第二章 3節
第 3 節 避難場所を決め、避難場所を作る
ここまでの時間帯に、溺れたり下敷きになったりの有事の事態に人が死ぬ。地震で、また津波で、短い時間帯で、ほとんどの人が亡くなる。第二章は、古い言葉の「防災」「対策」をやめて、そこの初動時間発生から人が避難場所に到達するまでの<「避難」>について述べている。避難場所にたどり着けば人は助かるのだ。
1、「避難場所」の位置
=「第 2 stage 」の位置
政治家や官僚、学者先生が見て見ぬ振り、触れようとしない東日本大震災の2万人規模の犠牲者を正面に見てその悔恨と弔意の範囲を起点とする。── 図表の真ん中「第2 stage」がその位置である。ちょうど第二章の本編の位置にあたる。東日本も西日本もない、地元の住民は覚悟しているはずである。 ※ 官僚など巨大地震津波の「防災」「対策」と発想した途端に「第2stage」は消えて見えなくなる
2、避難場所を決める
避難場所「千葉県勝浦市 熊野神社」
ふさわしい避難場所はまず高さと広さである。それ次第で 1 地区でさえ複数の場所になる。まず高さ、海抜20m以上。津波のせり上がりエネルギーをくわえると30mから40mが視野に入る。地元の人はよくよく考えよくよく勉強して決めなければならない。広さは、地区住民の人数と地区外の人数を合わせてもプラス、マイナスだからおおよそ住民の数の収容人数の広さが必要、それぞれの地震体感地点からの距離、都合で同一地区住民でも複数場所に分かれる。
いずれにせよ「既存」避難場所の点検から始まる。以下思いつき的イメージ
★避難場所の評価
1、既存避難場所、の点検(高さ、広さ等)
2、避難試行、訓練
3、その修正
★避難場所環境の地政
1、既存伝承、歴史、の点検、
2、検証
3、その確認、修正、アーカイブス、提言、など
★使い勝手の検証
1、試験避難、避難訓練、の実施
2、その実態点検、検証
3、a、訓練の修正、b、避難場所の変更など
3、避難場所をつくる。予算など──
避難場所をつくるための予算は国からは惜しみなく注ぎ込まれる。ほとんどが既存地形、既存地ということであるが、地域によっては最初からの造成、造構築となる。また避難場所に関連して常時使用出来るの事務所、集会場。有事の屋根付き集会場の建設。など
予算はこれらハード建設のためのイニシャル予算の他に、上記 2、の避難場所の訓練費用など、下記 4、の維持管理、運営費用など多岐多大な項目で主にソフト関連のランニング予算の処置をしなければならない。人材を中心にしたそのような費用、予算についても国が全面的に準備することになる。
4、避難場所を決め、つくり、維持管理する
具体的に「避難場所を決め、つくり、維持管理する」について何をどうするかは分かるはずである。
それは地元住民のベタの仕事
ここでは「避難場所を決め、つくり、維持管理する」ところの具体的なハードの仕事からは一旦離れて(しかし、それらの仕事を含め)、その方法、その目的、その意義などの幅広い抽象的の話題に移る。── 「避難場所を決め、つくり、維持管理する」とは、その鏡であるところの地元「避難ガイド」書を制作し、維持管理することでもある。「全く同じことだ」と言ってもよい。
☆
地区、地域の住民一人一人の自主的な避難計画〜避難ガイドの制作作業が常に中心にあるべきだ。ガイド(マニアル)を中心にした避難計画とスムーズな避難がすべての目的になる。特に地域地元のメンターであるべき人たちのあらゆるきっかけづくり、取りまとめの情熱と手腕の指導性が不可欠となる。そしてメンターとメンティーのかぎりなき交代に引き継がれるガイド書の存在が大事だ。
サスティナブル(持続可能性ある)マニアルの存在
そのような地域、地区避難ガイドやマニアルはその住民自ら作成し常に修正するというところまで進まなければ最大クラス地震津波からの避難は到底完遂することはできない。知的民度をそこまで上げなければならないと言ってもいい。中央政府、地方自治体また諸学者等、住民から見て他者(よそ者)にそれら避難ノウハウを作成させ、あるいは期待することはナンセンスである。細部にわたる住民の自主自覚、そして、それでいて、自治体、諸専門家、学者等との切れ目なき相互意見交換、修正、専門助言、リスペクト&コラボレーション。
☆
避難場所等のハードの維持管理の主体が地元住民であることは確認できた。
そのことはとりも直さず地震津波からの<「避難」>マニアルの作成である。
マニアルの作成には、まず地区ごとに専門職員の配置が必要となる。対象化され常に修正される地域<「避難」>マニアル作成にはそれ専門の「職員」が必要。一定の見識と知見に加えて専門的な書く(記録する)能力が必要である。従来は「書記」などと称されていたがより幅広く地域の今、いや、幅広く地域の過去、現在、未来を書き写す能力のある方である。<「避難」>マニアルとはいわば住民の避難計画・記録作成。当該単位地区に専門学習、専門訓練された1名の有給「職員」が必要。新規任命でも自治体職員派遣でもOK。メンター集団がどんな組織、どんな構成になるかはそれぞれだが「職員」はその指導管理のもとに所属する。
☆ まとめ
── なぜあえて書く能力などと記録することにこだわるかといえば、サスティナブル(持続可能性ある)マニアル=避難ガイドこそ、地域住民が自らの意思の結集で巨大地震津波から命を守る有力な方法だからだ。国の、何の役にも立たない総花的防災ガイド、他の官僚等制作の防災対策ガイド、等ではとても命は守れない。地域(特有)のアーカイブスを目指して、その不断の改編を続ける生きた避難指針ガイドとして、ガイドは地元民自らの手と足と頭で作るべきなのだ。地理の利を100%生かす。
他人が作り他人が修正した避難指針ガイドでは自分たちの命は救えないと心得、伝承するべきだ。巨大地震津波の動静は、いつ起こるか不確定要素が多く、一度起これば間に合わない、と厳しく心得、伝承するべきだ。
反面では、生きて心得、伝承され、即応して常に効果を発揮できる避難ガイド(書)こそ作るべきだ。その確かな担い手こそ地元住民であり、それを全面的にサポートするのが、その心得のある「職員」だ。ガイド作製の技術面(書くこと等)を補佐、記録の人間的アーカイブスを発揮(もの知り)、有事にはメンターなど指導者・指揮者を指揮・指導する。足りないところは、それこそ地域で支えるという関係を築く。
つづく