どんこの空(そら)に 。

きっと何かが足りない~それを探す日記~

ROAD。

2011-01-10 | Sandstorm



冷たい雨。
深夜の帰り道。
寒空の中に車を走らせる。
仕事でのミス。
今夜は繁華街を避けたい気分。
わざと市街地を遠回りする。
街灯すらない真夜中の郊外の道。
運転には楽だが、少し怖い。



ここのところ、車通勤を始めてから少し変だ。
高校時代に通い慣れた道。
大学時代に通い詰めた店。
不思議と引き寄せられる。
想い出はバラバラの景色の中にあるのに、
全てが映画のように繋がる道。
記憶は断片のように、この胸の中に今でもある。
懐かしい音楽。
呼び覚まされる官能。
それらが、道という空間で繋がってゆくのだ。
それはまるで、ここ数日のタイムマシン。
名古屋という街。
二十余年という時間。



今夜は、それを避けるかのように車を走らせていく。
・・・はずだった。
やがて山道に入り、雨がみぞれへと変わった。
初めての道。
その突き当たり。
それは、ふいに現れた。
別れてからの彼女が通っていたキャンパス。
自分の知らない彼女が、輝いていたであろう時間を過ごした場所。
そこは、跡形もなく真っ暗だった。
偶然にも、その頃好きだった曲。
偶然にも、あの頃を思い出させる場所で。



道は、数限りない選択の余地がある。
でも時に、そこには真っ直ぐの道はない。
ここは名古屋の郊外。
ここにもまだ、自分のカケラが落ちていた。
自分はそれをまた、拾い集めようというのか。
仕方なく、右折。
仕方なく。
振り切りように車を走らせる。
振り切るように。
雪?
車の外気温は3度なのに、
フロントガラスをたたくのは雪みたいだ。
大粒の水滴が、さらに視界を滲ませる。



再び明るい街に出て、交差点。
見覚えのある風景。
今度は、自分が通っていたキャンパスへの道だった。
信号が青になり、横切る。
横切る。
決して曲がったりはしないと思う。
今夜は、こんなはずじゃ、
なかったのに。
繋がらないはずのふたつの道が、
今夜また、自分の目の前に現れてしまった。
失敗だ。
今夜もまた。
こんな気持ちは失敗だ。



10年以上離れていた故郷。
少しずつぼやけて、少しずつ忘れて。
ひとつひとつは宝物なのに、
それはいつしか繋がってはいけない世界だった。
自分の中で。
時間も、空間も。
ここで過ごした全ては、
きっと自分の中で一番の脆い部分なのだろう。
フロントガラスがぼやける。
それは、雪のせいだけだったのか。
とことん南下。
23号線に出るまで、そう決めていた。
やがてみぞれは雨になり、そして止んだ。
ワイパーすら止めることを忘れて、
私は、汗ばみながらハンドルを握っていた。
何かに取り憑かれたように。
頭の中で、何かを昇華させるかのように。



23号線に出た。
右折。
そこで初めて我に返る。
意図をせず、そこは新入社員の頃の思い出の地だった。
車通りは少なく、視界良好。
加速する。
飛ばす。
やがて、ここ5年間に通い慣れた通りに出て、
私はさらに車を加速させた。
不思議にも、ここの路面には全く濡れた形跡がない。
ほんの数十分の出来事。
タイムマシン。
故郷の街。
二十余年という時間。
そこにはまだ、
自分が忘れていた数限りないカケラが落ちているのだろう。



すべては、時間で繋がっている。
すべては、道で繋がっている。
そして、今の自分に繋がっている。
加速せよ。
止まってはいけない。
自分の中で、誰かがそう言い続けてくれている気がした。








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