以前サンゴ礁を復活させようと言う話を聞いた。
そのために研究されているのが、珊瑚の産卵を制御することと、卵の着床を促進することだそうである。年に一度の珊瑚の産卵をいつでも随意に産卵できるようにすることが可能になるとのことである。また、卵の90%は岩に着床せず死滅するが、あるホルモンを使うと卵の動きが鎮静化し着床率が向上するそうである。卵をいっぱい産ませて着床率を向上してやれば珊瑚が育つと言う考え方である。
何か違うのではないかと思った。
珊瑚が死滅するのは、海の環境が珊瑚に適していないからである。なぜ適しない環境になったのか、どうすれば適する環境になるのかが重要でないかと思う。適しない海の環境で卵をどんどん産ませてどんどん生育させられたのでは珊瑚がかわいそうである。科学文明は時としてこのような乱暴な手法で自然を制御する。この乱暴なやり方の後には想像もできないような混乱が待ち構えている。
珊瑚が年に一度しか産卵しないのはそれなりの意味があるはずである。
それで自然の調和が取れていたはずである。周囲の環境に影響を与えないで生き残るための自然界から与えられた唯一の機会が年に一度訪れるのであろう。卵の90%が死滅してしまうのにも意味があるはずである。通常であれば優勢種が生き残るための淘汰の手段であり、優勢種は子々孫々のため生かされているのである。それをなにもかも生かしてしまったのでは進化が途絶えてしまう。そんなことを人間が人工的に行えばますます自然の調和は乱れてしまうことになるのではなかろうか。
珊瑚が死滅するのは海洋汚染と地球温暖化のためである。
海洋汚染と地球温暖化を何としてでも止めなければならない。私は海が死滅したら人間も死滅するだろうと思っている。サンゴ礁が海洋汚染と地球温暖化を止めてくれるわけではない。海洋汚染と地球温暖化で死滅したサンゴ礁を復活させようと言うのは気持ちとしては理解できるが、大元の海洋汚染と地球温暖化を阻止しなければ根本的な問題解決にはならないと思う。海洋汚染や地球温暖化はサンゴ礁だけでなくもっと他の海洋生物にも多大の影響を与え続けているのである。海のキャパシティーが大きいので現在のところ最悪の事態にはなっていないが、子々孫々のためにも海を守る努力を怠ってはいけない。
海洋汚染と地球温暖化が止められないのであれば、珊瑚は死滅すべきである。
珊瑚に変わる生物が出現し、海洋汚染と地球温暖化にあっても生き残れる生物が繁栄することになる。その繁栄を人間が阻止することはまたもや自然に反することになる。こんなことを繰り返していたら地球上に生物そのものが存在しなくなる。珊瑚の死滅を可哀想に思い保護してやろうとするのは人間の奢りではなかろうか。人間にそれだけの力はないし、珊瑚の繁栄を阻止する原因を作ったのは人間そのものである。
自然は破壊することは容易であるが、作り上げることは人間には困難である。
科学が創り出したものは自然のごく一部であり、全体としての自然を創り出すのは人間には到底困難である。科学の発達と自然の調和が叫ばれる所以である。自然破壊を止めるのは簡単である。破壊している行為を止めさえすればいい。それを止めることなしに自然保護を叫んでも無意味であり大いなる矛盾でもある。
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