私は自転車が大好きで、
家にはサイクリング用、ポタリング用、不整地用の3台を自分専用として持っている。3台とも高価なモノではなく、10年以上も使っている古いモノである。しかし、使い込めば使い込むほど愛着が湧いて私にとっては大切な宝物になっている(それにしては無造作にほったらかしてあるが・・・)。通勤には駅まで自転車で通っていたし、休みの日は近くをサイクリングしたり買い物や図書館や街の散策などに使っている。小学生の時乗り始めてからずっと自転車とのつきあいは長く、日本全国をサイクリングしたし、環境保護のためにも自然に優しい交通手段である。
以前、自宅からの通勤にマウンテンバイクを使っていたが、
ある事情で、ただのママチャリに変えた。原因は私のマウンテンバイクに対する執拗ないたずらであった。マウンテンバイクと言っても10年以上使っていたオンボロで、整備はしてあるが傷もあり塗装も剥げて走るための機能以外は何もついていない自転車である。サドルステーのところは破損したところを溶接してある。これは近所の鉄工所のおじさんが親切にやってくれた溶接の痕である(お礼をしようとしたら「商売でやったんじゃない」と頑強に断られた)。ほとんどの部分は分解して修理した形跡があり、新品の頃の面影はフレームくらいである。よく10年以上もったものである。
そのマウンテンバイクに、
どういうわけか執拗にまとわりつくようにいたずらをする輩がいた。最初に気づいたのは遡る事2年前の夏である。ダイヤル式ワイヤ錠がはずされたままで自転車といっしょにそのまま置いてあった。このくそ暑い炎天下の中で、わざわざダイヤル式錠をコツコツとはずしたもの好きもいるもんだとあきれたが、気にせずにほったらかしていたら、連続パンク事件が発生し始めた。パンク修理をしてみると、後輪のタイヤがアイスピックみたいなもので何カ所も刺してある。修理しても修理してもパンクさせられる。そしてついにある日、忽然と自転車がなくなった。愛用の自転車だけに腹が立って仕方なかった。
自転車を捜していると、
近所の親切な人の通報で、畑に乗り捨てられているのを発見した。どうやら山の中や不整地を乗り回したらしく、泥だらけでチェーンもはずれていた。当然ダイヤル式ワイヤ錠はなくなっていた。遊ぶだけ遊んで乗り回して放置したようであった。そこで、太さが直径2センチくらいの丈夫なワイヤ錠を購入してつけた。さすがにこれははずせないようだったが、相変わらずパンク事件は多発していた。どう考えても故意である。なぜ自分のマウンテンバイクが狙われるのか見当もつかない。常習的に通りがかりに悪戯を繰り返しているようだ。
あまりに執拗なので警察に電話したら、
「恨みを買っているようなことはありませんか?」「他の人の被害もあるんですか?」「置き場所を変えてみたらどうですか?」と言われた。要するに自転車のいたずらくらいでは動かないみたいである。そう言えば、他人の自転車の乗り捨てが多発しているが警察が犯人を捕まえたという話は一度も聞いたことがない。いっそのこと、自分で捕まえて警察に突きだしてやるかとも思ったが、どう考えても手口から見て中学生か高校生のようで、大人気ないと思ってやめた。
置き場所を変えてみるのは妙案である。
これまでは道路近くの自転車置き場に律儀にも定位置に置いていたので歩行中の人がついでに簡単にいたずらをすることは可能である。特に後輪が集中的にパンクさせられているのはそのせいであろう。他の人の被害は、私がパンクさせられたとき周囲の自転車も点検してみたが異常はなかった。恨みを買うようなことはないが、もしかしたら坂道を一生懸命こいで登っている脇をスイスイと追い抜いてカチンと来た人がいたかも知れないと思い当たるくらいである。
早速、駐輪場を変えて、
わざわざ駐輪場に入らないといたずらできないような場所に駐輪した。効果はてきめんでいたずらはピタリとやんだ。「いたずらするヤツなんて根性なしだな。わざわざその場所まで行っていたずらする手間もめんどくさいのであろう。ほんのついでにいたずらしてその反応を楽しんでいたのだろう」と思ってしめしめと安心した。異常なしは約1年続いた。
そして一年後、帰宅時に駐輪場に立ち寄ると、
自転車がなぎ倒され、中には投げ出されているものもある。だれかが憂さ晴らしにでもいたずらしたようだ。自分の自転車は大丈夫だろうと思ったら違ってた。また例のパンクである。周囲を調べたらパンクしているのは私のマウンテンバイクだけである。どうやら例の犯人のようだ。しかも凶暴化している。もしかしたら集団化しているかも知れない。パンク修理をしてみると以前と同じ兆候である。不整地走行用の頑丈なタイヤなので簡単にパンクするはずがない。この駐輪場も安全でない。困ったものだ。
考えに考えたあげく、
周りと同じママチャリにすることにした。普通の自転車は異常なく私のマウンテンバイクだけが狙われるのであれば、マウンテンバイクをやめてみんなと同じママチャリにすればいいという結論に達した。ということで柄にもなくママチャリ通勤である。自転車好きの私としてはママチャリは趣味に合わないし、オンボロでも乗りやすい自転車に乗りたいが、ここまで執拗にやられると参ってしまうし、これ以上はつき合いきれない。ママチャリ作戦は大成功で快適な自転車通勤生活が実現した。
世の中で、「イジメ」が問題になっているが、
このマウンテンバイク事件も考えようによっては「イジメ」と根は同じである。解決策はみんなと同じ「ママチャリ」にすることであるが、これが人間となるとこれで済まされない。問題はみんなと違うもの(マウンテンバイク)を許さない風潮である。そんな風潮に乗せられて「みんなと違うもの」への風当たりが強くなるし、いじめるヤツも出てくるし、いじめても当然と周囲も容認してしまう。「みんなと同じじゃなければいけない」と強制しているのは一体誰だろう。この人達が考え方を変えて、みんながこの考え方は間違っていると気づかなければ「イジメ」はなくなることはないと思う。
それにしても、このいたずらの犯人の陰湿さと執拗さは何だろう。
私には理解できない。よっぽど性格が歪んでいるのか、精神的に病んでいるのであろうか?しかしこの犯人は特別な人ではなく普通の一般市民として生活しているのであろう。考えてみると怖くなる。一般大衆の中に紛れ込んでこれを隠れ蓑にして自分を安全な場所において悪いことをするのはある意味では卑怯である。一般大衆に罪をかぶせ一般大衆を悪者にしている。こんな輩が多くなると世の中はお互いに疑惑と不審の目で相手を見るようになり疑心暗鬼が高じて社会生活は崩壊しかねない。卑怯者を根絶するのは残念ながら地道な教育しかない。
現在は、自転車通勤は必要なく、いたずらの心配もないが、
もう今から10年くらい前のことになる。あの時執拗ないたずらをした犯人は今頃どんな大人に成長しているんだろう。中学生か高校生であれば20代の成人になっているはずである。是非単なる通過点であって、その後は矯正されて立派な大人になっていることを祈るばかりである。幼稚な悪戯心か鬱積したストレスを晴らすための手段だったかもしれないが、その後賢くなって上手な対処法を身につけて健全な社会生活を送っている事を信じるばかりである。その思い出のマウンテンバイクは今でも健在で大いに活用している。もう20年以上の付き合いになる。
自宅では車庫に置いてますが、問題ありません。問題は駅の駐輪場ででした。何故謂れのないいたずらを受けるのか不思議でした。犯人の執拗さも異常でした。
今では問題解決している剛健でした。