クレーン船が高圧線を引っかけて関東地区が大停電になった。
マスコミはこぞって「危機管理」がなっていないの大合唱である。それでは具体的に何をしたらいいのかとよくよく聞いてみると、「とにかくこのような事故が二度と発生しないようにしてもらいたい」ということらしい。そのために具体的にどうすべきかは関知せず、それを考えるのは電力会社でしょう・・・といった報道内容である。責め立てられるのはクレーン船の親会社や電力会社で、教育が徹底していない、管理が行き届いていない、事故の対応が不十分、被害の軽減策が考えられていない、復旧に時間がかかる云々である。確かにその通りである。しかし、この事故の大本の張本人は誰なんだろう。
私は、クレーン船を操縦していた本人と、監視誘導していた助手(補助者?)が直接の張本人だと思う。
まず責められるべきは彼らだと思うし、クレーン船の会社や電力会社は直接の原因を作っているわけではない。しかし、マスコミの風潮は張本人の彼らを個人攻撃することなく、概ね会社規模以上の組織を攻撃する。マスコミは個人の味方で、組織を敵に回すことが好きらしい。弱きを助け強きをくじくのを本旨としているようである。しかし、そこには冷静さを欠いた感情的な曖昧とした態度が見え隠れする。確かに停電の被害をこうむった住民の立場からクレーン船の会社なり電力会社を非難していた方が収まりがつく。住民の立場でクレーン船を操縦していた本人と、監視誘導していた助手を個人攻撃しても埒が明かないようである。
直接の原因は高圧線の存在を認識していなかった操縦手であり助手である。
あまりにもお粗末すぎる。管理会社の管理責任以前の問題に見える。職務を遂行するに当たって事前の情報収集、実施内容、実施要領、規則法規類等の確認は当たり前のことである。それを怠っていたのでは話しにならないし、クレーン船を操縦する資格さえない。操縦してもらっては困るのである。なぜこうなったのかと原因を究明してもたぶん単なるポカミスであろう。あまりにもひどい職業人にあるべからざるポカミスである。たとえ高圧線があるとの情報を知らなくても、クレーンをあげたままで航行する時は当然周囲を確認するのが常識であろう。こんな人に操縦させていた管理会社の責任と言う前にこんな幼稚な事故を起こした本人達が責められるべきである。
私は、今回の事故は特殊かつ特異な事故の部類にはいると思う。
まさか河川の上で、しかも十分な高さを持った高圧線に大型クレーンをあげたまま航行して引っかけるとは誰も想定してないし、そんな事故が生起する確率は極めて低いと判断するのが一般的だと思う。そうであれば、クレーン船が引っかけることを想定した新たな安全策を講じるよりも、クレーン船が引っかけない対策を考えるほうが得策と思える。今回は1次及び2次供給2系統の電力線を両方とも損傷させるという特異な事故でもあったために大停電の事態を起こした。通常は最初に引っかけたら直ちに停止させるであろう。一度ならずも二度も高圧線を引っかけているのである。マスコミの批判は、このような事故を想定して異経路の複数ルートで電力を供給すべきだと聞こえるが、このために新たな鉄塔と送電線を建築するのは大いなる無駄だと思う。
生起することが少ない確率のものまで確実な安全対策をとることは不可能に近い。
停電する確率をゼロにすることはできない。確率は低くても停電する可能性はある。危機管理は停電することを前提に各々が対策をすることである。その点で、今回の電力会社の対応は評価すべき事があった。通常であれば復旧に数日かかるが、別の系統から電力を供給するようにシステムを変更して停電は迅速に解消された。ただし、システムの変更による影響は不明であり、変更の判断は英断でもあったようである。今後に課題を残すところは大きいが一つの解決策であり今後とも現実的に検討すべきである。停電の被害を受けた側も万が一停電になった時の対策は考えておくべきであり、少なくとも停電になると重大な影響があるところは直ちに処置すべきで、これこそ危機管理である。
100%の安全対策をとることは不可能である。
設備費を倍にしても4倍にしても100%は無理である。設備費を倍にした安全対策とは、1セットを安全対策としてダブルで設置することになるが、2セットともダウンする確率はゼロではない。4セットにしても確率は少なくなるがゼロにはならない。安全対策のために設備費を2倍にするのは異常ともいえる。通常であれば真に重要で絶対にダウンしてはいけない中枢部分についてダブルの安全策をとるが、末端についてはせいぜい全体の5%か10%位しか安全対策の設備費は投入しない。そうでないと全体の費用対効果は格段に悪くなるし、膨大な無駄な投資と無駄な維持費がかかってしまう。
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