ローソク

　妻の誕生日ケーキを予約しに近くのケーキ屋さんに行った。
　いつもいつものバースデーケーキだとつまらない。生クリームのフルーツケーキを選び、ローソクを頼み、メッセージも添えた。これで完璧。
　
　帰ってから予約券を見て気がついた。ローソクの数を間違えた。誕生日が来たらひとつ歳をとるのに、今の年齢分しか頼まなかった。も一度ケーキ屋さんに行くのもなんなので、ケーキを取りに行く娘に、間違ったから一本余分に貰ってきてと頼んだ。

　で、当日、箱からケーキを出してみると、ローソクが一本少ない。あんだけ言っておいたのに、娘は忘れていたらしい。その上、
　「仏壇のローソクを使おうか」と、とんまなことを言う。

　結局、妻がどこからかケーキ用の小さなローソクを用意した。
　
　年齢を間違えられたのに妻は怒った風でもない。
　娘に、
　「お母さん、怒ってへんな」とこっそり言うと、
　「これ、少なかったから良かったんやで。多かったら大変や」
　「ほんまや」


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