オクトシティー正直村

おかしいな?変だな?と思った事を綴った駄文

システム神話

2006年05月16日 | Weblog


世の中何でもかんでも「システム」である。

 「システム」とは一体なんだろう。広辞苑によると「複数の要素が有機的に関係しあい、全体としてまとまった機能を発揮している要素の集合体。組織、系統、仕組み」とある。例えば、茶碗と箸で食べるシステムが出来上がる。茶碗と箸が複数の要素で、これが有機的に関係しあい、食べるというまとまった機能を発揮している要素の集合体ができる。ようく考えてみると何でもかんでも「システム」なのである。ということは、単なるシステムだけでは何のことだか意味を成さない。何のシステムかを明確にしなければならないのである。「システム」と言う単語だけでは具体的な内容は定義できないのである。

ところが、「システム」と言う言葉は勝手に独り歩きしていて何でもかんでも「システム」で済ましてしまう風潮にある。

 「システム」という言葉が偶像化してしまっているのである。1980年代後半の好景気を「バブル経済」と言い、その後の不況の原因を何でもかんでも「バブル」のせいにして済ましてしまった日本人のいい加減さが思い起こされる。全体はバブルでも個々には具体的な原因があり、その原因を作ったのは実体のないバブリーな経営をしてきた経済人やそれを指導してきた政治家である。「バブルだからしょうがない」というようなヘンテコな表現さえあり、これで済まされるから不思議である。自分達のことは棚に上げて、あたかも他人事のような話し振りである。

何か事故が起きると、「システムの障害だ」「システムが原因だ」となる。

 前述の茶碗と箸の食べるシステムで、システムが原因で障害があったとすると何であろう。少なくとも今までは問題なく食物が食べれていたシステムのはずなのにどうして急に障害が出たのだろう。箸が折れた?茶碗が割れた?箸か茶碗のどちらかが紛失した?いろいろ考えても、障害の原因はどうも食物を食べる「人」にありそうである。ほとんどの「システム障害」は人災である。人災にすると問題があるので実体のない「システム」のせいにしてしまう。考えてみると非常に便利のいい「システム」であるが、問題は実体のないシステムのせいにしても問題点は解決しないのと、人災の問題点が闇に葬られてしまう。ほとぼりが冷めると何も対策されないまま放置されてしまう。

「システム」を使う場合は、対象を特定する必要がある。

 何とかシステムもまた多くのサブシステムからなり、そのサブシステムもシステムで構成されている。一体どこのシステムなのだろう。システムが原因と言うことで、原因究明したら配線の故障やセンサーの故障であったと言う。それはシステムそのもの障害ではなく、保守点検のやり方が原因であり、保守点検をするのは「人」であり、これはれっきとした人災である。プログラムミスが原因の場合も、プログラムをするのは「人」であり、間違った指令でも忠実に実行するシステムには問題なく、これも人災である。いつも「人」が原因で事故は起きているが、その原因は「人」に行き着かない。「人」の責任は有耶無耶にされたままである。こんなことが続くと、システムの中枢であるコンピュータはいつか反乱を起こすんじゃないかと思ってしまう。

繁華街のボッタクリのいかがわしい店でもシステムがある。

 勘定の段階でボッタクられて文句を言うと「このような料金システムになっております」とどこからかパンフレットを持ち出して説明する。お客は「ああそういうシステムなんだ」と納得して金を払う。笑い話である。社会のシステム、金融システム、教育システム、政治のシステムという言い方もある。何がシステムなのかさっぱりわからないが、システムという言葉をつけるとなんとなく具象化されて説得力があるように聞こえるようである。日本人ってどうしてこんなに言葉に弱いのだろう。そして単にごまかされてしまうのだろう。

本来、日本人は言葉をとても大事にしてきた。

 言葉には魂が宿ると思われ「言霊」と言われていたし、正しい言葉を繰り返し念じると力を持ち不可能なことも可能になると信じられていた。反対に縁起の悪い言葉は忌み嫌われ、縁起の悪いことは口に出すことさえ憚れて、口に出すと災いが本当に生起すると信じていた。本来の日本の言葉は伝統に培われたものであろう。そんな中で得体の知れない「システム」などという言葉が使われるようになった。そして、この「システム」という言葉に魂を込めて繰り返し念じて力を与えたのではないだろうか?問題は得体の知れない言葉を日本の伝統に根ざした正統な言葉と同様に取り込んで内容もよく吟味せずに多用する現代人の性質にありそうである。


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