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2011.6.1~。大津波、宮古市、鍬ヶ崎復興計画。陸中宮古への硬派のオマージュ。 藤田幸右(ふじたこうすけ) 管理人

陳情書【2】不透明な工事

2015年09月14日 | 鍬ヶ崎の防潮堤を考える会

宮古市議会に「岩手県(および宮古市)に対し鍬ヶ崎防潮堤について工事中断、変更、工事再開の現時点で地区住民に十分な再説明を行う事の要請」を陳情

「鍬ヶ崎の防潮堤を考える会」



2、不透明な工事

 

工事の設計・施工、プレキャスト工法は危険。行政の自由裁量権の限界か? 時間を理由に、県・土木センターは地域住民への説明を後回しにし続けている。

 

(1)プレキャスト工法はモルタルでつないだ積み木細工 大手メーカーの鋼管とコンクリートブロックをモルタル剤グラウトでつないで作られる防潮堤は現実の津波には耐え得ない。「グラウト」とは無収縮モルタルの事でトンネル工事の充填剤、ダム建設の遮水目的などに多用されている接着材の事である。「グラウト」がいかに優秀な素材であっても所詮モルタルであり防潮堤の強度にはなじまない。積み木をただのり付けしたような防潮堤が何かの役に立つとは思えない。この仕様は一体工法、均一素材が生命線である工作物の強さの原則から逸脱している。

 

(2)横からの圧力に弱い芯鋼管 高さ7~8mに積み上げられる巾6mの4枚の巨大コンクリートブロックは1ユニットあたり2本の鋼管で支えられる。巨大壁にかかる津波の横からの圧力には2本の鋼管だけで負荷を負う事となる。(a)2本の鋼管のそれぞれには面積負荷の割合で分担耐力の3.75倍の負荷がかかる(芯鋼管の直径を0.8mとすると6m÷0.8m÷2本)。加えて(b)テコの原理により、底版上面をテコの支点にして鋼管には底版(厚さ1m)を横に弾き上に蹴上げる力が生じ、芯鋼管のそれぞれの足もとには津波の横への圧力の7~8倍の負荷が加わる。したがって(a)(b)合わせて2本の鋼管の足元にはそれぞれ分担耐力の26倍強~30倍の負荷がかかると見なければならない。          

 ──これが有事に新鋼管が捥(も)げる、拉(ひしゃ)げると主張する根拠であります。平たく言い直すと、直立式防潮堤とは平時にはかろうじて自立しているが有事にはあっけなく倒壊する巨大な案山子(かかし)であるというべきである。

 

(3)忘れられた鋼管杭の横バネ効果 敷地の倹約や細身の防潮堤を可能にしたと鋼管杭の横バネ効果を謳っていた(2014.11.4説明会資料P.9)が、現実には鋼管杭を支持地盤まで打ち下げるだけ(=垂直抵抗)の工事を進めようとしている。鋼管杭の支持地盤との結束や、横バネ発生のメカニズムにはもう口を拭っている。これでは普通のビル工事のコンクリートパイル打ちこみと同じ基礎工事なのである。このように、鋼管杭の水平横抵抗力を忘れてしまっただけでなく、最近では「まさつ係数」の事を多言し、深い支持地盤では長い鋼管杭に強い摩擦力が生じる、と言って、まるで、摩擦のために十分に横バネ効果を発揮するので長い(深い)鋼管杭は支持地盤まで敢えて打ち込む必要がない、と言っているように言いふらしている。

 

(4)効果不明、自然破壊のめくら打ち 鋼管杭を支える鍬ヶ崎当該支持地盤は現実には宮古漁協の切り通しを起点として鍬ヶ崎市街地を貫き蛸の浜(さらに日出島から田野畑村に至る35キロメートル)に及ぶ宮古層群である。海上、地上の断崖絶壁に見る通り当該支持地層は主に陸側から海側に向かって急峻複雑な地下地形を形成しておりペア鋼管杭の海側/陸側の高低差は15mから20mもざらであると思われる。県・土木センターはボーリング調査ではペア鋼管杭の真ん中の縦断支持地盤線だけを抽出して海側/陸側の高低差(=横断高低差)は把握していない。「横断図は作成しない」(「鍬ヶ崎の防潮堤を考える会」の公文書開示請求に対する岩手県の回答)という事であれば陸側の鋼管杭、海側の鋼管杭は(1064本全部ということ)打設深度の分からないめくら打ちということになる。ペア鋼管杭の間隔が5.4m(中心-中心)~ 6.2m(外側-外側)もあり横断的に急峻複雑な地形では縦断図自体が意味のないものである。鍬ヶ崎「その1工区」の鋼管杭打設計画の打設、想定外、引き抜き、鋼管追加溶接、再打設の繰り返しがその良い(悪い)例である。このように縦断図だけのアリバイ調査では基礎の足がない幽霊防潮堤が出来るだけだ。

 

(5)「メーカーのいいなり」が県行政の自由裁量の現実 鋼管杭の「横バネ」機能の放棄にせよ「横断図」不要説にせよ、これは全て岩手県土木技術行政の判断という事になる。しかし手段や知見を持たず、地区住民への公僕意識を古くさいと捨てた県行政はほとんどの判断をメーカーや建設請け負い業者のファシリティーや教唆に頼って、そうしているように思われる。われわれ一般市民がなぜこれほど専門分野に首を突っ込み、行政の裁量権と思われる分野にまで待ったの号令をかけるのかという理由でもあるが、県行政の政治的技術的裁量権が能力的に業者に横取りされているからである。最も重要な事であるが、それは3.11東日本大震災の死屍累々の防波堤・防潮堤崩壊の検証が岩手県中枢で出来ていないからそうなるのである。検証の手がつけられていないだけでなく検証する気がないのではないかと思われている。そのために、右にならえで、宮古市など岩手県沿岸自治体でも地元被災の真剣な検証が行われているといえない状態が続いている。今行われている防潮堤建設の思想、設計、復旧、新設の工事はほとんど震災以前の悪しき公共土木工事の踏襲であり、検証を経過した新しい事象はどこにも見えていない。見えているのは被災市民の経験則を越えられない、それこそ古くさい穴だらけの裁量権だけである。その只の延長で鍬ヶ崎に防潮堤を作らせてはいけないと、徐々に市民が気づき始めている。



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 はじめに。不可解な現状

1、ソフト面の見解を問う

2、不透明な工事

3、大きな環境整備は?

4、市民合意のない防潮堤建設



参考




 


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