二匹目のドジョウ
昨日は子牛を競り市に出した時のことを書きました。書いているうちに当時にことを色々と思い出しました。子牛が生まれると庭に柵をして、子牛を放し飼いにしていたこと等々。なんだか家が牧場になったみたいでした。
しかし子どもが下手に近づくと親牛が興奮するので、遠くから見るだけでした。柵の中を子牛がぴょんぴょんと飛び跳ねていたことや、親牛の乳を飲んでいたのも思い出しました。
それからしばらくして子牛が大きくなると、左右の鼻の穴の間にある壁に穴を開けて、鼻輪(はなわ)を通します。当地では鼻輪のことを「鼻グリ」と呼んでいました。鼻グリをするともう子牛も一人前?になります。
それからすぐに売られるのですが、立派な子牛が生まれると品評会に出したりもしました。
いつもは腿のあたりに糞をこびりつけているですが、前日からブラシをかけられた子牛の茶色の毛がつやつやと光っていました。爪や角も磨かれピカピカで、尻尾なんかクルクルと内巻きカールがかかっていました。父と友人二人が、前日から牛を磨きあげていたのです。
当日はトラックの荷台に乗せられて、子牛はクリンクリンの尻尾を振りながら会場に向かいました。その後どうなったかは覚えていないのですが、たぶん入選はしなかったのでしょう。いつもと変わらず、淡々として夕餉の食卓に着きましたから。
「一度だけ子牛が賞を取ったことがある」と後年母に聞いたとこがあります。たぶんあの時は二匹目のドジョウを狙っていたのでしょうね。子牛を磨き上げる大人たちの目の色が違っていました。
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