オクトシティー正直村

おかしいな?変だな?と思った事を綴った駄文

「手作り」や「自然食品」の不可解

2007年12月27日 | Weblog

あちこちで「手作り」という言葉を耳にする。

 商品や農産物、工芸品だけでなく、音楽、演劇などの無形のものまで「手作り」が珍重される。何が「手作り」なんだろうと疑問に思うことしきりである。「手作り」とは、読んで字の如く人間の手で作ったものである。「手作り野菜」「手作りの民芸品」「手作りのお菓子」といわれても人間の手で作っていない野菜や民芸品やお菓子とはどんな「モノ」だろう、普通のものとどこが違うんだろうと考え込んでしまう。工場で大量生産された「モノ」でなく、「ヒト」が一つ一つ丹精を込めて作った「モノ」と主張したいんだろうけれども、ただ「手作り」と表示されているだけであり、どこかのれっきとした「工場」で生産された「モノ」にしか見えない。丹精を込めた「ヒト」が見えてこない。

テレビや新聞を見ていると、しきりに「手作りの良さ」を強調する。

 手作りには無骨ではあるが味わいがあるという。製造ミスや不揃いなどの「アラ」も手作りならではの良さであると褒めちぎる。何か違うのではないかと思う。自分の知っている人が自分のためにわざわざ手作りしてくれた物はありがたいし、プロがやった完成品にはない良さがある。それは、その作った人との関係において生まれる価値であり、店頭に並べられた誰が作ったかわからない商品が「手作り」といわれてもそれほどありがた味はない。それよりも品質管理のしっかりした工場で作ったより安くて完成度の高い製品のほうがありがたい。

「手作り」を追求するなら、

 自分の町で作ってくれるヒトを探して自分の好みの「モノ」を注文して作ってもらおう。いっそのこと自分で作ってしまう手もある。それが本当の手作りである。どこの誰が作ったのかわからない「手作り」は贋物であり、「手作り風」または「手作りのようなモノ」にしかすぎない。工場で作ったと言うだけで粗悪品と判断するのもおかしい。いろんな工場で作ったモノの中から自分の好みにあったモノを選択できることはすばらしい利点であり、工場で作ったモノでもいいモノは人気があり悪いモノは売れないのである。悪いモノをさもいいモノに見せかけて売ったり、みんなで結託して安物の粗悪品を売りつけたりするのはいただけない。いいモノは堂々と自信を持って「手作り」などとごまかしの表示をせずとも売れるはずである。

「自然食品」というのもおかしな言葉である。

 世の中に「自然」でない「人工食品」があるのだろうか?「自然食品」以外は自然の食品ではないような宣伝のしかたである。しかも、自然のままの自然食品の方が、人工食品より高いのはうなづけない。少なくとも、自然のままの食品に人工の手間をかけて作ったのが「人工食品」であり、こちらの方が高くなるのが当然と思うのだが、そうでもなさそうだ。「自然食品は体にいい」と一方的に決めつけるのもおかしい。自然界にも生物に害を及ぼす物質はたくさんある。「自然」までも売り込んで商売してしまうしたたかさが見え見えである。金さえ出せば「自然」がお手軽に手にはいるという消費者意識もおかしい。

自然食品を手に入れたければ、

 近くの信頼のおける農家から新鮮なものを直接買うのが一番である。高級な材料を使っているのであれば「高級食品」であり、有害な添加物を入れてなければ「無添加食品」であり、有機栽培による材料を使っているなら「有機食品」である。じゃあ、「自然食品」とは何だろう。ただのイメージアップのため「自然」をくっつけただけであろうか。自然のままと言いたいのだろうが、自然は自分と遠く離れた別世界にあるのではない。自分のまわりにあるものである。自然食品は特別なモノではなく、自分の近くでいくらでも見つけられるのである。近くの山に入ると山菜がある(当然、山の所有者に了解をとった上である)。この頃、山菜がとれる山も少なくなった。そう言う意味からも「自然」は大切にしたいものである。

「手作り」にしても「自然食品」にしても、

 本来あるべき人と人との直接のコミュニケーションがなくなった反動ではないかと思える。大量生産、大量販売、大量消費の中で「個人」が埋没してしまった警鐘である。作った人が見え、栽培した人が見える昔の良さを取り戻したいという消費者のささやかな願望をくすぐる「手作り」であり「自然食品」である。職人さんがひとつひとつ手作りしたものやお百姓さんが丹精を込め手塩にかけて育てた農作物に改めて価値を見出す人々が増えているのである。見せかけやイメージだけでなく、職人の技を使った「モノ」と、身体に優しい「食品」が市場に出回ることを期待する。非人間的な「文明」に別れを告げて、人間的な「文化」を築き上げよう。



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