とやざき農園日誌

浅間山麓(長野県小諸市)で自然農法による農業を行っています
肥料や農薬を施さず自然の養分循環の中で野菜を育てています

枯草置き場のph

2018年12月31日 | 日記
平年の大晦日であれば、数十㎝の積雪があるところですが、今冬は暖かく大雪の気配が全くありません。


数日前の雪もあらかた解けてしまい、畑脇の枯れ草置き場があらわになっていました。いつもここの草だけ勢いが桁違いで気になっていました。今年はph計を手に入れてあるので、数年来の謎を解いてみます。


水道水ph7.61に枯れ草下の土を投入。結果ph7.78。


凄まじいアルカリ濃縮度でした。草を刈って敷くことの意義を再確認できました。
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長良川上流部の山間集落を訪ねる

2018年12月29日 | 日記
雪深い岐阜県郡上市、長良川上流部の山間の集落に来ています。
農業用水のphを計測。結果ph7.80
やはり源流に近い程高いphになるようです。
ここでは、酸性土壌を嫌うモロッコインゲンが良く育つそうですが、用水のphを測って、その理由が分かりました。


義父が育てているブドウの樹。雨も雪も多い地域なので悪戦苦闘しながら毎年孫にブドウを送ってくれます。


株元の土はやや粘性のある質感でph7.78。秋に落ち葉を敷くそうでミネラルは十分にある感じです。問題は水はけで、糖度を上げるには登熟期に日照と土が良く乾くことが重要なのだそうですが、地域柄そこが実に難しいわけです。


水稲栽培に毎年苦心していると言う泥田を視察。稲刈り後も田の水が抜け切らず、積雪で更にズブズブに。水溜まりに氷が張っています。


土を採取してみると、ぬるぬるした質感。スメクタイト型粘土のねとねと粘る感じとは異なり、蝋粘土と言われるカオリナイト型と思われる。
酢酸水ph6.00に土を投入するとph6.15、酢酸水ph6.50に土を投入するとph6.43。よってph6.35付近と推定。


アルカリ性の農業用水が引き込まれる田んぼが酸性になり、引き込まない畑がアルカリ性を示すというのは、実に興味深い結果。
降水(酸性)に対する、農業用水(アルカリ性)および地下水(アルカリ性)の作用が、田んぼと畑で異なることが原因と考えられる。水を貯めるように造成された田んぼでは、酸性の降水が停滞して土からアルカリ成分を溶かし出す。それに対し、乾燥する畑では地下水の沸き上がりが強く働き、地表にアルカリ成分が濃縮され、降水による溶脱を上回る。
という具合に考えれば良さそうです。

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森林土 調査 続き

2018年12月26日 | 日記
本日も、「森林土」調査の続きです。
森林土がph5近くを示す理由を探るため、落葉樹の枯れ落ちた枝と葉を拾ってきました。樹木体内にアルカリ成分がどの程度あるのか推定するため、枝と葉の抽出液をph測定してみます。先ずは枝です。


<サンプルA:落葉樹の枝の抽出液>
(1)湧き水ph7.17で抽出。開始から
5分後→ph7.13
10分後→ph7.09
20分後→ph6.97
30分後→ph6.90
3時間後→ph6.59
(2)水道水ph6.44で抽出。開始から
5分後→ph6.49
10分後→ph6.48
20分後→ph6.46
1時間後→ph6.46
※水道水とほぼ同じ弱酸性

3時間抽出すると、液が淡い褐色に染まりました。タンニンの色でしょうか。
水道水で抽出した際、最初の5分で上昇したphが、その後減少に転じている理由を考えてみますと、最初に、水に溶けやすいアルカリが素早く抽出されてphが上昇、その後、タンニンなどの有機酸がゆっくりと抽出されたことでphが減少したのではないかと思われます。


続いて、葉を抽出します。
<サンプルB:落葉樹の葉の抽出液>
水道水ph6.45で抽出。開始から
5分後→ph6.52
10分後→ph6.52
20分後→ph6.52
30分後→ph6.50
45分後→ph6.47
1時間後→ph6.45
※水道水と同程度の弱酸性


葉の抽出においても、phが上昇した後、一転してphが減少する結果となりました。
水源地調査の折もそうでしたが、森林においては有機酸の影響がかなりあるようです。アルカリは酸によって相殺されるので、ph測定値だけではアルカリ成分の存在量は推定できません。とは言え、ph5の土壌に比べれば明らかに高いphなので、樹木が土壌からアルカリ成分を吸い上げていることは間違いなさそうです。
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森林土 調査

2018年12月25日 | 日記
水源地視察を終え、樹木が土壌にもたらす作用について興味が湧いてきたので、本日は落葉樹林を訪ねて「森林土」を調査することにしました。樹木の根を傷付けるのは申し訳ないので、根本から2メートル程離れた場所の土壌を探ります。辺り一面を落ち葉が覆っています。


落ち葉をどけると、表土が現れました。


表土には腐植物が大量に混じり、焦げ茶色をしています。色はスメクタイト型粘土に近いですが、パラパラした感触で粘性は全くありません。
<サンプルA:森林表層の腐葉土>
酢酸水ph5.50に土を投入→ph5.41
酢酸水ph5.25に土を投入→ph5.27
※ph5.30~ph5.35と推定


15㎝程掘ると、土が淡い色調に変わってきました。樹木の吸収根が見え始めています。土質はサラサラです。


<サンプルB:深さ15㎝付近の森林土(淡い焦げ茶色)>
酢酸水ph5.50に土を投入→ph5.47
酢酸水ph5.25に土を投入→ph5.28
※ph5.35~ph5.40と推定


深さ20㎝以降、吸収根が縦横に張り巡らされ、根を傷付けずに掘るのが難しくなってきました。根の隙間に小型スコップを入れて30㎝辺りまで掘り進めたところで諦めました。粒子が極めて細かく、水気がほとんど感じられない土質です。
(日陰に入ったせいか写真が暗くなっています)


<サンプルC:深さ30㎝付近の森林土(栗色)>
酢酸水ph5.25に土を投入→ph5.20
酢酸水ph5.00に土を投入→ph5.01
※ph5.05程度と推定


畑では見たことのない強酸性でした。色合いから見て、土壌学上の分類は「褐色森林土」に当たると思われます。表土近くのphが若干高いのは、腐植物の分解によって放出されたアルカリ成分の影響と思われます。
ph5.0以下ではケイ酸が完全に溶脱し、粘土粒子が存在しなくなるそうです。「黒ボク土」をはるかに上回るサラサラ度合だったのは、それに近い状態のためでしょう。
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水源探訪

2018年12月24日 | 日記
一昨日、畑の湧き水のphを測定したついでに、畑脇を流れる農業用水のphも測ってみました。
<サンプルA:畑脇の農業用水>
ph8.14


畑の湧き水がph7.1前後だったので、農業用水も同程度だろうと思っていたのですが、予想外に高いアルカリ性で驚きました。
初冬は周辺の慣行畑で、来年に向けた土作りのために粒状石灰を散布しているので、ひょっとしてその影響が出ているのかもと一瞬考えましたが、今時期は降雨量が極めて少ないのでカルシウムが畑からそう簡単に流れ出すとは思えず、また、今年は暖冬のため凍結防止剤(塩化カルシウム)散布がまだ行われていない様子なので、原因がいまひとつハッキリしません。
そこで、本日改めて同じ位置で農業用水を計ってみると、やはりph8.14と出ました。周辺環境の影響があるとすれば数値に変動が見られるはずなので、この安定ぶりからして、水源がそもそも高いアルカリ性であると考えるのが順当です。丁度良い機会なので、農業用水を遡って水源を調査してみることにしました。

近所の方によれば、この辺りの農業用水は柏木水源地から取水しているとのこと。念のため地図を参照して主要水路を辿ってみると間違いなさそうです。小諸生まれではないので迷わないようにルートを確認していると、ふと思い立った場所がありました。亡き親方の果樹畑横に湧く水源です。うちの畑の農業用水路とは水系が別になりますが、データが多い方が都合が良いので寄り道してみることにします。


2本のケヤキの間に祠があり、石垣下から水が湧き出ています。昔は鎮守の杜だったのかも知れません。
<サンプルB:双子ケヤキ下の湧き水>
ph7.00
※中性ど真ん中。野菜栽培にはph7.0あれば十分。


水源の周囲ではレタスや白菜、キャベツなどが栽培されていますが、豊かな地下水帯のおかげで良質な高原野菜が生産されているのでしょう。
寄り道を終え、いよいよ当該水系を遡ります。水源に辿り着く前に中間地点を調査。浅間サンラインの南ヶ原入り口信号手前で車を止め、道路脇用水路に下りてみます。
<サンプルC:南ヶ原入り口付近の用水>
ph8.49
※畑脇よりも更に高いアルカリ性。


農業用水のアルカリ性が周辺環境の影響ではないことがハッキリしました。一体、水源はどうなっているのでしょうか?
以前調べたところによれば、小諸市の主要水源の内、弁天清水だけが軟水、それ以外は硬水だそうです。柏木水源が硬水だとすれば、これだけアルカリ性が高いことも頷けます。

用水路の位置に気を配りながら登っていくと、遺伝資源保存園前に「水出併用林道」と書かれた杭が立っていました。また車を止めて用水を計ってみます。
<サンプルD:水出併用林道入り口の用水>
ph8.21
※南ヶ原入り口よりもやや低いアルカリ性。
上流に向かってphがぐんぐん上がっていくかと思いきや、そうでもないようです。


細い林道を通って更に車を進めると、「水出林道」と書かれた杭の立つ場所に着きました。山道に入りそうなので、ここからは徒歩で探索してみます。


少し登ると、左手に勢いよく水が流れるU字溝がありました。ここでもphを計ってみます。
<サンプルE:水出林道入り口の用水>
ph7.20
水源に近づくにつれ、phが上がるどころか下がっています。どうなっているのかさっぱり分からないので、ともかく水源を目指します。


舗装の無い山道を登っていくと、フェンスで囲われた水源に辿り着きました。水源に林立しているのは杉のようです。


透明度の高い清流。phが気になります。
<サンプルF:柏木水源地の水>
ph6.74
※弱酸性!?


三度計測しましたが、弱酸性で結果は変わりません。冷静に考えるために辺りを見渡していると、杉の葉が青々としていることから肝心な事を思い出しました。
「山の土は酸性」
山林の樹木は深く根を伸ばし、雨水よりも酸性度の高い有機酸を分泌して岩盤からアルカリ成分を溶かし出すそうです。常緑樹の杉が今なお有機酸を出し続けていると考えれば、無理なくこの値を理解できます。

樹木が吸収し切れなかったアルカリは有機酸塩として山水に混ざります。また、一旦樹木に吸収されたアルカリも、その樹木が命を終えて微生物に分解されることで、同様に有機酸塩となり山水に混ざります。このような有機酸の介入があると山水は弱アルカリ性を示すことになりますが、杉の根元には溶け出すアルカリよりも多くの有機酸が存在するので、更にphが下がって水源は弱酸性になります。

次に、下流について考えてみます。樹木が出した有機酸(クエン酸など)はエネルギー源として微生物に利用されるそうです。流れ下るにつれて有機酸が消費されていくとすれば、アルカリだけが残ってphが上がり用水はアルカリ性になると言えます。

帰り際、林道入り口の脇を見ると、深い沢がありました。涸れ谷になってしまっていましたが、農業用水が整備される前はここを水が流れていたのでしょう。涸れた谷には杉がなく、落葉樹ばかりでした。冬眠した落葉樹は有機酸を出さないので、下流が酸性にならないのだろうなと思いました。よくよく考えてみると、強いアルカリ性と言うのも、人間がU字溝を設置して樹木と水の関係を分断してしまった結果と言えそうです。この用水によって麓の里は本当に潤ったのだろうか?山林の保全というのは難しいテーマであると感じました。

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