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2011.6.1~。大津波、宮古市、鍬ヶ崎復興計画。陸中宮古への硬派のオマージュ。 藤田幸右(ふじたこうすけ) 管理人

出口なし袋小路の「核燃料」

2023年02月01日 | データ、転載など

まだこんなことをやってます。いい加減にせい!!

<デジタル発再認識の必要  通しでも、部分でも、「核燃料サイクル」について、おさらい。

 

 

袋小路の核燃料サイクル 施設完成遅れ、核ごみ処分もめどなし 将来世代にツケ

 

 
 
 構想から60年以上が経過する巨大国家プロジェクト「核燃料サイクル政策」が袋小路に入っています。原子力発電所(原発)の使用済み核燃料からプルトニウムとウランを取り出し、燃料として再利用する仕組みですが、要となる使用済み核燃料再処理工場の完成が何度も延期されるなどし、実現のめどは立っていません。総事業費は16兆円に膨らみ、事実上破綻しているとの指摘もあります。一方で、ある「約束」の存在などを理由に、実現を切望する人たちもいます。複雑多岐な政策について、仕組みと課題を整理しました。(東京報道センター 土屋航)
 

青森県六ケ所村の核燃料サイクル関連施設(共同)

 核燃料サイクルの前に、まず原子力発電の仕組みを説明します。燃料はウランという物質で、その原子核に中性子を当てて分裂させると、エネルギーが発生します。その力でお湯を沸騰させ、発生した蒸気がタービンを回して発電します。
 発電で使い終えたのが使用済み核燃料で、この中にはプルトニウムやウランが残ります。
 

■エネルギーの安定確保が目的

 ウランはウラン鉱山で採れるウラン鉱石を加工したもので、採掘可能な埋蔵量は約800万トンとされています。これは70年分程度の量で、石油などと同様に限りがあります。一方、日本はエネルギー資源の多くを輸入に頼っています。ロシアのウクライナ侵略を背景とした原油高は電気やガス料金などの高騰をもたらし、家計の負担となっています。
 経済産業省は、国内で使用した核燃料も再利用できれば「安定して安価なエネルギーを享受できる」と考えています。これが、政府が核燃料サイクルを推進する目的の一つなのです。
 
 上の図は、その仕組みを示したものです。使用済み核燃料は、青森県六ケ所村の再処理工場で、ウランとプルトニウム、高レベル放射性廃棄物(核のごみ)に分けられます。ウランとプルトニウムは、村内のMOX(混合酸化物)燃料工場でMOX燃料に加工し、高速増殖炉や通常の原発で再利用します。
 

■進まない核燃料サイクル

 ただ、実現に向けてはいくつものほころびが表面化しています。
 

原子力規制委員会による審査が難航する再処理工場(土屋航撮影)

 

<課題① 完成しない再処理工場>

 まず、そもそも六ケ所村の使用済み核燃料の再処理工場が完成していません。再処理工場は、同村に本社がある「日本原燃」という会社が国の方針を受け、電力会社が出資する形で国策民営の事業を担っています。再処理工場の建設は1993年に始まり、97年の完成予定でした。
 しかし、使用済み核燃料を貯蔵するプールからの水漏れや、放射性廃液を扱う設備の不具合など、トラブルが頻発。2011年3月の東京電力福島第1原発事故以降は、原子力規制委員会の安全性審査に時間を費やし、26回もの延期を繰り返してきました。
 2022年12月には、新たな完成時期を「24年度上期のできるだけ早期」とし、22年度上期から2年延期すると発表。原燃の増田尚宏社長は延期を謝罪した上で「一日も早い操業を目指し全力で取り組む」としています。

<課題② プルサーマル発電は一部のみ>

 使用済み核燃料から作られるMOX燃料を使える原発も限られます。本命の高速増殖炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)は、事故やトラブルが続き2016年に政府が廃炉を決定。そのため、政府は通常の原発でMOX燃料を使うプルサーマル発電を推進していますが、対応可能な原発は関西電力高浜3、4号機、四国電力伊方3号機、九州電力玄海3号機の計4基にとどまります。
 

廃炉が決まった高速増殖炉「もんじゅ」(共同)

 電力業界は2030年度までに、北海道電力泊原発3号機や中部電力浜岡4号機などを候補に12基以上でプルサーマル発電の実現を目指していますが、多くは福島第1原発事故を受けて停止しており、再稼働の前提となる審査が難航するなど見通しは立っていません。電源開発(東京)も、青森県大間町にプルサーマル専用の大間原発を建設中で30年度の稼働を予定していますが、審査の遅れで延期が続いています。
 

電源開発が2030年度の稼働を目指す大間原発(小葉松隆撮影)

 再処理工場がフル稼働すると、年約7トンのプルトニウムが製造されます。プルサーマル発電ができる原発が増えないまま計画どおり再処理していくと、プルトニウムの供給過剰に陥ります。
 日本は海外に委託して再処理した分を含め、すでに約46トンのプルトニウムを保持しています。このままでは核兵器の原料にもなるため、海外に警戒感を与えてしまいます。米国は余剰分の削減を求めており、日本は保有量の8割を占める海外保管分の削減に取り組むとしています。

<課題③ 核ごみの処分先決まらず>

 さらに、核燃料サイクル最大の課題は、使用済み核燃料を再処理して出る「核のごみ」の行き先が決まっていないことです。
 核のごみは、再処理で残った廃液をステンレス製の容器に流し込んで固めた「ガラス固化体」を指します。放射能レベルが非常に高いのが特徴で、ガラス固化体の製造直後の放射線量は1時間当たり1500シーベルト。人が近づけば、20秒程度で死んでしまうぐらいの強い放射線で、近づいても安全とされるレベルに下がるまでには10万年かかるとされています。この処理先が決まっていないため、原発は「トイレなきマンション」と揶揄(やゆ)されているのです。
 
 ただし核のごみの処分方法は決まっていて、地下300メートルより深い位置にある岩盤に最終処分場を建設し、そこに閉じ込めて隔離することになっています。
 最終処分場については、北海道西部の寿都町と神恵内村で、建設地の選定に向けた第1段階の調査となる文献調査が2020年11月から行われています。調査のめどは文献調査が約2年、第2段階の概要調査は約4年、第3段階の精密調査は約14年で、計約20年を要します。処分場の建設にはさらに10年程度かかり、調査開始から完成まで、順調に進んでも30年に及ぶ長期事業です。
 
 国は2000年に、核のごみの処分手続きを定めた特定放射性廃棄物最終処分法を制定し、地層に処分することを決めました。処分場候補地の公募を始めた02年以降、道外では少なくとも15自治体で応募を検討する動きがありましたが、実際に応募したのは07年の高知県東洋町のみ。同町では反対運動が起こり、応募の是非を問う町長選の末、反対派の新人が現職を破り、応募を撤回しました。
 
 つまり、公募開始から20年以上たっても、調査にこぎ着けたのは寿都町と神恵内村の2町村しかないのです。さらに、次の概要調査に進むには両町村長と北海道知事の同意が必要となりますが、鈴木直道知事は反対の姿勢を示しており、選定にこぎ着ける可能性は低い状況です。
 課題が山積する核燃料サイクル政策について、原子力事業に詳しい龍谷大の大島堅一教授は「原発のコストは増え、サイクルに経済合理性はない。使用済み核燃料と核のごみは、地上で管理しながら処分方法を議論するのが望ましい」と、撤退を主張します。

■青森との「約束」

 一方で、ある電力業界関係者は「青森県との約束があるから、核燃料サイクルは実現しないといけない」と強く訴えます。「約束」とは何でしょう。
 全国の原発から出た使用済み核燃料の一部は、原燃の施設に運び込まれています。青森県と六ケ所村、原燃の3者は1998年に、下のような覚書を交わしました。
 「再処理事業の確実な実施が困難となった場合には、原燃は使用済み核燃料の施設外への搬出を含め、速やかに必要かつ適切な措置を講じる」

 これは、核燃料サイクルが頓挫した場合、使用済み核燃料を、それらを出した各原発に送り返すという意味です。
 大手電力各社は原発敷地内のプールで使用済み核燃料の多くを保管していますが、大手電力でつくる電気事業連合会によると、プールの容量に占める貯蔵量は2022年9月時点で76%に上ります。本州の大手電力幹部は「使用済み核燃料の行き場を確保しなければ、プールが満杯になり、新たな核燃料が使えなくなるため原発は止まる。だからサイクルを進めるしかない」と漏らします。
 

六ケ所村の核燃料サイクル関連施設(土屋航撮影)

 核燃リサイクルをあきらめられない理由はまだあります。あきらめれば、関連施設が集まる青森県六ケ所村の経済に大きな打撃となります。「やませ」と呼ばれる偏東風が吹き、冬は豪雪に覆われる厳しい環境にあり、1950~60年代の平均所得は県内最下位。かつては東京などへの出稼ぎを余儀なくされていました。
 そんな寒村も、関連施設の立地で経済環境は一変。青森県が公表した2018年度の市町村民経済計算によると、六ケ所村の企業所得を含む1人当たりの市町村民所得は984万1000円で、現行の推計方法となって以降13年連続で県内トップに。4人に1人が原燃に勤めており、同村の木村常紀議員は「サイクルが頓挫すれば、昔のように出稼ぎしなければいけなくなる」と懸念を示します。

■原発推進に転換

 2022年12月、政府は脱炭素社会実現に向けた基本方針をまとめました。原発の運転期間を実質的に延長し、新増設にも道を開く内容です。政府は東京電力福島第1原発の事故を教訓に、原発への依存度を低減するとしてきましたが、8月の検討開始からわずか4カ月で大きく転換することになりました。
 この間に開かれた国の有識者会議では、原発の活用策に議論が集中し、核燃料サイクルや後処理の対策は置き去りとなりました。これらについては基本方針でも「再処理工場の竣工(しゅんこう)目標実現などの核燃料サイクル推進」「文献調査受け入れ自治体等に対する国を挙げての支援体制の構築」「国と関係自治体との協議の場の設置」など、抽象的な文言が並んでいます。
 「われわれの世代で解決に向けた対策を確実に進めることが必要」―。
脱炭素社会実現に向けた基本方針をまとめた翌週の2022年12月23日、5年ぶりに開かれた最終処分場選定に向けた閣僚会議で、松野博一官房長官はこう強調しました。
 ただ、こうした発言とは裏腹に、やっかいな核燃料サイクルや核のごみの問題に目をつぶって原発への依存を強めれば、将来世代にツケを回すことになりかねません。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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