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砂の大地。
砂塵舞う、風の舞台。
そこに、馬がいて。
そして、人がいて。
見上げれば、空。
そして、太陽。
勝つために、馬はそこにいる。
勝つために、人はそこにいる。
目には見えないけれど、
喜びも悲しみも悔しさも怒りも、
たぶんきっと、そこにはあるのだろう。
そして、それを見つめる人がいる。
馬は、何のために走る?
なぜ誰よりも速く走ろうとする?
それは、それが生まれながらの宿命だから。
そして、その役目を終えた馬たちは、
静かにその場所から去っていく。
どこへ行くのか、これから何のために生きるのか?
私にはわからない。
それが、幸せなことなのかすらも。
お疲れさま。
どこかの誰かが言った。
人は、何のために馬に乗る?
なぜ誰よりも強く輝こうとする?
それは、それが生きていくことの意味だから。
その命を風に乗せ、馬に預け、技を練り、力を振り絞る。
そして、ただ待ち焦がれる。
自らが最高に輝く瞬間を。
時に危険な生業だ。
時に悲しいのはなぜだろう?
私にはわからない。
それが、どこから呼び起こされる感情なのかも。
ばかやろう。
心ない、どこかの誰かが言った。
勝つために、馬はそこにいる。
勝つために、人はそこにいる。
もしそんなとき、ただ勝つために、
誰かの心や、
誰かの体や、
誰かの大切なものが、
取り返しがつかないほどに傷んだとしたら、
人はどんな感情に駆られるのだろう?
砂の大地は、人が輝こうとする営みを責めるのだろうか?
風の舞台は、人が勝とうとする欲望を責めるのだろうか?
刹那の瞬間には、
いたるところで、
天使も悪魔もあらわれる。
人が人を裁くことはできない。
全ては、罪が人を裁くものだ。
もしかしたら、
そこで起こりうる全ての事象を超越したところに、
馬頭観音様は、おられるのかも知れない。
人が否定しようもない、その心の悪魔を見つめながら。
既にどうしようもない、その過ぎてしまった事実を見つめながら。
勝つために、馬はそこにいる。
勝つために、人はそこにいる。
だから、そこでは誰もがただ、祈る。
”この刹那に、皆、健やかに、そして無事であれ。”と。
色即是空。
空即是色。
そこに、馬がいて。
そして、人がいて。
見上げれば、空。
そして、太陽。
さようなら。
心ない、どこかの誰かが言った。
私は、思う。
まだ、全ては終わってはいない。
私は、信じる。
もしかしたらまだ、何も始まってはいない。
見上げれば、空。
そこに空があるのだから。