千葉ロッテマリーンズの堀幸一選手が、去る3日、引退を表明した。
記者会見でのコメントは、まだやれるという自負を口にしながらも、きわめて当たり障りのない大人のものであった。
ただ、それは彼自身の心の言葉であることに間違いないように思えた。
彼は体裁を気にして、心を偽って言葉を語るような男ではない。
まだ野球をやれる方法はいくらでもある。
しかし、彼は一番大人の選択をしたのだと思う。
決して先頭に立つ親分肌でもなく、また立身出世ばかりを望み進むわけでもなく、ただ野球が好きなだけの純粋な野球少年は、いつしか大人になった。
諦めばかりでもなく、悔いばかりでもなく、それが今の彼の最善の選択であったのだ。
彼は一番の思い出の試合を、2005年の初優勝の時のプレーオフ最終戦のソフトバンク戦だと語った。
それはたぶん、ただ歓喜の中にあるばかりの思い出であるわけではないように思う。
確かあの試合は、スタメン起用ながらも、シーズン途中からの故障の影響で途中交代を余儀なくされている。
喜びも悔しさも、そしてそれを乗り越えるための頑張りも、全てがあの試合に詰まっているのだという風に、私は理解した。
それはまさしく、彼の紆余曲折だった23年間の野球生活そのものが象徴されているのだ。
堀幸一。
自分と同い年。
野球少年は、いつしか周りに望まれるに値する大人になった。
ひとまずはお疲れさま、と言いたい。