人間はどうして死を恐れるのだろう

何故死が怖いのだろう。

　考えてみると、他者とのつながりが失われることの恐怖なのではないかと思う。お互いに共感していた感覚がなくなることに不安を感じているのではないかと思う。人生をかけて作り上げたたくさんの人達との関係が全て清算されることに恐怖を覚えているのかもしれない。自分が何のために生きているのかのすべての成果が無に帰することに不安を感じているのだろう。自分が何のために生きてきたかの中身が全て失われるのである。

そうであれば、他者との共感をなくせば死は怖くない。

　自分一人に戻るのである。他者との共感を断ち切るのである。死ぬ時の感覚は結局は少しずつ他者との共感を断ち切る手順でもあるかもしれない。仙人とか言われる人が山奥で孤独に耐えて修行をしている姿は、結局は他者との共感を断ち切って死の恐怖を克服するための道順のような気がする。そう考えると、死に向き合う時、自分一人に戻ることが死の恐怖を克服する最適の解決法のような気がする。死ぬ時は一人なのである。

「死」そのものは、生命の進化の中で発生した。

　「死」そのものも生命の進化の中で選択的に決定されたものである。弱いものは淘汰され、強いものが生き残り、必要なものが残され、不必要なものは排除される。我々が生かされているのも自然の法則の中での現象に過ぎない。今現在我々が生きているのも自然の法則の基に奇跡に近いのである。生きとし生けるものは奇跡の中で生命を育んでいるのである。はっきり言うと、宇宙規模の無限大に広がる可能性の中で生きているのである。

そんな命は大切にしたい。

　我々は生かされているのである。はっきり言うといつ死んでもおかしくない状況の中で生きているのである。それでも生きている幸いを大いに感謝すべきである。そして、生かされている意味を理解してそのために努力するのが我々の使命でもある。その意味は、やはり共感できる我々の子孫に対してできるだけ貢献することである。貢献とは、損得勘定なしに強制力なしに将来の子孫に対して自ら身を挺して貢献することであると思う。