国民すべてに十桁の住民票コード(個人番号)をつけて、
行政の本人確認事務の効率化を図る住民基本台帳法が施行され運用されている。行政の持つ個人情報をコンピュータ処理するためには必要不可欠なことであり、なぜそんなに大げさに取り上げて反対し騒いでいるのか不思議でたまらない。学校でも会社でも銀行もクレジットカードもインターネットも種々の会員カードなどもすでにみんな番号管理されているが、あまり違和感はない。国民すべてに個人番号をつけるということに何の躊躇があるのであろうか・・・。
問題は、個人のプライバシーに関する情報を無断で作成し利用することである。
この行為自体は個人番号を導入することとは無関係であるが、プライバシー保護の原則に反する行為である。現在のところ、対象情報は「氏名、住所、生年月日、性別」の四情報としているが、この4情報は本人識別のために使用するもので、この4情報を基に様々な個人情報が作成されることになると思う。しかし、この作成された個人情報は本人がいつでも自由に確認できる仕組みが必要であり、個人の許可なく無断で作成することは許されない。個人情報として必要であればその必要性を説明し周知徹底して作成されるべきである。
当然、赤の他人にこの個人情報を漏洩することは許されない。
単に「秘密保守義務を負う」という一文ですむことでなく、どのような秘密保守の管理をするか、情報のアクセス管理をどうするのか、責任と権限をどのように規定し、罰則規定も定めなければならない。単に本人確認情報のみならず、行政側の持っている個人情報すべてについて言えることであり、この際みんな再度点検し直さなければならない。
かつて私が現住所に引っ越して来て、
役所に転入届けをして子供の転校届けをしたら、次の日に早速進学塾から勧誘の電話がかかってきたことがある。役所以外は私がここに住んでいることも進学間近の子供がいることもどこにも告げていないし、隣近所の挨拶もまだ終わっていないのである。どう考えても役所を通じてどこからか情報が漏れているとしか思えない。このようなずさんな情報管理は本来は許されないと思う。本人に無断で情報が漏れてしまうということは信頼を裏切る行為である。個人情報の利用目的を明確にし、誰が管理し誰が利用できるかを明確にし厳格な情報管理をしなければならない。
本人の確認できない情報が勝手に作られ、
無断で横流しされるような体制では行政に「個人情報」を託すことはできない。どのような個人情報を作成しているかは本人に情報公開していつでも確認できるようにしなければならない。そして、この作成した個人情報は本人が承諾した範囲でしか利用してはならない。本人に秘密のデータを勝手に作成したり、赤の他人に漏洩するなんてもってのほかである。これが情報公開でありプライバシー保護であると思う。
現在、銀行が保有するお客の信用情報というのがある。
これが得体が知れない。銀行が独自に作成したデータであるので勝手といえば勝手であるが、自分がどのような情報で管理されているのか確認することもできない。もし、間違った情報で管理されていたらどのようにして訂正するのであろうか・・・。どんなデータで管理されているのかもわからないし、間違っていることも確認できない。データミスもあるかもしれないし、同姓同名もあるし、他人になりすます輩もいる。これでは情報公開やプライバシー保護とはほど遠い世界である。
信用情報は銀行が勝手に作った情報であり、
行政や個人がどうこう言えるものでないと言うなら、このような情報に個人の生活を制限するような意義を持たせることは許されないはずだ。そのような意義を持たせて運用するのであれば、個人情報を作成する承諾を事前にとることと、本人が内容を自由に確認できるように情報公開することは最低限必要であると思う。
国民全員に個人番号をつけるのは、
国民の個人情報を国が統一して管理する手始めであろう。新聞の見出しには「全国どこでも住民票」「転出、転入届は一度で」「ICカードで身分証明書も」などと国民に便利なことばかりを強調しているが、本当にやりたいのは国民の個人情報を国で統一的に管理することであろう。そうであれば、どんな個人情報を作成するつもりなのか、作成したデータは本人に情報公開されるのか、利用目的と利用範囲はどこまでにするのか、情報管理の体制はどうなっているのか、規則や罰則規定はどうするのか、個人情報の修正手続きはどうなるのかなどが整備されなければならない。
行政事務を効率化・合理化するためには、
国民の個人情報をコンピュータ処理することは有効であり、そのためには個人番号も本人確認情報も必要であろう。これに反対するつもりはないし、どちらかというと遅すぎたと言うべきである。しかし、このことと個人情報の管理とは別である。今現在の紙に書かれた個人情報でもしっかりと管理されなければならないのである。しっかりとした情報管理体制を確立してこのしっかりした管理体制も含めてコンピュータ化しなければならない。しかし、どちらかというと現状はずさんな体制であり、あちこちで個人情報の流出が発覚している。このずさんな体制をそのままコンピュータ化されてはたまらない。個人情報の流出を画期的に促進していることになってしまう。
秘密保守というと、こそこそと一部の者が密室で取り扱い、
特権を持ったものにしか利用させない方向に走るが、個人に無断で行政側が個人情報を作成することは基本的には許されない。個人情報の内容も利用目的も利用範囲も情報管理の体制も明確にしなければならない。個人情報そのものは厳格に管理されるが、個人情報の周辺はガラス張りにしておかなければならない。厳格に管理するとはこれらのことを明確に規定することである。密室に閉じこめて密室で作業し密室で利用し密室から勝手に持ち出すようなことは決して許してはならない。
10年ほど前に、運転免許証の更新をした際に、
無事故無違反で当然ゴールドカードだと思っていたら、その5年前にシートベルト着用義務違反で切符を切られていた。当時の警察官の説明は、罰金もないしそのまま無事故無違反であれば減点も消滅するということでほとんど気にしていなかったが、うっすらと「そんなこともあったかな」と記憶している程度である。私は5年間警察においては交通違反の前科者として扱われていたのである。そんなことは全然知らなかったし途中でそんな通知もなかったが、データにはしっかりと記録されていたのである。
少なくとも個人情報を公的に作成し利用するのであれば、
事前に本人への了解と確認は必要不可欠であるし、自分の個人情報はいつでも自由に確認できる環境が必要である。知らないところで自分の知らない個人情報が知らない利用目的で勝手に使われているのでは何のための個人情報かわからない。これはいわれのない事実をでっち上げる犯罪に類する行為である。本来であれば国が不法行為として取り締まらなければならない。そのような認識を果たして持っているのであろうか・・・。
個人番号制導入に野党は「国民総背番号制」だとして反対していたが、
コンピュータ処理のための「国民総背番号制」はなにも問題ない。反対している真意は「国民総背番号制」を許すと、これをきっかけに国による個人情報の管理が強化され、個人のプライバシーが侵害され、国の統制力が強化され国家が絶大な権力を持つ社会が現出するのではないかと危惧しているのであろう。しかし、これは被害妄想であり、こんな危惧をしていたらいつまでたっても行政事務の効率化はできない。このような危惧が現実化しないための具体的な対策を考えることのほうが重要である。現状でさえもプライバシー保護の体制は確立されていないのである。現状の問題点も含めて解決するための方策を見出していかなければならない。何でも反対の意思表示では何も解決しない。
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