1型と1:1型に区分されます。肥沃な土壌が形成される上で特に重要になって来るのが2:1型のスメクタイトですが、その生成条件がpH7.0以上となっていることが、畑作において酸性土が忌避される理由と言えます。
実際の土壌においては、2:1型粘土鉱物(弱アルカリ性)の結合によって形成される中核粒子を、1:1型粘土鉱物(弱酸性)が取り囲み、更にその外側を腐植酸(酸性)が取り囲むことで土壌団粒(ミクロ団粒)が形成されると考えられるため、土壌団粒の正味のpHは弱酸性を示すことになります。しかし、植物が生えていない通路においては、周辺の草地から漏れ出たわずかな腐植酸が存在するだけなので、2:1型粘土鉱物の影響が優勢になり中性以上のpHが測定されると予想されます。
昨年10月末の実験では、通路のひび割れ粘土がpH7.5以上であることが確認されましたが、多雨だった今年はどのような状況になっているでしょうか。先ず、農業用水路のpHを調べると、pH7.48という結果を得ました。昨年12月の測定結果pH8.14に比べるとだいぶ低い値です。
次に畑内の湧水地を調べると、pH6.23でした。昨年12月の測定結果がpH7.09だったので、こちらもかなり低い値です。まだまだ周囲の草が青々としているので有機酸(酸性)の放出が多いと考えられます。
2カ所の水を使って、通路のひび割れ粘土のpHを推定してみます。
<測定A:湧水地の水pH6.23に粘土を投入> pH6.36
<測定B:用水路の水pH7.48に粘土を投入> pH7.21
<測定C:2カ所の混合水pH6.99に粘土を投入> pH7.16
以上から、pH7.2程度と推定。スメクタイトの生成条件を満たしていることが分かりました。