オクトシティー正直村

おかしいな?変だな?と思った事を綴った駄文

視点

2008年06月25日 | Weblog

以前中東に赴任していた時、

 アラブの習慣になかなか慣れなかった。こちらが思い描いている事とアラブの人達の思い描いている事がなかなか一致しないのである。最初は日本人根性むき出しでいつもイライラして怒鳴りまくる毎日であったが、しばらく経つと何となく様子が違うのに気付いてきた。どうでもいいことなら許せもするのだが、具体的に現実的にやらなければならない事(仕事)に対しては妥協も許されないし、とにかく時間は待ってくれない。

日本人の感覚からすると「約束を守らない」のである。

 まずは、時間を守らない。約束した時間に頼んだ仕事ができていない。しかし、現地の人達は大らかなもので、気にもしていないし、「また明日」と次々に時間が延ばされる。だいたい現地の人は時間を決める事自体が意味がないと思っている。「そんなのやってみないとわからない」「出来上がった時が完了時刻だ」「いつ出来上がるかは神のみぞ知る」「やると言った約束は守る」と言った感じで、自らは決して時刻を指定して約束しない。なぜならばできなかったら嘘になるからだ。アラブ人は嘘をつくのはとんでもない罪だと信じきっている。意味もない細かい時間にうるさいのは日本人くらいである。

何か問題があっても「ノー プロブレム」で済ましてしまう。

 どう考えても問題ない状況でもないし、問題が起こっているし、結果としていろいろなトラブルが生じる。トラブルが生じると現地人がみんな集ってそれこそ口角泡を飛ばすごとく全員で長々と大激論が始まる。たいていは、最長老が頃合を見て最終的な決断をしてその方向で問題処理が始まる。私達日本人からすると、最初からトラブルを予想して事前に対策しておけよと思うが、彼らは未知のことにはとにかく果敢にぶつかって、行き詰ったところで対策を練るようだ。ただし、経験によってすでに手順の決まっているものは比較的スムーズに流れるのは頼もしい限りである。

次に日本人から見た「裏切り」である。

 日本人はどうしても相手を自分に都合のいい性善説で考えてしまう。その思い込みから「裏切り」に見えてしまう。「裏切り」は我々日本人と対立関係にある集団に対する忠誠でもある。短期間の付き合いしかない日本人と、大昔から未来永劫まで関係のある民族もしくは部族と、どちらに忠誠を果たすかは解りきった事のはずである。それは「裏切り」ではなくて正義を貫き通した結果である。断言はできないが、たぶん契約には「裏切り」の部分は表現されてなく、日本人の期待の部分が裏切られたのだろうと思う。アラブ人である限り嘘はつけないのだし、もし契約にあったとしたらその部分は最初から不正義で無効である。

こんな経験をしてみて、たぶん「視点」が違うんだろうと感じた。

 私も含めてだが、日本人の視点は時間的にも空間的にもミクロに向いている。その点アラブ人の視点は比較的マクロに向いている。より長期的な視野でより遠大な眺望で物事を見ている気がする。だから目の前の細かい事にはこだわらないし、やり方はたくさんあって、これがダメだったら次はアレをやってみればいいみたいな大らかな気持ちを持っているように見える。すぐ目の前の限られた物事を片付けようとすると時間にも囚われるし、やり方も限定されてしまう。しかし、大きな目で見ればその目の前の物事は全体からして無用なものかもしれない。

やり方が決まってしまうような仕事は本来意味がない。

 単純な繰り返し作業である。もっと視点をマクロに定めて、いろんなやり方があるような目標を定める必要がある。定められた時刻に出来上がってしまうような仕事も型にはまった単純作業である。遣り甲斐のある仕事に厳格な完了時刻はない。ライフワークと言われるものは人それぞれにやり方が存在し、できあがりの時期も定められない。決まりきった事を決まりきった時間までに仕上げてゆく細切れの作業そのものに価値のある仕事と目標を見つけることはできない。そう考えてみると、アラブ人の生き方を日本人ももっと参考にすべきだと思う。

やり方や完了時刻を決めてしまうから余裕のない人生になる。

 やり方は無数にあるし、できあがりの時期も人それぞれであると思えば大らかな気持ちになるし、生き方にゆとりが持てる。この頃の日本人はこのおおらかさが無くなっているのではないだろうか?すぐに結果を求めて、ダメだったら全てがダメだと悲観してしまう。そして何よりも周囲の人達と比較され競争させられる。そんなのどうでもいいじゃないか。上昇志向の人は大いに競争してモチベーションをあげてもらって大いに結構。だが、その気がない人は現状維持のままで充分だし、いつかは上昇志向の気持ちになるんだろう。何もあせる必要はないし、その人を批判する必要もない。

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